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「民を欺き、惑わす戯れ言を吹き込み、王様の御心を乱したのは、誰だぁぁーーー!!!」

「女人姿の妖魔よ、答えるのだ!!!」

臣下達が一堂に会す謁見の殿で、声を高らかに咎めているのは、徳成府院君 キ・チョルだった。。。



王の横に設けられた座で、椅子に座りながらウンスは身を竦めていた。

(どうしてこんな事に〜〜???)

今朝、チェ尚宮がやってきて支度をしろと言ってきたけど、何でこんな責められなきゃいけないのよぉぉ〜〜〜!!!

隣のリオンは・・・・・・この子はいつでも、誰の前でも、堂々としているから大丈夫よね。

リオンは座らずに私の椅子の背に手をかけて、面白そうにニヤニヤと見物してるけど、それもどうなのよ。

「大丈夫、先輩!  私達は天界からきたんだから。   ・・・・・まあ、少なくともこの時代の人間じゃないし、あんなチョビ髭のオッさんに文句言われる筋合いはないですよ!」

「ぷっ・・・」
私達の会話を聞いてた隣のチェ尚宮が、小さく吹き出して、すぐに真顔で誤魔化してた。

「でもリオン〜〜〜」
「大丈夫!」

サラサラとリオンの黒髪が、肩から滑り降りる。

椅子に座る私と話そうとして、少しかがんでるせいね。

そう、リオンがいる。

私1人なら耐えられないかもしれないけど、私の頼りになる後輩のリオンがいる。

そうよ、そう・・・落ち着こう。

私はスゥーーっと息を吸い、吐いて、椅子の上でピシリと背筋を伸ばした。

私は、ユ・ウンス。

無理やり連れてこられただけの私の、何を責められるのさ!

王妃様の首を治療して、帰りたくても王命で帰れなくてここにいるのに、何で見も知らないオッさんに、あんな言われ方しなきゃなんないの!!!


ああ〜〜〜・・・・・なんかムカついてきちゃった!

いるのよねぇ〜〜こういう言いがかりつけるクレーマー!

自分のちっさい考えの中で、違うとかなんとか言ってくる奴!!!


私はだんだんチョビ髭オッさんを睨みつけていた。




くすくす・・・・・そうそう、先輩は威勢よく元気でいてくださいね。

もしあいつが何かしてきても、護るから。

さて、先輩はいいとして・・・・・・ここの王と王妃は、どうだろうか?

自分達の都合で連れてきて、その為に襲われたり、咎められたりしている者を、守れるのか?

私は冷ややかに視線をキ・チョルや王、王妃へと放った。



・・・・・・・・私の視線の意味を、汲み取れるか?

私は過去の世界の王になど、何の感慨もない。

敬うだとか、忠誠を誓うだとかを、王という身分だから当然受け取れるなどと、生温いことを考えてないか?


私は、この世界には関係のない者だ。

だから、今は私達を保護してくれるから王のそばにいるが、もし・・・・・もしも。


他に有力な者が保護をしてくれるなら、そっちにつくかもな。


まあ、キ・チョルなんて人を使い捨てにする輩にはつきはしないが・・・・・・


私は、先輩が無事に過ごせて、望むようにできればそれでいい。


最大の優先基準は、ユ・ウンスを傷つけないこと。。。


それが、できるか?  王よ。。。


「この様な妖魔が王の御心を惑わすなど、あってはならぬことです!」

力説するキ・チョルが先輩を指差しながら、ズカズカと近寄ってくる。

私は、ゆらりと背後から先輩の前に周り、立った。

「この様な・・・・・・お前も、妖魔か?」
「私は医師だ。  それ以上でもそれ以下でもない」

「何だと、生意気な・・・?   それは?」
「?」

キ・チョルは私がつい癖でポケットに入れていた聴診器を見ていた。

ポケットから出し首から下げると、奴の目は見開きますます真剣に見入ってくる。

「それは、何という物だ?」
「聴診器。  これで身体の中の音を聴いて、病を診断する」

「ちょう・・しんき?  他には?   他にも道具があるのか?」
「ふっ・・・食いつくねぇ〜・・・・でも、私達を妖魔だなんだと貶める様な奴に、これ以上は教えてやらん!」

聴診器をポケットに入れ隠すと、目の前のキ・チョルが残念そうな顔をしていた。


そのとき王妃が、自分を救ったのは医仙だと、傷口を皆に見せて証明してきた。

「刺客の剣にて首を斬られた。   それをつないだのは医仙殿」

「この国に、そこまで優れた医員が他に、おると申すのか?」

これには臣下たちもざわめいた。


だが、キ・チョルも引き下がらないね〜〜。

チェ・ヨンに騙されていると言いだし、連れて来いと怒鳴ってやがる。

「それはできません!   彼は私の患者です。担当医の私の許可なく、患者を連れ出すことは許しません」

「なんと、愚かもの・・・言わせておけば生意気な!」
「なんですって! 失礼なのはアンタの方よ! さっきっからガタガタうるっさい!」


「〜〜もう我慢できない!」

それから先輩は立て板に水とばかりに食ってかかった。

「じゃあ、私は患者がいますので、これで失礼します」

先輩が出て行ったあと、きっと緊張がとけてフラフラだろうと後を追いかけた私の前に、チャン侍医がいた。


フラフラと覚束ない足取りでいる先輩が、階段を踏み外しよろめいたとき、チャン侍医が両腕で抱きとめていた。

「ご立派でした。・・・こちらが肝を冷やすほど勇ましく・・・」

微笑んでそう言うチャン侍医は、しっかりと先輩を抱きしめていた・・・・・・


そうか、チャン侍医は先輩のことを・・・・・・


私は2人に知られないよう、そっとその場を離れ典医寺に戻った。


典医寺に戻った私は隊長を診ていた。

「あ、あの、医仙様・・・・隊長は、どうなんでしょうか?」
「・・・何ともいえない状態だ。  テマン君、もしかして隊長は生きる気力がなくなってる?」

「思い過ごしならいいんだけど・・・」


私は戻ってきた先輩とチャン侍医に声をかけた。


「カンファレンスしましょう」
「かん?  それは何でしょうか?」

「隊長の手術や処置に間違いがなかったか、見落としがなかったか、話し合ってみようと思って」

それから1時間ほど全てを見返してみたけど、今も意識が戻らない原因は分からなかった。



「・・・・・・」
「先輩」

黙り込んでしまった先輩は、心が弱ってる証拠なんだ。


早く、戻ってこい・・・・・チェ・ヨン。。。





だが、事態は急変した。

先輩と生薬の配合を考えながら作っている所に、トギさんが来た。

「どうした?」

グイグイと腕を引っ張られ連れていかれた私と、ついてくる先輩。


「い、い、医仙様!  隊長の身体が冷たくて、何とかして下さい!」

私は聴診器を隊長の胸に当てる・・・・・・・が、ほとんど鼓動がない!!!


「くそっ!  逝くな!  逝くんじゃない!」

胸に両手の拳を当て、心臓マッサージをしだした私に先輩が隊長の顔に耳を寄せ呼吸音を聞こうとして・・・・・

「呼吸を、してない・・・・・いやぁ〜〜」

叫んだ先輩がチェ・ヨンの唇に息を吹き込み始めた。

私の心臓マッサージに、タイミングを合わせて息を吹き入れる。

「いやよ、逝かないで・・・   私を守ってくれるって言ったじゃない!」

「信じてついて来たのに・・・・・ダメよ、逝っちゃダメ!」
「逝くな!  逝くんじゃない!」

先輩が泣きながら唇に息を吹き込み続け、私は胸を押し続けた。


「もうお止め下さい・・・・心臓が止まっている」

チャン侍医の手が私の腕を止めようとするのを、振りほどいて続ける。

「おい、チェ・ヨン!  お前は先輩を守ると約束したんだろ?  先輩を天界に帰すと約束したんだろう?   戻ってこい!  戻って約束を果たせ!!!」

「逝かないでよ〜〜・・・・・」

ぽたぽたとチェ・ヨンの頬に先輩の涙が、かかった。


・・・・・・・・何があったのか分からないが、チェ・ヨンはそれで息を吹き返したんだ。。。




ホッとしたその夜だが、同じ頃、私達をとんでもない事態が襲いかかっているとは、思いもしなかった。。。



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このお話でドラマでは4話の後半から、5話の前半になります。


えっと、好き勝手に妄想を膨らませて書いているので、こんな進み具合です。

お付き合いいただけたら、嬉しいです。