はじめに
閉店後もバリカンの振動が指先に残る。理容店で技術より笑顔が評価され、首筋が凝った夜が続いた
ある夜、店の明かりを落としても、バリカンの短い振動が指先に残っていました。整髪料の匂いと、鏡に付いた指紋が、まだ目の前にあります。
はじめまして、せいです。街の理容店で、シャンプーとバリカン補助、鏡拭きのパートをしています。37歳。
客の前では笑顔を作ります。でも、評価に残るのは、だいたい声のトーンと笑顔の回数だけでした。バリカンを渡す手の速さより、鏡の前で明るく話せるかどうかが先に来ます。
店のLINEに副業のスクショが流れてくる夜。スタンプで返してから、胸の奥がきゅっとなる自分がいました。
今は、笑顔の回数だけで自分の価値を測るのをやめました。帰宅後は、ブログや記事の「何人が読んだか」「どこで離脱したか」という記録だけを見て、次の一行を決めるようにしています。
散髪カバーを畳んだあとでも、文章の記録は少しずつ増えていく。座ったまま、内緒で第2の柱を育てています。
CHAPTER 01
理容チェアの延長だけの副業は、もうやめた
帰っても鏡を拭いた回数ばかり頭に残って、結局何もできない夜、ありませんか。
広告の「在宅」「未経験OK」は毎日見ます。でも、店頭で声を張る仕事の延長みたいな副業は、もう無理だと分かっていました。
このまま段取りだけを反芻する夜は限界でした。派手な保証には触れず、記録だけを見て順番を直す型を探していました。
CHAPTER 02
きれいな「接客マニュアル」だけでは、誰も最後まで読まなかった
きちんと整えた「接客マニュアル」だけを並べた記事は、最後まで読まれませんでした。
やけくそで書いた「ありのままの話」だけが、同じ理容チェアで声を飲み込んでいた人に、最後まで読まれた。
能力が足りなかったのではなく、評価される場所がチェアの前とネットで違っただけだと気づきました。
CHAPTER 03
バリカンを電源オフにしたあとも、柱ができた
今でも理容店の仕事は続けています。今日辞めるつもりはありません。ただ、帰宅後に毎回首筋が凝る日が、減りました。
バリカンの振動を聞き続けなくても、ブログの読者数や記事の記録は、少しずつ増えていく。それだけで、次の開店前を迎えられるようになりました。
最後に:バリカンの振動を抱えたあなたへ
向いていないのではなく、笑顔と声のトーンだけで測られる場所に、立っていただけです。
見ている場所を変えれば、夜はもう少し、軽くなります。
