あーいるいる!やっぱりね…
多摩川競艇場の38番の柱の辺り。
クニさんはいつも1マークの見えるそこに陣取ってた。
「クニさん、なに買ったの??」
「おー、これよ。」
3ー5 五千円 3ー6 五千円 5ー6 五千円
5ー3 五千円
「大穴じゃないですか!すげぇなあ
そんなにたくさん!」
バカ、知らないのか産後の穴は大きいってな〜、つくでぇ〜
いっつも大穴狙いでしかも太く賭ける。オイラが千円二千円で張ってるのに…
よくそんな穴買うなぁ〜
しかし殆ど負けるのだ。
スッテンテンなって黒革のツナギ着て、身体小さいのに不釣り合いな、ナナハンに乗って悠然と帰っていく。
いいなぁクニさん。
麻雀やれば「クニさん!将棋やってんじゃないんだから早く切れよ!」年中言われるのに、相変わらずチンタラやってる。
なにせ高い手しか狙わないから、いつもカモられる
笑っちゃうのは負けてから「カネない」とか言うのだ…無一文でくるかね普通。
なにせ店長様だから怒るに怒れないー
好きだったなぁクニさんは。
実家が床屋なのにバクチやり過ぎて人手に渡ってしまった。噂じゃ破産宣告までしたというー
なのにまだ懲りてない。
カミさんは苦労したろうねえ。いかにも日本の母という感じの質素で凛としたおばさんだったが。
麻雀終わって俺の部屋に泊まってはお前のイビキがうるさくて寝れない!と怒ってるのに、また忘れて泊まってしまうクニさん。
酒癖が悪くて「ワシを誰だと思ってんのや〜!ワシのケツモチは〇〇やぞぉ」と息巻くのがお終いの合図だったっけ。これが出たら逃げ出さないと巻き添えくうのだ…
でも仕事は繊細でねぇ、俺はクニさんの独特の櫛と鋏捌きを真似してるうちに、すっかりおかしくなって下手になったのも懐かしいー
今でもあのやり方は名人芸だ思う。
まあ世間相場で言えばクズなんでしょうね。
でも子供5人、皆がちゃんとした社会人に育った。末っ子は国会のSPになったし、うち2人の女子は床屋なったし。
麻雀帰りにナナハンに乗りながら
居眠りして隣のトラックに頭をつけて走って
しまい危うく死にそうになったクニさん…
たぶん今の僕に近い年齢だったはずだが、
徹マン、深酒して平気で仕事してたクニさん…
脳梗塞してもカミさん騙して麻雀しに
出掛けてきたクニさん…
ロクなもんじゃねえけど好きなんだなぁー
たぶん俺がクニさんに可愛がられたのは自分と同じ匂いがしたからだろなぁ。
たしかに負けないぐらいろくでなしなったけど、子供は1人も残せなかったから俺の大敗である。あー、タフさも全く太刀打ち出来んし、ギャンブルもあんな豪快な打ち方も出来ないな。
相当なトンデモ亭主なのにいまも
話題にしてクニさんを語る女房。
もういい歳だが元気なのは神の存在を
信じたくなるー。
社会的に言えば器小せぇ前店長の方が
評価されるのだろうが、俺の物差しでは
断然に次の店長だったクニさんが上であるー
多摩川競艇に行くと今もつい38番柱のゾーンに行ってしまうのさ、おーいバカ餓鬼のタナカが来たよ、出てきてよ〜 心で呟いては探してしまうのだ。
去年13回忌でした。早いものですー
読んでくれてますかこれ…
まだ貴方を忘れてませんよ!安らかに。


