東芝、128GB の SSD を製品化へ


東芝は10日、PC 向けに、多値技術対応の NAND 型フラッシュメモリを搭載した128GB の SSD(Solid State Drive)を製品化することを発表した。2008年第一四半期(1~3月)からサンプル出荷し、来春以降、量産を開始する予定だ。サンプル価格は128GB で12万円で、量産を開始する時点では10万円を切るレベルになると見込んでいる(同社広報)。


SSD は記憶媒体にフラッシュメモリを用いるドライブ装置。高速のシリアル ATA を採用し、HDD に代わる高速ストレージとして注目されるものだ。


現状の SSD には、メモリセルごとに「0」か「1」を記録する二値技術が採用されているが、HDD に比べ高速・軽量である反面、小容量・高コストであることが課題だった。多値技術は、メモリセルごとに「0/0」、「0/1」、「1/0」、「1/1」のいずれかを記録する方式で、素子あたりの容量を二値技術よりも高めた。

新製品は、DRAM キャッシュと連携した高速・並列データ転送や書き込み領域の平準化など、多値技術に対応した独自開発のコントローラを搭載し、従来 SSD 同等の処理速度(読み出し秒速100MB、書き込み40MB)と長寿命(100万時間)を実現する。


3mm 厚の小型基板で提供するモジュール品、基板をケースに収めた完成品の2つが用意されており、それぞれ32GB、64GB、128GB 品がある。


就職氷河期に増えたブックカフェ

今、書店と飲食の距離が急接近中


リブロ吉祥寺店に設けられた「カフェ読」コーナー
リブロ吉祥寺店に設けられた「カフェ読」コーナー。

参加した5軒のカフェのオーナー、スタッフが選んだ小説、エッセー、絵本などが並ぶ。



 今やすっかり定着した感のあるブックカフェ。しかし、ひとくちにブックカフェといっても、その形態は様々。ジュンク堂や三省堂のように、新刊書を売る大型書店の中にある店や、セレクトした古本を売る小さな古書店で飲食ができるタイプも。この2つはどちらも書店主導型だが、逆にカフェ主導でカフェのオーナーが自分の好きな本や雑誌を並べ、店内で自由に読める店も急増した。なかには客の気に入った本を会員制で貸し出す貸本屋スタイルの店まで登場。とにかく、ここ1~2年で本と飲食が急接近。ブックカフェブームを巻き起こしている。



 実は、こんなにブックカフェが急増した背景には若者の就職難がある。少ない元手で始められる古本屋は手っ取り早く、自分で本を売ってみたいという若者が増加。それならコーヒーもケーキも置いてという発想でブックカフェが続々と生まれた。



 そんななか、若者に人気の街・吉祥寺では「書を持ってカフェへ行こう!」を合言葉に、書店のリブロ吉祥寺店と吉祥寺の5軒の個性派カフェ(イルカッフェ、Patisserie A.K Labo、おちゃらか、ORANGE cafe、Yucca.)がコラボレート。10月10日~11月10日まで実施したのが「カフェ読」フェアだ。リブロ吉祥寺店にはカフェを模した売場が登場。おすすめの「カフェで読みたい本」をアピール。面白いのは、この本のセレクトを参加したカフェのオーナーやスタッフが担当していること。本の推薦文もついている。



 ブックマーカーやブックライトなど読書関連雑貨も販売。参加カフェがつくった特製サブレまでプレゼント。フェアの内容や吉祥寺マップも入ったフリーペーパーも同時配布した。一方、5軒の個性派カフェでは読書しながらでも食べやすい「読食」メニューを開発。リブロ吉祥寺店で本を買ってから来店した客には割引サービスも実施。読書の秋には好きなだけ本が読める居心地のいいカフェで、まったりとした贅沢な時間を過ごそうというライフスタイルを提案している。



 今回のフェアを担当したリブロ吉祥寺店の筒井陽一さんは「やはり女性に人気があり、浅生ハルミンさんの『私は猫ストーカー』(洋泉社)などのエッセイや雰囲気のよい料理本がよく売れています。今後もこういった企画は広げ、つなげていければと思います」と語る。カフェ側のリーダーシップをとった「イルカッフェ」オーナーの別所有さんは「うちの店でも、ひとりで本を読む方が多くて。20代後半から30代が中心ですが、お酒を飲んだり食事をしながら、夜11時の閉店まで何時間も本を読んでいるのは男性の方が多いですね。静かなカフェで心ゆくまで本を読みたいというニーズは絶対あるし、若い人にもっと本を読んでもらいたいな、本屋さんとカフェを繋ぎたいなと常々思っていたんです。そこへリブロさんからのアプローチがあって今回の企画が実現しました。今回のフェアでは心おきなく読書を楽しんでいる方が増えて好評だったので、来年もまたやりたいですね」と語る。



 下北沢にあるcafe ordinaireオーナーの秋本高志さんは「8年前にコーヒー、読書、ジャズの3つが楽しめる、自分自身が居心地がいいと思う店をつくりました。図書館みたいに静かな空間です。これがハマったと思うんですね。みんなそういう場所を求めてた。ほとんどが常連さんで7割が女性客です。店にある本が好きなだけ読めて、ほどよくほっといてくれるところがいいみたいです。そんなうちの店が、急にブックカフェって呼ばれるようになったのは3~4年前からです」と語る。最近のブックカフェ人気の背景には、おひとりさまの増加、スローライフ志向、居心地のよい第2のリビングでの読書の快楽などが深く関わっているようだ。


ClearContext、『Outlook』環境活用ツールの新版をリリース


Microsoft のメッセージクライアント『Outlook』を利用していて、大量に届く Eメールを追跡するのが大変で困っているなら、解決策は手の届くところにあるかもしれない。ClearContext は5日、Outlook の Eメールメッセージを優先度などの条件で整理できるソフトウェアの最新版、『Information Management System (IMS) v4』をリリースした。最新版は、3つの新機能を備えている。


1つ目の新機能『IMS Dashboard』は、特定のプロジェクトに関連する Eメール/タスク/約束について、Outlook および『Exchange』の複数フォルダやデータストアを横断し、まとめた形で閲覧できるようにするものだ。


2つ目の新機能『Alerts』は、連絡先や Eメールスレッドに関する備忘通知機能だ。重要な相手から、または重要なスレッド内に未読メールがあれば、システムの方からポップアップで通知してくれる。


最後の新機能『Do Not Disturb』は、Outlook の新着メッセージ通知機能を1クリックで無効化できるものだ。同機能の背景には、Eメール到着の度にユーザーが作業を中断して集中を失うことのないように、との考えがある。

ClearContext の CEO (最高経営責任者) Deva Hazarika 氏は、取材に対し次のように語った。「Eメールをチェックするため、アプリケーションと Outlook の間を行き来するときの状態切り換えは、時間を大いに奪うものであり、知識労働者にとって非常に大きな問題だ」


なお標準機能は、すべて従来版と変わらないため、たとえば受信メールを色分けしたり、優先順位をつけるといったことが可能だ。優先度が高くないスレッドに対し、後日に備忘通知するよう設定した上で処理を後回しにするといったことも、1クリックで行なえる。

データ重複除外の Diligent、1050万ドルの追加資金調達に成功


データ保護とデータ重複除外を専門とする Diligent Technologies は20日、4回目の資金調達で1050万ドルを獲得したと発表した。同社がこれまでに獲得した資金の総額は、4650万ドルにのぼる。

Deligent の資金調達には、これまで Matrix Partners、Accel Partners、Gemini Investors といった投資会社が応じてきたが、今回新たに Eastward Capital Partners が加わった。Deligent は調達した資金を、研究開発のほか、営業/サポート/技術開発に充てる。

Diligent の CEO (最高経営責任者) Doron Kempel 氏は、「当社の企業向けデータ重複除外プラットフォーム『ProtecTIER』に対する需要は、急速かつ大幅に伸びている。この需要に応えるため、この分野における浸透を拡大するとともに、研究開発計画を強化、加速できるよう、われわれは資金を調達した」と語っている。このほか、新たな販売パートナーからの要求に対応するためにも調達した資金を利用していくという。

2006年1月に製品の販売を開始して以来、同社の顧客数は100社を超えており、いずれも『Fortune 1000』に名前の挙がっている企業のデータセンターだという。Diligent によると、同社の顧客の中には通信大手3社をはじめ、世界的な自動車メーカーや国際金融機関、さらに医療保健、メディア、エンターテインメント分野における大企業が名を連ねているという。

Diligent は同社のディスクベース仮想テープライブラリ (VTL) について、1システムあたり最大1ペタバイトの物理ディスク容量という拡張性を備え、毎秒400MB のデータ転送速度を実現し、顧客のディスクシステム容量を25倍以上に増やすことができると述べている。

データ重複除外は、ここ1年大きな注目が集まっているストレージ技術の1つで、企業においてバックアップするデータの量を大幅に削減することが可能になる。Network Appliance (NetApp) などの大手ベンダーも、主要ストレージ製品にこの技術を採用している。


転職



NEC など、メーカー・卸・小売が商品情報を共有できるシステム構築


菓子卸の株式会社山星屋は14日、NEC、eBASE 株式会社と共同で、菓子の原材料・原産地などの商品情報をメーカーや小売と共有・管理できる商品情報管理システムを構築したと発表した。システムは5月より稼働した。

このシステムでは、山星屋がメーカーから入手する菓子の原材料・製造工程・アレルギー物質や添加物の有無・保存条件・賞味期限などの詳細情報を、メーカーや小売業と共有・一元管理することが可能。また、小売業へ提出する商品情報の帳票や各種販促資料の作成を効率的に行うための機能を実装している。

データベース構築ソフトウェア「eBASE」と、NEC 製の「Express シリーズ」のサーバー4台を中核に構成され、ネットを介して取引先メーカーから商品情報の提供を受けるとともに、取引先メーカー内での共有データベースとしても活用されている。

システムの特徴は以下のとおり。

商品情報データベースは専用サーバーで一元管理されるため、山星屋社内における商品情報の共有はもちろんのこと、メーカーや小売業からもデータベースの参照・登録が可能になるため、メーカー/卸/小売業が一体となって商品情報を管理できる。

また、小売業から指定されたフォーマットでの帳票自動出力が可能になるため、メーカー参加による帳票作成作業の分業化が進み、入力ミスも最小化される。さらにシステム導入とともに、山星屋では商品情報を管理する専任部門を新設し、運用管理体制を強化した。

そのほか、原材料情報などのテキストデータに加え、商品画像データなどの蓄積も可能で、Web カタログやビジュアルな提案書の作成に簡単に引用できる。商品情報管理システムは棚割管理システムに自動連携しており、山星屋の営業担当は得意先に対して、常にアップデートされた最新のデータを使用し、迅速な売場提案を行える。


リンクス、ATI Radeon HD 2600 搭載グラフィックカードを18日に発売


GIGABYTE UNITED 正規代理店のリンクスインターナショナルは、2007年8月15日、ATI Radeon HD 2600 シリーズ搭載グラフィックカード、DDR3 メモリ搭載の GV-RX26T256H と DDR2 メモリ搭載の GV-RX26P512H を2007年8月18日より全国の PC パーツ専門店にて販売すると発表した。

GV-RX26T256H は、新世代グラフィックチップセット ATI Radeon HD 2600XT、DDR3 メモリ搭載のスタンダードモデル。GIGABYTE 独自の冷却技術「SilentPipe2」を搭載、大きく黒いヒートシンクを備え、内部には銅製のヒートパイプが通っている。

コア上に銅製のヒートパイプを置くことにより左右に熱移動を行い、コアの熱をヒートシンク全体に効率よく拡散し冷却。ファンが付いていないのでノイズを限りなくカットできる。

GV-RX26P512H は、ATI Radeon HD 2600 Pro、DDR2 メモリを 512MB 搭載したエントリーモデル。旧型の「SilentPipe2」を搭載する。

Radeon HD 2600 シリーズの消費電力は最大で45W。Radeon HD 2900 シリーズと比べ大幅に消費電力を低減。

統合型シェーダユニットを120個実装し、Direct X10 で採用されるシェーダモデル4.0、グラフィックス処理インターフェイス Open GL 2.0 をサポートする。また、グラフィックカードでは初めてとなる 65nm プロセスルールを採用している。

デジタルコンテンツの不正コピー防止を目的とする著作権保護機能 HDCP に対応。そのほか、3D 処理能力を高めるマルチ GPU 技術「ATI CrossFire」や、鮮やかで忠実な動画や画像表現、スムーズな HD 映像などの再生環境を高める技術「ATI AVIVO」をサポートする。

最高で毎秒330メガピクセルの動画データ転送が可能なデュアルリンク DVI に対応。最大2,560×1,600ピクセルの解像度で出力できるほか、マルチディスプレイにも対応する。

主な出力インターフェイスは、デュアルリンク DVI-I×2、TV-OUT、D-Sub 出力(DVI より付属アダプタ使用)、S-Video 出力、コンポーネント出力、HDCP 対応。

GV-RX26T256H の搭載メモリは DDR3/256MB、コアクロック 800MHz、メモリクロック 1.4GHz、メモリバス 128bit、スロット形式は PCI-Express×16。同梱の付属品は、DVI→D-sub 変換アダプタ×2、HDTV ケーブル×1、CrossFire ブリッジケーブル×1、ドライバ CD。価格は1万6,200円前後。


GV-RX26P512H の搭載メモリは DDR2/512MB、コアクロック 700MHz、メモリクロック 800MHz、メモリバス 128bit、スロット形式は PCI-Express×16。同梱の付属品は、DVI→Dsub 変換アダプタ×1、HDTV ケーブル×1、ドライバ CD。価格は1万3,400円前後。


プラネックス、高速通信が可能な無線 LAN ルータセット「MZK-W04N-PK」を発売


プラネックスコミュニケーションズ株式会社は2007年8月16日、理論値300 Mbps の高速通信が可能な Draft IEEE 802.11n 40 MHz 対応の無線 LAN ルータとカードアダプタのセットモデル「MZK-W04N-PK」を8月下旬より全国の主要代理店および PLANEX Direct を通じて発売する、と発表した。

このルータは、従来の54 Mbps の約6倍の300 Mbps(数値は理論値)のスループットを実現。複数のアンテナで送受信することで高速無線 LAN を実現する。

インターネットでストリーミングなどの動画を楽しんだり、音楽や映画などの容量の大きいデータのダウンロード、オンラインゲームなどに適している。

また WPS(簡単無線設定機能)にも対応しており、無線 LAN の設定が、ルータ本体のボタンと PC 側の簡単なユーティリティの操作だけで行える。

価格はオープンプライス。


夏休み期間中の子供のネット利用に注意――IPA


独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)は2日、7月の「ウイルス・不正アクセスの届出状況」をまとめた。夏休み期間中に子供のネット利用が増えることや、企業でもシステム管理者の不在中に被害が拡大する可能性があると、IPA では注意を呼びかけている。

最近 IPA では、「子供がインターネットを利用していて、請求書が表示されるようになり、その画面が消えなくなってしまい、困っています」というような保護者の方からの相談を毎日のように受けているという。これは、例としてアダルトサイトや出会い系サイトのような有害なサイトに、その危険性を知らずに興味本位で入り込んでしまった結果、OC に請求書を表示する不正プログラムが埋め込まれたためだ。

こうした被害に遭わないために、ウイルス対策ソフトを導入するほか、常に最新のパターンファイルに更新する、有害サイトへのアクセスを防ぐフィルタリングソフトを利用するなど対策を取るよう IPA では呼びかけている。

企業においても、夏季休暇はシステム管理者が不在になる場合が予想され、ひとたびウイルス・ワーム感染や不正アクセスによる Web 改ざん・メール不正中継などの被害に遭うと、不在期間中に被害範囲が拡大する可能性があると IPA では警告している。

7月のウイルス届出状況は、ウイルスの検出数が約51万個(前月比3.4%増)、届出件数が3,069件(前月比5.9%増)と、ともに増加した。検出数は、第1位が W32/Netsky(約44万個)、2位が W32/Mytob(約1万個)、3位が W32/Stration(約1万個)。

不正アクセスの届出件数は10件で、そのうち被害のあったのは8件。被害届出の内訳は、侵入が3件で、その他が5件だった。侵入届出の被害内容は、外部サイトを攻撃するための踏み台になっていたものが2件、フィッシングに悪用するためのコンテンツを設置されていたものが1件となった。

相談の総件数は1,162件と過去最高を記録した。そのうちワンクリック不正請求に関する相談が316件と最も多く、セキュリティ対策ソフトの押し売り行為に関する相談が16件、Winny に関連する相談が19件だった。


国税庁の「電話相談センター」システム、CTC が受注


伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)は6日、国税庁が11月に稼働開始する電話相談センターのコンタクトセンターシステムを受注したと発表した。今回のシステムは、全国を網羅する行政・自治体のシステムとしては最大規模となるという。

CTC は、昨年11月に先行して稼働を開始した東京・仙台・福岡の計3か所の電話相談センターのコンタクトセンターシステムを構築。対象となったのは20の税務署だ。今回、残りの9か所となる札幌、関東信越、名古屋、金沢、大阪、高松、広島、熊本、沖縄にある284の税務署、そして全国11国税局および1国税事務所の全12か所のシステム構築を受注した。受注額は昨年分とあわせて約8億5,000万円に上る。

今回の構築事例を機に、CTC では官公庁向けコンタクトセンターの構築ビジネスを強化する。


 6月下旬、東京湾に臨む三井造船千葉事業所のドック。建造中の大型船のデッキに、親子以上に年齢の離れた2人の職人の姿があった。

 仮組みされた船室の壁を、床から垂直に整える作業をする19歳の若者。その姿を、「スキルマスター」の文字入りのヘルメットをかぶった高梨信照さん(61)が見守る。

 外側に膨らんだ部分を押し戻していく小型ジャッキが、途中で止まった。

 「どうして動かなくなった? どうすればいい?」

 「裏の骨組みが壁に当たっているので、少し切ります」

 高梨さんが指導を始めて2カ月。「最初は全然答えられなかった。随分成長しましたよ」と目を細めた。

 高梨さんは入社以来、同じ現場で船を造ってきた。船体のカーブは図面通りか、直線の壁が曲がっていないか――。わずかなズレを目で見るだけで見抜き、素早く修正する。上司は「1ミリ単位で妥協しないし、スピードも5年目ぐらいの職人の2倍は速い」と評価する。

 昨年定年を迎えたが、技を見込まれてスキルマスターに指名された。今年1月に開設された「技能伝承センター」の講師役だ。

 だが、「技術は目で見て盗め」と言われて育った世代。「教えることに関しては私も1年生」と話す。自分の注意に相手は納得したのか、反発しているのか ――。性格を把握するまでは苦労する。「思ったことをなかなか言葉で表現してくれず、何を考えているのかをつかむのが難しい」

 それでも、つきっきりで指導する中で、うまくできたときにちゃんと褒めればやる気が高まることがわかった。教え方のコツが徐々に身についてきたと感じている。

 現在の教え子は入社したての2人。2、3カ月指導すると、通常の仕事を1、2年続けたぐらいの水準に達するという。

 「定年後も自分の技術が若者を介して役に立つのはうれしい。教え子が独り立ちするときの喜びは大きいです」

   *

 技術を伝える先は、国内に限らない。コンサルティング会社の松下電工創研(大阪府)では、親会社の松下電工の定年退職者らと契約し、国内外の協力会社などへコンサルタントとして派遣している。

 現役時代、住宅資材工場のライン設計などを手がけた柴五郎さん(68)はその一人。国内の企業に加え、4年前からタイの会社が顧客に加わった。一度は海外で働きたいとずっと思っていたので、喜んで引き受けた。

 現在、タイで生産性向上を指導している家具製造会社は2社目。2年前に依頼を受けた当時は、流れ作業で同じ製品を大量に作っていた。だが、消費者の好みが多様化し、多品種を短期間で作ることが求められる。柴さんは、製品ごとに少人数で材料段階から完成までを担う「セル方式」の導入を提案した。

 通訳を介しても技術的な話は伝わりにくいので、絵を描いてイメージを示す。それでも伝わらない部分は、暑い時季は室温40度にも達する工場の中で、汗だくになりながら手取り足取り指導する。

 「海外の人には何とか吸収しようという熱心さがある。こちらものめり込みます」

 柴さんが通うのは月1回、滞在は3日ほど。毎回、翌月までの改善点を「宿題」として伝える。

 だが、宿題をちゃんとやっていないこともある。そんなとき厳しく怒りすぎると、プライドが高いタイ人は話を聞かなくなったり、仕事を辞めたりする場合もあるという。だから、「奥さんとの約束だって、守らなかったら怒られるでしょ」と冗談も交えて説明するよう気を配る。

 その結果、製品ごとの生産性は2年間で3、4割増から2倍ぐらいになった。毎月、現地で生産性のグラフを見るのが楽しみだ。社員たちが「これだけ数値が上がった。見てくれ」と喜びをストレートに表現するのがうれしい。

 工場の人たちとは言葉は通じなくても、工場を良くしたい思いで一体だと感じる。今春、業務改善に貢献した社員の表彰式があり、柴さんが金賞を渡す役を務めた。

 「定年後に海外でこんな出会いがあるとは。人生のかけがえのない財産になりました」

▼60歳以降の継続雇用の対象者は

原則希望者全員   24.6%

何らかの基準を設定 72.2%

無回答        3.1%

▼定年時と比べた年収水準

 (年金や公的給付を含めて)

4割以下    9.1%

半分程度   20.4%

6~7割程度 44.4%

8~9割程度 14.8%

同程度以上   6.6%

無回答     4.8%

 (労働政策研究・研修機構が昨年10月、大企業を対象に行った調査から)