はじめに
閉店後も茎を切るハサミの音が耳に残る。花屋で笑顔だけが評価され、肩がこわばった夜が続いた
ある夜、店の明かりを落としても、茎を切るハサミの短い音が耳の奥に残っていました。クラフト紙の端が、指の腹に少し刺さった気がします。
はじめまして、るかです。街の花屋で、ギフト包装とリボン、茎切りのパートをしています。38歳。
客の前では笑顔を作ります。でも、評価に残るのは、だいたい声のトーンと包装の速さだけでした。水を替えた桶の匂いと、同じ段取りを繰り返す指先の疲れが、閉店後まで続きます。
店のLINEに副業のスクショが流れてくる夜。スタンプで返してから、胸の奥がきゅっとなる自分がいました。
今は、笑顔の回数だけで自分の価値を測るのをやめました。帰宅後は、ブログや記事の「何人が読んだか」「どこで離脱したか」という記録だけを見て、次の一行を決めるようにしています。
リボンの端を束ねたあとでも、文章の記録は少しずつ増えていく。座ったまま、内緒で第2の柱を育てています。
CHAPTER 01
包装台の延長だけの副業は、もうやめた
帰っても包装の段数ばかり頭に残って、結局何もできない夜、ありませんか。
広告の「在宅」「未経験OK」は毎日見ます。でも、店頭で声を張る仕事の延長みたいな副業は、もう無理だと分かっていました。
このまま段取りだけを反芻する夜は限界でした。派手な保証には触れず、記録だけを見て順番を直す型を探していました。
CHAPTER 02
きれいな「包装手順表」だけでは、誰も最後まで読まなかった
きちんと整えた「包装手順表」だけを並べた記事は、最後まで読まれませんでした。
やけくそで書いた「ありのままの話」だけが、同じ包装台で声を飲み込んでいた人に、最後まで読まれた。
能力が足りなかったのではなく、評価される場所がカウンターとネットで違っただけだと気づきました。
CHAPTER 03
ハサミを鞘にしたあとも、柱ができた
今でも花屋の仕事は続けています。今日辞めるつもりはありません。ただ、帰宅後に毎回肩がこわばる日が、減りました。
茎を切る音を聞き続けなくても、ブログの読者数や記事の記録は、少しずつ増えていく。それだけで、次の開店前を迎えられるようになりました。
最後に:ハサミの音を抱えたあなたへ
向いていないのではなく、笑顔と包装の速さだけで測られる場所に、立っていただけです。
見ている場所を変えれば、夜はもう少し、軽くなります。
