2024年9月8日、9時53分。

商店街のなかにあるY時計店の南側、有料駐車場を通過した時刻だ。

ここらはK駅近くで、古くからある個人商店が軒を連ねる。

郊外にスーパー、ドン・キホーテや電気屋などがあるため、全体的に寂れている。

それでも日曜日のこの時間、年配の人がちらほらしていた。

無料駐車場は無く、ここに止めて買い物し、買い物をした店で駐車券をもらうというシステム。

10時のアポだ。


店に入ると、目の落ち窪んだ、年老いた男性がいた。

この人物は、「珊瑚の達人」で検索すると、М本◯一郎という名前と顔画像が出てくる。

それより詳しい情報は出てこない。

プ◯ン・ドゥ・◯ャンスという銀座の会社に在籍しているように出てくるが、現在はこの会社は見つからない。別の場所に、同名の会社法人があるが、そこも実態はわからない。


このように、事前にネット検索して、顔画像は見ていたが、だいぶ前に撮影したものの様だった。


珊瑚の達人は口が臭くて臭くて、耐えられそうになかった。

タバコとコーヒーの混ざった臭い。もはや顔は土色になっていた。

暑かったが、すぐマスクをした。「昨夜からちょっと鼻の調子が悪くって」

むろん嘘だ。


一字一句書きたいが、とにかく高圧的だった。

事前に、氏名、生年月日、干支を書いて来るよう言われていたから、自分の情報だけ書いて来た。

家の見取り図も用意せよとの事だったが、これは抵抗があり、あえて用意しなかった。

初対面の、義理で会う相手に、事細かに知らせる必要はないと思った。


これらが、達人は気に入らない様子で、まずは怒られた。

「何で、家族全員の事を書かないの?」

「見取り図ないと、わかんないの。じゃあー、そうだな、賃貸?持ち家?」


私は、時計屋さんには世話になったのでここに来た、と話した。

 このイベントのプリントを見た時、頭数がいないといけないものだと感じた、とも話した。プリントに8マス方眼があり、1マス1人。それは、物見を丁寧にやってくれるためのものと思った。だがマスはまだ、2つ空いていた。


私の時計店への感謝について

「そういう風に考えない方がいいよ。時計屋が時計を直すのは当たり前だから

商売だから、当たり前だと考えるのが正しいそうだ。


臭い口にペットボトルのコーヒーをまだ流し、もごもごさせながら言った。飲みながら話す姿が気持ち悪い。


この人に、「きみは理解が遅そうだ」とされた。

よく知らない人にこそ、個人情報を渡したくはない。ましてこんな奴だった。

私以外の者の名前を書かなかった理由は、それに尽きる。

持ち家だが、賃貸です〜と答えておいた。

嘘でも、答えてもらえるだけ感謝してもらいたい。


まだ10時頃だった。


「あなたは何歳ですか」

「68歳、子年」

「お住まいはこの近く何ですか」

「家はない」

「うそ、まさか浮浪者?」

「鹿児島に一応家があるけど、一年のほとんどは帰ってない」


こちらの事を何でもかんでも聞き出そうとする珊瑚の達人、何の狙いがあるのだろう?


私は、こんな臭いオッサンの素性なんかどうでも良かったが、自分ばかり質問を受けるのは嫌だから質問し返した。


要するに、私の事、家族、家の間取りと方角を聞いて、なおせる事、気をつける事を教えてくれるんだって。


やたら訊いてくるけど、

話すほど情報を渡したらいけないと思って、

既婚子持ちであることも言わなかった。

だからだろう、

珊瑚「来年、出会いとか、あるかもしれないよ」

 「出会い?何のですか」

珊瑚「彼氏とかさ、花束持ってくるかも」

 「そういうの、興味ないです」

珊瑚「同性がいいのか」

 「そちらも興味がありません」


何か、色恋に話を持って行きたがる素振りがあった。

次に、珊瑚の達人は、「念珠」を勧めて来た。


ついに珊瑚様のご登場だ。

「これを、身につけると運気があがるよ」

珠が108個あるとか、珠全てに名前があるとか、何か言っていた。

これが88万円!

人気商品らしいが、

こんなの、即決で買う人いるんだろうか。

何十万とする、珊瑚の仏像も勧められた。

ボケツッコミか?、

私に商品を勧めながら「あ、ローンは嫌いか」と商品を引っ込めていた。

バカな私だけど、さすがにこんなもの買わない。


私は、いつ店を出ようかとばかり考えていた。


あ〜あ、せっかく、

時計の職人がいる店を見つけたのに。

他に時計屋が見つからないからさ。

これからもここで時計を診てもらいたいと、今日は我慢してきたのに。


残念だけど、ここには貧乏神がいたわ。

珊瑚の達人という貧乏神。

Y時計店へは、年2回来て、商売をするらしいけど。

こんな貧乏神に会うように、そう私に勧めたこのお店にも、二度と来ないと決めた。


こんな詐欺まがいのくさいオヤジに2時間も付き合ってしまった、自分がイヤになった。


3度目の来店だったが、「この店は今日で最後」と決めたので、さっさと店を出ようとした。

大人しくなっていた店員が、急いで駐車券を寄越したが、今回だけ、無料券が足りず、無料にならなかった。


自分の意思よりも義理のため来たので、100円でも、払うのは不快だった。


もし、これを読んでいる人がいたら、

平気で、ひとをばかにして、こんなものを売りつける奴がいるので、気を付けて欲しい。


そして、よい時計屋があったら、教えて欲しい。