引き続きチャン侍医です

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「すまない・・・言い訳に聞こえるかもしれないが、向こうでは意識がなくなるほど酔うことはなかった・・・

・・・・・・心から、謝罪する」


深々と頭を下げられるリオン様・・・

私が医仙殿を好いていると誤解はされているものの・・・・・・


もしや、私が典医寺から出て行こうとしている

その事を、気にされてますか?


「・・・・・・勝手だと重々承知だ

だが・・・・・チャン侍医、あなたにそばにいて欲しいんだ」

「それは、何故(なにゆえ)ですか?」

そう聞いた私をあなたは、真っ直ぐに見つめられて・・・・・


「この高麗で、私が信頼している方だから・・・
他の誰よりも、チャン侍医・・・あなたを信頼している」



真剣に、真摯に、私にそう言われる あなた


私の気持ちが何だというのだ・・・・・

この方の信頼を、私は手にできた

それは男女の恋情ではないが、もしかしたら  それ以上の絆なのではないだろうか?



「頼む、この世界で姉上を除けば唯一・・・チャン侍医だけが信頼できる人なのだ

・・・私の 傍らにいて欲しい・・・」

「隊長も信頼に足る男ではありませんか」
「・・・本心を言えば、職務に忠実な隊長は、王命を出されれば・・・従わざるを得ないだろう?」

もちろん そうでしょう・・・隊長は近衛隊の長なのですから


「その王命が、もし私の命を取れというものなら・・・チャン侍医はどうする?」

「・・・・・・もし、その様な王命が出たとしたら

・・・・・・あなたを逃がします、何としても、どんな事をしても」

私の答えに迷いはありません

あなたを無事に 逃がせるならば、私はどんな責めも負います


この命で すむのなら、それでも構いません



・・・・ああ、そういう事なのですね

隊長は葛藤するでしょう・・・

私と違い・・・逃がそうとするのではなく、王命そのものを何とかしようするでしょうが・・・

その原因となった事を、何とかしようと・・・

もし何ともできなければ・・・いえ、それは分かりません

そのとき隊長がどう判断されるかなど、私には分かりません



私が分かるのは、自身のことだけです・・・


この命に代えても、あなたを御護りすると決めている・・・

自分の想い・・・・・それだけです




この男は、私を逃がした責めを受け・・・死ぬこともいとわないだろう

そんな男だから、私は!!!


「・・・・・頼む、私の側に・・・私の近くに、いて欲しいんだ」


何も、迷うことは ありません

あなたは私の唯一の方・・・・・その  あなたが私を望んで下さるのです


私の答えなど、とうに出ていましたね


私は先程まで書いていた紙を、あなたの目の前で破り捨てました


これが  私の答えです


・・・・・・リオン様、あなたの側へと御望みならば、ずっと御側にいましょう


たとえ胸を切り裂く痛みが、私を責めようと

あなたからの信頼を、私は得たのですから



「ただし、御約束をしていただきます」
「・・・・・何だ?   ちょっと怖いな・・・」

「・・・・もし迷われているとき、悩まれているとき、何か憂いておられるとき・・・

私にもお聞かせ下さい、リオン様の心の内を・・・・・」


あなたの 御心に・・・叶う限り、寄り添いたいのです

苦しみも、悲しみも、私に・・・分けて下さい


「分かった、約束する・・・」
 
頷くリオン様は、『ほっ』とされていて・・・私も嬉しいです


「さ、姉上の様子を見にいくか」
「はい、お供いたします」

私達は揃って、研究室から出たのだった


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・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・気まずい。。。



だって子供みたいに  泣いちゃったんだもん!

恥ずかしくて顔もあげられないじゃない!


チェ・ヨンの胸にすがって、『わんわん』泣いたんだもん・・・・・


・・・・・でも、このままって訳にはいかないわよね?


え〜〜〜っと、どうしよう・・・・・


1つ目!   明るく「ごめんね〜  すっごく泣いちゃったわね〜!  もう大丈夫だから!(๑>◡<๑)」  と離れる

2つ目!   「もう・・・大丈夫よ・・・」と、憂いを含みながら離れる

3つ目!   ・・・・・・・分かんない!!!



どうしよう、どうしよう、どうしよう・・・・

頭をガシガシしそうになったとき、上から声が聞こえたの



「それで俺は、いつまでこうしておれば  いいのですか?」
「へ?」

「もう泣き止んでるのでしょう?」
「・・・あは、あはっ・・・あははっ・・・」


・・・・・・・バレてた


苦笑いしながら離れた私は、照れ隠しにチェ・ヨンの腕をバシバシ叩いて・・・・・・

「や、やぁーーね!  気づいてたなら言ってよ〜〜〜
どうやって顔をあげようかって、考えちゃったじゃないの!!!」

「痛っ・・・・医仙殿、医仙殿っ!!!」
「何よ!」


「・・・・・痛いです」
「あ、ごめんね・・・」


えへへ・・・   笑ってる私を見て、チェ・ヨンが・・・・・・・


なに?   なんで・・・・・・


そんなに  嬉しそうな顔してるの?



「笑えるのですね・・・・・」
「え?」

「青い顔をし  笑わないから・・・・・」
「・・・・・チェ・ヨン」


そんな風に見てたの?

ショックで笑えなくなってた私のこと、見てくれてたのね・・・・・


「確かにアレはショックだったけど、こんな事で負けるのも嫌じゃない!

・・・・・・それに、思いっきり泣いたら スッキリしたし・・・・・」

「おかげで鎧が湿っぽい・・・」
「それは・・・・・・ごめんなさい」


あれだけ泣いたもん、鎧も濡れたわよね?

だから素直に謝ったのよ、私・・・・・


「くすっ・・・ 」
「???」

見上げたチェ・ヨンが、拳を口にあてて笑ってる



「冗談です・・・」
「ひっどい!!!   私は真面目に謝ったのに!!!冗談?  冗談ですって!!!」

「そんなに吠えないでください・・・」
「吠えてないわよ!」

何よ!  私のこと揶揄うなんて!


「・・・・・それだけ元気が出たなら、俺も安心です」


あ・・・    私を心配して  ワザとなのね・・・



もう、それなら・・・・・怒れないじゃないの



「・・・・・泣かせてくれて、ありがとう」

あなたの心遣いが嬉しくてね、私・・・ 素直に お礼が言えたのよ・・・・


「いつでも泣いていいんです・・・俺の前では、いつでも・・・」


チェ・ヨンの大きな目が、私を見つめてるの

黒く煌めく目が、私をじっと・・・見つめてるの


まるで黒曜石みたいに  キレイな目だわ・・・


私は彼の目に  惹きこまれていったの・・・・・



「あ〜・・・・・・こほん」
「リオン様、お邪魔をしては・・・」

「だが、私は姉上を泣かせてやってくれと言ったが、口説けとは言ってない」
「隊長は口説いてはいないように思いますが」


「いや、あの目は口説いてた・・・私には分かる」


そう言いながら『くすくす』と笑うリオン様は、隊長を揶揄っていたのでした


「やぁーね、リオンったら、へ、へ、変なこと言わないで!  チェ・ヨンさんは私を、口説いてなんかいないわよ〜〜〜」

一人焦る医仙殿を見て、隊長とリオン様が笑っています


「隊長、ありがとう・・・姉上が笑えている」
「・・・・・いいえ、俺も医仙に笑って欲しかったのです」


小さな声で言いあう2人は、優しい目で医仙殿を見つめているのでした


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ウンスさんもショックから少し立ち直り、チャン侍医とリオンももとに戻りました!