思いのほか用事に時間がかかってしまい


家に着いたころには、すっかり辺りが薄暗くなり、


雨が降り出していた。


いつものように家の中からは光が溢れ


ギターの音色と美しい歌声が聞こえる・・・・


はずだったが・・・


部屋の明かりは無く、辺りは静寂に包まれていた。



「・・・・・taka?」


「・・・・・・・・」



うす暗い室内。



人の気配もなく、長い時間誰もいなかったような


冷え切った空気に彼女は不安になった



taka!どこ?」



返事は無い。


彼女はベッドルームも探したが


あるの数少ない彼の衣類。


彼女は不安で胸が押しつぶされそうになり


その場にしゃがみこんだ。



どうして・・・・



どこ・・・taka・・・



・・・・・・・・・・



・・・・ガタン



その時ドアの方で音が聞こえた。


慌てて玄関の方へ向かうと


そこにはびしょびしょに濡れた彼が立っていた。



taka・・・!!」


「・・・あ、ただいま」


「どうしたの?どこへ行ってたの?もう!!!!」



彼女は気が付くとびしょ濡れのtakaにしがみ付いていた。



「どうした?濡れちゃうよ?」



濡れても構わない。今ここにいる彼の実態を確かめたかった。


彼が実存することをどうしても肌で感じたかった。



「急にいなくならないで・・・」


「ごめん」


「・・・あ、これ」



彼はポケットから皺しわの紙幣とコインを取り出した。



「どうしたの?これ」


「あ、これでちょっと街に出て歌ってきた」



手にはケースに入ったギターを持っていた。



「何かしなくちゃって、思って・・・」


「うそ・・・・・?!」


「そしたら思ったよりたくさんの人が立ち止まってくれたんだ」



彼女はびっくりして言葉も出ずに彼を見つめた。



「そんなに驚かないでよ」



かれはくすくすと笑うとバスルームに向かった。