遍路道の雲水さん | 10go9

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岩に腰を掛け、谷川の水を飲み、

自然、秋の風光に紛れて、細く長い遍路道を、

ただ一人、点となって辿り着いてみたら、

岩本寺に岡山・倉敷の稲さんが、托鉢の若い雲水さんと談笑してた。

稲さんは、足の治療をしてくれた恩人である。

岩本寺本堂の天井絵を見学し、参拝、納経をすまして、目礼したら、

「こっち、こっち・・」

と、呼んでいる。

 

 

駆け寄ると

「今日の宿、決まってるの?」

と、稲さん。

「いや、まだです。行き当たりバッタリなんで・・」

「じゃ、岩本寺門前の伊予屋、どう? 和尚も泊まるから。ついでに和尚に、足の治療のアドバイスをしてもらうといいよ!」

どうやら稲さんは、托鉢の雲水さんを宿に接待したようだ。

まだ午後の4時前。もう少し足を伸ばしたい所だけど、恩義のある稲さんの申し出である。

どうしたものか、と・・。

 

 

そこへ札幌の大学生、例の根室本線、エドシカ君が登場。

またそのすぐ後、今度はまだ新婚ほやほや、新妻一人東京に置いて遍路してる新婚クン登場。

そうこうしてると、無愛想、早い朝立ち、古希、無言の鉄仮面さん登場。

雲水さんは永平寺傘下の寺の師匠について、只今一人四国托鉢遍路、修行の身。

「これですか? 遍路する内弟子たちに、受け継がれた師匠譲りの錫杖です」

3メートルはあるかと思われる細い樫の木、その長い杖を興味深げに握らせてもたらっていると、

「写真撮らせてもらっていいですか?」

と、社内広報課配属だという新婚クンが、

「ついでに、皆さんも・・」

 

 

その夜の伊予屋旅館。

若者二人は先を行く、と言い、

稲さん、雲水さん、鉄仮面さんに、自分は伊予屋旅館に。

まだ外が明るい暮れ泥む頃、小さなお風呂で偶然雲水さんと一緒になった。

僧形とはちがって、ずいぶん若い印象を受けた。

自分にあてがわれた部屋はフスマをぶち抜いた大広間。

もともとは団体お遍路さん用だったかも・・。

広い空間、独り占め。腹這いになってメモしてると、部屋を訪ねて来られた雲水さんが引き返そうとされるのが見えた。慌てたお引き留めすると、

丁寧に足の治療をして下さって、その後不思議な御縁で、よもや話に夜が更けた。

駒沢大出の38才、前歴はとお伺いすると、一寸言いよどんで、

「元は外務関係・・・。それが今、坊主に・・」

と、静かに笑われる。

「深い眼差しですね。お坊さんに、ピッタリですよ」

と、率直に感想を言うと、

「・・・本職ですから・・」

と、また深い眼差しの、その笑顔がよかった。