今は朝の5時過ぎ。
勝手口の戸を開けると、雪が降ってた。
コーヒーを煎れて、夫に供える。
線香をあげる。
ふと思って、部屋の電気を消してみた。
線香の灯りが、ポツンと見えた。
父が亡くなったのは、私が14歳になる直前の秋。
癌を患い入退院を繰り返して、亡くなった。
父はひとりで寝ていた。
子供部屋は2階だったので、夜中にトイレに下りる。
父の部屋の前を通る。
父は布団に入って、よく本を読んでいた。
枕元にスタンドを置いて、その灯りで。
父の部屋は、階段を下りてすぐの場所にあった。
部屋の戸はすりガラスで、父が起きていると、すぐに分かった。
夜のトイレは怖くて、父の明かりが目に入ると、ホッとした。
そして、父が亡くなった。
いつものように、夜中にトイレに起きた。
父の部屋の明かりが付いてる。
「あ、お父さんが起きてる」と、ホッとして、すぐに気がついた。
お父さんは死んだ。
お父さんはもう、布団に入って、読書をしてない。
あの明かりは、仏壇の灯り。
お父さんは、もういない。