祐希学はふと考え事をしていた。………僕が戦うって事はアキトとも戦う事なのかな?頼むから来ないで欲しい…………捕らわれた親友 天川アキトが気になっていた。ヒロミの話も気になっていた。


[いい?マナブ君。彼らは人間を取り込んで勢力を拡大している。取り込んだ者は奴らの下部になるか苦痛を味わうか。アキト君とも戦う覚悟をしておいて]



俺はアイツを救いたいからここへ来たんだ。アイツは大丈夫さ。コンピューターウイルスなんかに負けるような奴ではない。



一方、星崎ヒロミもコンピューターの世界で活動をしていた。いよいよ今夜、ウイルスの情報網を遮断し隔離する作戦が始まる。プログラムが連盟を組みウイルスに立ち向かう作戦。それは人間の知らない戦いだった。



[よいか!我々の戦いは未来の架け橋になるのだ。我々の作戦を後世に残すのだ!義勇軍よ!諸君らの協力に感謝する。以上!]歓声と怒号がアリーナを支配する。ヒロミもその中にいた。……明後日は彼らが行動をする。その援護ならいくらでも協力出来る。我々が勝利すると信じているから…………[これより行動に移る。第一部隊!前へ!]数えきれない数のプログラムが前へ出る。[いざ!進めー!]ゴーと唸るエンジンの音と歓声で赤い竜巻状の光を放つ。その竜巻の乱気流に乗り、第一部隊が飛び立つ。



[第一部隊!目標地点に到達!これより排除す…………ガー]無線が途絶えた。[敵襲!奴らだ!待ち伏せてやがった!]遠くの空が黒と赤のコントラストを描いた。[行け!第二部隊!援護しろ!]ふたたび赤い光が舞い上がる。ヒロミはまだ早いと待機していた。………私には守るべき世界がある。行きたい未来がある。その為なら、どんな試練も立ち向かえる…………ヒロミは敗れてゆく戦友を見ながら歯がゆい想いを募らせた。



[敵は更なる増援を準備している可能性がある!少しでもスキがあれば中へ突入しろ!周りの者は援護をしろ!小隊を組むのだ!]部隊のリーダーが指示を出す。[奴らの勢力とて有限なのだ!勢力が衰えるまで耐えよ!]しばらくすると黒と赤のコントラストは赤優勢になる。[今だ!第三部隊!出撃!]次々に目標地点の奥へ入ってゆく。[目指すは情報元の司令塔!迅速に制圧せよ!]



[ターゲットをとらえた!潜入する!こっちだ!][よし!全軍!出撃!]今がチャンス!今しか無い。ヒロミも飛び立つた。



既にいくつものプログラムが中を制圧していた。司令塔は崩壊まであと一歩だった。



ヒロミは司令塔の近くの山小屋が気になった。そこへ向かうと一人の男が鎖に繋がれ、警備が三人いた。ヒロミは三人を蹴散らし鎖に繋がれた男を救う。[大丈夫ですか?救援に来ました。もう大丈夫ですよ][アッ………貴女は?][星崎ヒロミ。プログラムです。ウイルスじゃないですよ][プログラム………そうか。救援か?ありがたい][怪我は?][麻痺していてよくわからない][あの………コンピューターウイルスに捕らわれていたんですか?][アイツら………気がついたらここにいたさ][少し休みましょう][いや。出来ない。待っている人がいるから。アイツは…………][待って!今なんて?][俺の親友だ。アイツは………]


[全軍、撤退せよ!システムを破壊した。これよりメルトダウンに入る!]


[話しは後で。立てる?逃げるわよ。乗りなさい]ヒロミは自分のマシンに謎の男を乗せた。[もしかして貴方は、天川アキト君?心配してたわ。彼も][人違いだ。連絡は取れるか?外と][明後日、ステンレスキャッスルのチームが戦うわ。伝言があれば私が………][彼らの地図を持っている。それを盗んだから捕まったんだがな。中核の地図を持っている。連絡させてくれ][その前に休みなさい。まともな判断もできなくなるわ。疲れていると。身柄の確保は私から連絡しておくから。名前は?][ありがたい。少し寝かせて貰うよ]



……アイツらはきっと来ると信じていた。だから苦痛にも耐えられたのだ…………薄れゆく意識の中、謎の男は保護された。メルトダウンのオレンジの炎とプログラムの赤い光が交差する、幻想的な夜だった。





続く