有料介護職員として現在働いている。
トイレ掃除は、トイレ用の洗剤を便器に回しかけてトイレブラシで便器をこすり、トイレ用の雑巾で拭き取り床を拭くものだと思っていた。
それが現職場では、トイレ用の肘まであるピンクのゴム手袋をはめて台所用のスポンジで便器の奥底まで手を入れてゴシゴシと擦り、三枚ある雑巾で掃除をする。一枚は、便器の蓋と蓋と給水タンクの隙間、二枚目は便座、三枚目は床。
私は、これを教えてもらったとき拒否が強く、その教えてくれた職員が私をいじめていると思った。
絶対嘘でしょ。みんなそんなことするわけがない。そう思った。
それなのに、もうひとりの職員が、同じように掃除をしていた。
私は、介護職員とは、惨めなものだと思った。
確かに利用者たちにとったら、知ったことはないことかもしれない。
私の幼少のころは、父母に祖父母を大切にするようにと厳しく育てられた。
いつも祖父母に気を遣い、オムツ交換などもしていた。私は、母に「お留守番お願いね、お姉ちゃん」そう言われよく寝たきりの祖母と留守番をしていた。正直つまらなかった。そんなときはTVもつまらない。
いいなあ妹は、いつもお母さんと一緒でとそんなことを感じていたように思う。
お母さんは、いつも言っていた、お金がないから、貧乏だから、いつか大人になったら自分で仕事をして好きなものを買って、好きなところに自分で行けばいいよ。
私は、お母さんが大好きだった。お母さんは、いつか先に死ぬんだから、お前はお母さんより長く生きるんだから、そんなことも言っていた。
大人になって結婚したけど、主人とは、疎遠になり、子供たちも独立して好きに暮らしている。
家に1人でいても寂しいだけだった。回りの人たちは仕事をしていて、1人取り残されている感覚になり社会参加をしたかった。
私の歳で、それなりにお給料のいい職場は介護業界だった。別に介護じゃなくてもいいのに、他にお金を稼ぐ手段を知らなかった。
ただそれだけの話し。
もっと他に、もっと他にと探しても怖いのだ。
世の中には、家族で暮らしている人たちがいる。
今は、私は彼と2人でいるが、お金の苦労が絶えない。
生活は、私のお金で成り立っていてカード支払いで暮らしている。
他の方法を探しても見つからない。
と、そこまで考えても、現職場のトイレ掃除が嫌なのだ。
いくらお金をもらっても、利用者の排泄介助以外にも、私にとっては、トイレ掃除が嫌なのだ。
せっかく生きているのにと、そう感じて涙が出るのは、私だけなのだろうか。