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戻ってきたイ・ソンゲの診察をする姉上に付き添うが、無理して笑ってるでしょう?
優しい あなたが、私に心配かけないよう無理してるのは、お見通しですよ・・・
私は典医寺を離れ、康安殿に向かう
私の警護についてるトルベさんに、隊長の事を聞けば康安殿だというから向かったのだが・・・
何でも姉上を典医寺に送り届けた後、その足で康安殿の王様の所へと向かったそうだ
「隊長にご用ですか?」
「ああ・・・ 姉上のことで、ちょっと」
「医仙殿のことで、ですか・・・」
だが康安殿に、隊長はいなかった・・・・・
「どこに行ったんですかね・・・」
私は、そっと名を呼んでみた・・・・声は出さず風だけを揺らして・・・・・
『ソンファ・・・姿を消して出ておいで』
すると透明なモヤが目の前に浮かんできて、それが龍のソンファだと分かった
『器用だな・・・』
『隊長を探すの? 』
『頼めるか?』
『分かるよ! 隊長のマークは・・・・こっち!!!』
透明なモヤの気配を追って歩き出せば、石造りの回廊の一角に・・・・・・隊長がいた
鎧を脱ぎ、紺の衣になり座り込んでいる様子に、そばに寄れば驚く隊長
「どうした、何があった?」
「いえ、何でも・・・」
隊長の右肩から気配がする・・・・・キ・チョルの気配が・・・・
「診せろ」
私は隊長の胸元・・・襟を両手で掴んで広げた
「これは・・・ 酷い・・・」
「大丈夫です」
慌てて隠そうとするチェ・ヨンの手首を掴んだ
「・・・・・医者に向かって大丈夫だと? この怪我を見ても、治療させない気か?」
「ですが、あなた様の手を煩わせるのは・・・」
「医者が患者を治療しないで、何をするというんだ!」
「しかし!」
なおも言いつのる隊長に、私はキレた!
カッ!と大きく見開いた眼で、隊長の胸倉を掴んだ私は、彼の顔の前で・・・・・
「患者が、うだうだ文句なんぞ言うな!!!
・・・いいから黙って治療されやがれ!!!」
と、怒鳴ってしまった
「・・・はい」
だが、素直に診せる気になってくれたのは、幸いだった
着物の併せを広げてみれば、青く鬱血している肩
そっと触れば・・・・・冷たい・・・・
確かキ・チョルは氷攻使い・・・・・年増のオカマにやられたか
私は手に【 力 】を集め、温風を患部にあてた
そのまま時間をかけて温風を当て続ければ、青く血が滞っている患部に赤味が戻ってきた
「なあ隊長・・・ 私や姉上は、目の前で人が殺される事など、ほとんど出会わない世界にいたんだ」
「天界のこと、ですね」
「ああ・・・ それなのに姉上は今日、目の前で人が斬り殺されるのを見た
・・・さっきは私の前で泣いたのだが・・・」
「泣かれたのですね・・・」
「ああ・・・ だが、私が倒れてしまっただろう?」
「ええ、医仙は心配されておりました」
「すぐに泣きやんで・・・強がっているんだ」
手をあて、温風でゆっくりと温めながら・・・私は話すんだ、この男に
「・・・・・甘えてくれればいいのに、強がるんだ」
「・・・・・・・」
「なあ隊長・・・ 姉上を甘えさせてやってはくれないか?」
「・・・・・・・私が、ですか?」
それは、どういう意味だろう・・・・・・
「姉上は天真爛漫で裏表がなく、優しい人なんだ」
「・・・・・・存じております」
ええ、知っています・・・ 毒に侵され熱を出していた時も、最初に気がついたのは、あの方だった
キ・チョルの屋敷に、あの方を救いに行ったときも・・・・
自分のことより俺の心配をしていた・・・・・
「私では、もう・・・姉上を包んではあげられないのかもしれないな・・・・・」
「それは・・・?」
「泣かせてやってくれ、思う存分・・・」
「ですが・・・私は・・・」
私は、あの方を天界へ帰すと約束したのです
その様に あの方に近づけば・・・俺は、俺は・・・・・・離せなくなってしまう
「・・・・・もし、できないと言うのなら
・・・・・他の男に頼むが、それでもいいか?」
「他の男に・・・・・」
「ああ・・・ 姉上を抱きしめ、その胸で泣かせてほしいと・・・・・・
・・・・・姉上を、護ってほしいとな」
他の男に・・・・あの方を・・・・・・
医仙をお護りするのは、俺だ!
そう名にかけて誓ったのは、俺だ!
「俺が、お護りすると誓った」
「じゃあ、頼めるのだな・・・・・チェ・ヨン」
「・・・・・分かった」
「・・・・・大事な姉上なのだ。生半可な男に任せられぬ」
その言葉に俺は、『はっ』とした
この方は、天界から医仙を心配するあまり、天門をくぐられた方だった
あの様な怪しげな物に、きっとこの方は躊躇うこともせずに、進んだのだろう
それも医仙を案ずるあまり・・・・・それだけ大切に、大事に思っているのだ
肝の据わってない者なら、近づくこともできないのに・・・・・
俺は、改めて誓う・・・・・医仙をお護りすると
「よし、これで温まったな。 だが今はまだ無理に動かすなよ? あとで典医寺に来い、貼り薬を作っておく」
「・・・・・はい」
着物を正し、鎧をつけた隊長が 私に一礼して去って行った
「・・・・・頼むぞ、チェ・ヨン」
見送る私にトルベさんが・・・・
「後、つけますか?」
「くすくす・・・・・それは向こうが嫌がるだろう?」
「え〜〜・・・ちょっとだけ! ね?ね?」
「じゃあ・・・・・散歩に行くか」
「行きましょう!」
私達はそっと、隊長の後をつけたのだった
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あの方は、典医寺におられた
いつもの様に、中庭からその様子を伺えば・・・・・・いつもと違い、笑顔がなかった
屈託のない笑顔や、おどけたような笑顔、はち切れんばかりの明るい笑顔・・・・・・
あの方に俺は、笑顔にも色々あると知ったのだ
そして弱っている患者には、あの方の笑顔も薬になるのだと・・・・・
俺は、身をもって知っている・・・・・
「医仙・・・」
「あ、あら、チェ・ヨンさん! どうしたの?
まさかどこか怪我でもしたの?」
・・・・・・・ほら、この方はすぐに 俺の心配をなさるのだ
「怪我はしておりません・・・ただ、少し話がしたいと思いまして」
「話? どうぞ、今は患者もいないし大丈夫よ!」
「・・・・・・・あなたは 大丈夫ですか?」
「え?」
・・・・・・・驚いた
だって、会えばいつもお説教なチェ・ヨンさんが、私を気遣ってるなんて・・・・・
「・・・・・人が斬られるところを、見せられたとか・・・・・」
ああ、それを聞いたのね・・・だから
・・・・・・・え?
私、今なんて考えた?
・・・・・・・だから、慰めにきてくれたの?なんて
私、どうかしてるわ!
いつもいつも、お説教のこの男が・・・・私を慰めにですって?
そんなの・・・ あるわけないじゃない・・・
「・・・・・平気、ですか?」
「!! ・・・・平気、じゃないけど・・・・・」
真っ直ぐに私を見つめるチェ・ヨンの目は、まるで黒曜石みたいに真っ黒で・・・・・
でも心配そうに見ているわ・・・
・・・・・・私ね、リオンには強がっちゃったけど、そんなに強くないのよ?
今でも頭の中に鮮明に浮かんでくる光景に、怖くて、怖くて・・・・・仕方ないのよ
だから思い出さないように・・・しようとしてるんだけど
・・・・・・・うまく いかないの・・・・・・
思い出させてしまったのだろう、その時のことを・・・
どんどん顔色が悪くなる医仙に、俺は・・・俺は・・・・・・
気がついたら、医仙を抱きしめていた
華奢な身体を、細かく震わせ・・・堪えている医仙が・・・・・・愛しい
ああ、ああ、もう・・・・・自分で自分の心を・・・・・
・・・・・・誤魔化せぬ
・・・・・・慕っているのだ、医仙!!!
時が戻るのならば、あなたを決して連れて行かせはしなかったのに・・・・・・
この様に震えるほど、恐ろしい目になど・・・あわせなかったのに・・・・・
「もう大丈夫だ・・・」
「・・・・・・・」
「俺が、いる。 俺が、あなたを護る」
「ふぇ・・・・こわかった・・の・・・・・」
「泣いていいのです、医仙・・・・・泣いて下さい」
「えっえっえっ・・・・・・・」
力強い腕が、私を包んでくれる・・・・
その腕の中で、私は・・・・・泣いたの
リオンの時には我慢した涙を、この腕の中では我慢できなかったから・・・・・・
温かな腕の中で、私は・・・・・・泣けたの
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突如始まったヨンさんとウンスさんのラブライン♡ですが・・・・・
いかがでございましょうか!
感想お待ちしています ( ^ω^ )v