緊急事態宣言が出て2日目

故郷をあとにした。


なるべく人を避けて

新幹線の1号車まで行き

無言で乗り込む。

持ってきた消毒ジェルを

ことあるごと手にすり込む。

マスクはもちろん二重。


のぞみを降りてからの

電車は必ず一つ空けて

すわる。どうにか最寄り

駅に着いた。


バスでかつて

近所に住んでた人に

会った。


聞けば2月にご主人が

亡くなられたとの

こと。今は次女と2人で

住んでると。夫亡き今


『きょうこがいてくれて

   良かった』と。


  思い出した!


そこのお宅は私の姉達と

同じ名前で上がじゅんこ、

下がきょうこと言う名だ。


うちの家も父亡き今は

嫁いでいない姉が母と

暮らして面倒を見ている。

つい、数時間前までいた

実家で母から何度も

聞いたせりふ

『きょうこがいてくれて

    良かった』

をここで聞くとは

思いもしなかった。


故郷を離れた者にとって

ひとりになった母と

一緒に暮らしてくれる

ことは感謝に耐えないのだ。