迎   春

 

     十二時

     遠くを見ている人のような眼で

     わたしは庭を見た (「幻を見る人」より)

 

  ご無沙汰しています。通りすぎた20世紀を代表

  する詩人といえば、田村隆一。

   三年前の10月、そうせずにはいられなくなって、

  田村隆一の詩を3篇、歴史の授業の中で紹介しま

  した。十四才の中学生が相手ですから、まず朗読。 

  と、声に出して読んでみて初めて気がついたのは

  (一番好きなはずの「帰途」でなく、何度も新年の

  挨拶に引用した「新年の手紙」でもなく)初期の詩

  「幻を見る人」の凄さでした。とくに冒頭の引用の

  ようなシュールで謎めいた第二連のもつリズムと

  リアリティ。詩人とその時代がくぐり抜けた「歴史

  の火の槍」の穂先をそこに感じるのは私一人で

  しょうか。

 

   本年も宜しくお願い致します。

                      2001年 新春