ヨンさんとウンスさんが上手くいってる間に、忘れちゃならない あの方が・・・
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いつもの隊長なら、私とトルベが後をつけているなど、気配でお見通しなのに・・・・・
「くすくす・・・全く気がついてないな」
「ええ、まるっきり他に意識が向いてないです」
真っ直ぐに典医寺に向かう隊長に、私とトルベが笑いあう
ふふふ・・・ 中庭で始まった2人に、邪魔が入らぬよう薬員達やトギさんに、そっとしといてくれと話したのだが・・・・・
気づけば 典医寺の主が、いない・・・・・・
「チャン侍医は?」
「ずっと研究室にこもられています」
「研究・・・・何を?」
「我々には わかりませんが、より良いものにしようと、日々研究されています」
「おおっ! 隊長が医仙を抱きしめました!」
トルベの嬉しそうな声に、ここからは私達が邪魔になると引っ張ってきたが・・・
・・・・・・・姿が見えないと、落ち着かないな
私はチャン侍医の研究室なるものに、行った
私は典医寺で韓方薬の配合や、効き目などを研究したくて わざわざ部屋を作ってあるのです
典医寺の奥まったところに、静かに研究に没頭できる部屋で・・・・・
私は、ぼーーーっとしています
いえ、しゃれではないのです・・・・・
何も、手につかないのです・・・・・
日誌に書く事や、かねてから研究していた事など、様々にやる事はあるのですが・・・・・
・・・・・・何も、する気が起きないのです
ただ・・・椅子に座り、書かれていない日誌を広げ、筆を持ったり、置いたり・・・・・
その繰り返しをしているだけなのです
・・・・・・・・・・参りました
想う相手の迷惑にしかならない想いなど、早く断ち切らなければ・・・・・
そう思えば、思うほど・・・・・浮かぶは その方の顔ばかり・・・・・
「・・・・・・はあ・・・」
自分で 自分の心が・・・・・思うようにならないなど、初めてです
いえ、分かっています
もともと天界から来られた方・・・・・
一介の侍医などが、懸想して良い相手ではありませなんだ
ですが・・・酔われた あの方が、自ら口付けをなさって下さった
私の中に『もしや、私を気に入って下さっているのでは』などと、たわけた考えがあったのでしょう
恥ずかしい限りです
何を思い上がっていたのか・・・・・
そうですね、一旦私はここを離れた方が良いのかもしれません
王様にお許しをいただき、次の侍医を決めていただき・・・・・ここを任せられる人物ならば、私は・・・・・
私は・・・・・ここを、離れましょうか・・・
私は紙を取り、王様への侍医返上の手紙を書いていました
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何か熱心に書いているチャン侍医の背中を見つけた私は、静かに、気配を消して側へと寄った
背後から見てみれば・・・・・侍医の職を返上したいと・・・・・書いて・・・・・・
一字一字、言葉を選びながら書いていた私の手から、筆が抜き取られて・・・・・
私の筆を取られたのは、あなた・・・でしたか
「リオン様・・・」
「・・・・・・ここを、辞めるのか?」
「・・・・・・いけません、他人の手紙を読むだなど・・・」
「聞いている、答えよ!!!」
「・・・・・・はい」
あ・・・・ああ、やはりか・・・酔った相手に無理矢理、口付けされていたチャン侍医は・・・
きっと、私が覚えていない間は、忘れてくれていたのだ
物静かな人だが、中は漢らしく優しい人だから・・・・・
それが・・・露呈してしまった今・・・・・きっと
きっと・・・・・
「それは、私が関係しているか?」
「・・・・・・・・いえ」
「その間は何だ? ・・・いや、それより私は、チャン侍医に謝らなければならない事が2つある」
「謝ること? リオン様が・・・ですか?」
「ああ・・・1つは、チャン侍医の気持ちを知っていながら・・・・・
姉上の事をヨン隊長に任せてしまった・・・」
「・・・・・・え? それが・・・何か?」
何を仰っているのでしょうか?
隊長が医仙殿を想っているなど、この典医寺中に知れ渡っているのに・・・・・
私も医仙殿をお慰めするのは、隊長しかおらぬと、思っておりますが・・・・・何を『謝る』のでしょうか?
「チャン侍医の気持ちは知っていた、だが私は姉上の気持ちを優先してしまったのだ!
・・・・・すまない、本当に すまない」
「・・・・私の気持ちを、知っている・・・?」
それは、どういう意味でしょうか?
「・・・・・・それに、酔った私が無理矢理・・・・・あなたに口付けした・・・
惚れた女がいるのに、嫌だっただろう?」
「惚れた・・・女ですか?」
「ああ・・・・・姉上を好きなのだろう?」
・・・・・・・・は?
「・・・・・前に見たのだ。 キ・チョルに初めて会った謁見の間で、姉上が話した後・・・
裏で転びそうになったとき、侍医が抱きとめ何かを言っていた・・・
何を言っているのかは聞かなかったが、侍医は、笑っていた・・・」
そう・・・ 姉上を抱きしめ、嬉しそうに笑っていたのだ・・・・・
「お待ち下さい、リオン様・・・私は・・・」
私が想うのは、あなたしかいないのです・・・
咄嗟に口から出そうになった言葉を、飲み込みました
言えるわけがないのですから・・・・・
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乙女侍医、炸裂です(笑)