派手に上がった黒雲は、遠くからでも見えていたでしょう。
雰囲気は「ドラゴンボール」の神龍の登場シーンで!
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「府院君様(プォングン)! 府院君様っ!」
「どうした、良師(ヤンサ)何があった」
慌てたヤンサが私のいる部屋へとやって来たが・・・・・どうした、騒々しい。
「皇宮に龍が現れました!」
「・・・・・・龍が?」
龍とは神聖なものであり、それが皇宮に現れたのなら・・・・・・あの新しい王への善き啓示となる。
まあ、悪しき啓示とも、とらえられるがな。
部屋の外で見てみれば、おおっ!!! まさしく龍だ・・・・・・
「馬を持て! 皇宮に行くぞ!」
「ははっ!!!」
私は舎弟とヤンサを共に、皇宮へと道を急いだ。
龍を目指したのだが・・・・・これは、典医寺の上に出ておるのか?
馬を回して典医寺へと向かえば・・・・・なんだこの風は!!!
馬が怯えて近寄れぬ!
馬を降りた私が歩いて行けば・・・・・くうう〜〜〜・・・ええい、風が強すぎる!
「府院君様、危のうございます!戻りましょう!」
「ええい、私は行くぞ!!!」
轟々と逆巻く風が、上空の龍から迸っておるようだ!
うねうねと動くさまは、見事としか言えぬわ!
強風に阻まれていたが、やっと典医寺に着いたぞ・・・・・・・
ん? 今出て来たのは、リオンか?
・・・・・・・長い黒髪を風に巻かれながら、典医寺から出てきた彼奴は、ふむ、治ったようだな。
ん? 彼奴は何をしている?
手を差し出し、まるでこの強風を・・・・・撫でているような動きをしている。
・・・・・・・風が、止んだ・・・・・・・
そのまま彼奴は、片手を空へと向けたのだ・・・
・・・・・・・なんと、なんとなんと、なんと!!!
上空の龍が、あの龍が、彼奴の掌に・・・吸い込まれていく???
しかも龍が、まるで喜びに飛び跳ねるように彼奴に向かって降りてきたではないか・・・・
「彼奴は、何者なのだ? 天界から来た医仙? 天人? ・・・・・・龍を手中に収めているなど、私は聞いていない」
「・・・・・男とも女とも言えず、その両方でもある・・・・・相反する性分を持つ、何とも可笑しな輩・・・・・」
「何とも可笑しな輩・・・・・・・だが、代わりはおらぬ。この世で唯一人の・・・・・」
「府院君様、あんな可笑しな者を構いますな!」
「・・・・・・・あの者が、欲しい」
急ぎ屋敷に戻って来た私は、あのリオンという者の心も、欲しくなった。
「何ですと!!! い、今、何とおっしゃいました?」
「あの者の心が欲しいと、言うたのだ! 何か・・・策はないか?」
「あの紅い髪の医仙は、我が物となった。私の用意した服を着て、皇宮へと行ったのだからな」
「府院君様・・・・・・」
「黒髪の医仙も、我が物に・・・・・・」
「おやめ下さい、府院君様〜〜〜」
キ・チョルの野心にヤンサが情けない叫びを上げるも、すでにキ・チョルの頭の中は、リオンを手に入れるための策を考えており、聞こえてはいなかった。。。
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轟々と逆巻く風に、リオン様の美しい髪が靡いている。
はためく服も、凛々しい表情も、ああ・・・・・目が離せぬほどでございます。
スッと片手を差し出されたリオン様・・・まるで飼っている犬を撫でているような手の動き。
そのまま その手を上へと、向けられた。
「!?」
その掌に、上空で蠢いていた龍が、吸い込まれて行くとは、私は一体、何を目にしているのでしょう・・・・・・
頭から吸い込まれて行く龍は、尾の先まで全てリオン様の掌へと消えて行きました。
「わぁ〜〜お! やっぱりリオンってX–man(エックスマン)よね!!!」
「・・・・・・この力は、内攻とは違うのではないか?」
医仙殿と隊長が話しているが、私も そう思う。
リオン様、あなたは・・・・・・そこで私達の方を振り向いたリオン様の顔は・・・・・・
掌を握り締められ、此方を向かれた あなたは・・・・・・・
酷く悲しみを湛えた眼を、されています。
・・・・・・・・悲しまれて、おられるのですね
「迷惑をかけた、すまない・・・典医寺が、メチャメチャになってしまったな」
「大丈夫です、皆で片付けをいたします」
「・・・・・・すまない」
「・・・・・・どうされましたか? 何を謝られるのですか?」
「・・・・・・片付けよう」
「リオン様?」
いつも真っ直ぐにこちらを見られる方が、顔を背けている?
一人で中へ入ったリオン様は、黙々と片付けをされていく。
「ねえ、リオン? どうしたの?」
「・・・・・・」
「意識が戻ったばかりなのよ? リオンは寝てなきゃ! 私が片付けるから、ね!」
「・・・・・・」
医仙殿が声をかけても返事をなさらないとは、一体どうされたのだ?
「一体どうしちゃったのかしら? 私にも返事しないなんて!!!」
「自分の力で皆を危険に巻き込んでしまった。・・・・その事が腹立たしいのでしょう」
「自分を 責めておられるのだ」
ヨン隊長の声に、気付かされた。
片付けをする薬員やトギに声をかけ、一人一人に謝っておられるのは、自分を責めておられるからですね?
一通り片付けが終わったところで、リオン様は私の診察をされたのだが・・・・・・・
ああ・・・ その様に哀しまないで下さい
「チャン侍医、脱いでくれ。 背中の傷を見たい」
「はい」
私は上着を脱ぎ、紐を解き、次々と脱いでいった。
その間あなたは・・・・・ずっと目を反らせたままですね
背中を見せ椅子に座ると、あなたの指が、そっと・・・・・背の傷に触れていく。
「・・・・・・・・すまない」
「何を謝られるのですか? 私の傷は、あの光に包まれて癒されておりましょう?痛みが引いておりますゆえ」
「・・・深くはなくなった、その程度だ・・・・すまぬ」
「十分です」
消毒して布を当て、包帯を巻いていただく。
その間もリオン様は私を見ずに、黙々と作業をされて・・・・・・
・・・・・何を、お考えですか?
そのような寂しく、哀しげな眼で、何を、お考えなのですか?
ああ、そうだ・・・・・これを返さなければ
私は首から下げていたリオン様の『御守り』を、渡した。
「・・・・・・ありがとう」
「・・・・・何をお考えですか? いつものリオン様ではございませんね」
背中や腕の傷のあとは、真正面に座られたリオン様が、私の顔の傷を診はじめた。
私の問いに答えられず、目も合わせられず・・・
私の頬に触れている指先が、傷からそれた。
「・・・・・・意外に髭がチクチクするな」
「お嫌ですか?」
「・・・・・・意識がないのに、この感触は覚えている」
「申し訳ございません、あなたに水を差し上げるため・・・・・・口移しを・・・・・」
「・・・・・・・いや、世話をかけたな」
治療を終えたリオン様は立ち上がり、そのまま他へと行ってしまわれた。
・・・・・・・何を、お考えなのですか?
・・・・・・・私には、話せませんか?
お願いです、どうか、どうか、此処から出ていかれるなどとは、考えないで下さい・・・・・
そんな気がして、仕方がないのです。
そんな不安が、私を掴んで離しません。
どうか・・・ どうか・・・・・・
・・・・・・しかし、私の不安は的中した。
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「これはこれは、リオン様・・・意識がお戻りになられ幸いですな」
典医寺にキ・チョルが、来た。
「実は、医仙殿を返していただこうと思いまして、お迎えに参りました」
私は素早くチャン侍医に目配せし、姉上を奥へと隠した。
「話を伺おうか・・・」
ゆったりと椅子に座り、脚を組む。
片手を向かいの椅子に向け、キ・チョルに座るよう促す。
「私は先日、面白いものを見ました。 ・・・それは天に蠢く黒い龍です」
「・・・・・・それが?」
「屋敷から急いで龍の側へと参った私は、ここ典医寺にて龍をその身に宿していく様を、見ました」
「・・・・・・・それで?」
「単刀直入に申しましょう・・・ 我が屋敷に来ていただきます」
「・・・・・・・理由は?」
「医仙殿の代わり・・・・・では、理由にはなりませんか?」
「此方に医仙殿をお貸しした日数を数に入れなければ、まだ期日までありますゆえ・・・」
「ふ・・・チェンジか」
「ちぇ・・・んじ?? それは何という天界語ですか?」
「・・・・・姉上は、解放しろ。それなら行ってもいい」
「・・・・・・分かりました。ディールと言うのでしょう? 取引ですな」
「なりません!!! リオン様!!!」
どうなさったのです!!! どうしてキ・チョルの屋敷になど!!!
まるで、まるで・・・・・御自身が望まれているような・・・・・・・
「リオン、ダメよ! 私の身代わりに あなたが行くなんて!」
「姉上・・・ 私の事、驚いたでしょう?」
奥から飛び出して来た医仙殿を、リオン様が優しく見ておられる。
「そりゃ驚いたけど・・・・・でも、リオンがXmanなんて、向こうじゃまるで気がつかなかったわ〜〜・・・よく隠せてたわね!」
「あんなすごい力があるなんて・・・・・ちょっと怖いし、龍? 不気味よね〜〜っていうか気味が悪いわ〜〜!」
医仙殿、その御言葉は・・・・・あんまりではないでしょうか?
「・・・・・・・他の皆も、驚いただろう?」
正直、私も驚いたからな・・・・・・
私の身の内に、あんな物が棲んでるとは・・・
自分自身の方が、戸惑っているんだ。
「だから、此処を離れると? 姉上様からも離れようとお考えなのでしょう!」
リオン様に詰め寄る私の前に、キ・チョルが割って入り・・・・・・リオン様を促し、連れていく。
連れて行かれたのだ・・・・・・
「ねえ、リオン! 戻ってくるんでしょう? すぐに帰って来てね〜〜!」
手を振る医仙殿と・・・・・・・私は、声も出ずにただ見送ってしまった。
前ならば、あなたは戻ってきて下さると確信しておりました。
が、今は・・・・・今は・・・・・その確信が、持てません。
無事を案じていた時より、不安です。
不安で、不安で、胸が張り裂けそうです。
リオン様・・・ リオン様・・・・・・・
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えっと、リオンさん病み上がりなのですが・・・行動力ありすぎます。
自分の恐ろしい力に、リオンさん自身が戸惑って・・・落ち込んでます。