『しっぽのつり』
日本むかしばなし
いもと ようこ /文•絵 金の星社
きつねに魚を横どりされたかわうそ。きつねに魚の捕り方を聞かれたので、寒い晩に池にしっぽをつけておけばいいと嘘を教えます。信じたきつねがしっぽを池につけ待っていると、池が凍ってしっぽが抜けなくなってしまいました。
(絵本ナビ 作品紹介より)
昔ばなしなので
他にもいろいろあります。
私が持っているのは
この絵本です。
私はこの
ずる賢そうな、きつねの目が
たまらなく好き。
そして、きまって
こういうきつねは
最後には失敗して、痛い目を見るのです。
お話の中では
きつねはそういう役割で、
憎めないワルモノです。
「やあ やあ かわうそどん、
いい ところで あったもんだ。」
と、きつねは じょうきげん。
「じつは おらあ、
これから おまえを たずねて いく
とこだったんだ。
なに とくべつ ようじでも ないが、
ふゆの よるは ながいから、
おたがいに よんだり よぱれたり•••••、
つまり よばれあいっこ すべえと
おもってさ。」
「そりゃあ いい かんがえだ、
きつねどん。
まず こんばん、
おまえが おらの うちに
よぱれて こいよ。」
(文中より)
お話の最初に近いこの会話と
そのページのきつねの顔を見るだけで
きつねが何か企んでいるのが
わかります。
絵本を見ている子どもたちも
思うでしょう。
「なんだか、あやしいぞ」
おひとよしの かわうそは、
さっそく かわに でかけて いった。
そうして、ふゆだと いうのに、
つめたい みずに とぷとぷ もぐって、
さけだの ますだの つかまえて、
ずるずる うちへ ひっぱって かえった。
「これで きつねどんに ごちそうが
できるぞ。」
(文中より)
なんて気のいい、おひとよしのかわうそ。
大量の魚をかついで
嬉しそうに帰る、かわうその表情を見て
子どもたちはもう
断然かわうその味方になります。
「絵が語る」って、こういうことです。
絵を見て、子どもは心の中で想像して
ちゃんと感じとっています。
最後に、バチが当たるみたいに
きつねが痛い目にあうことも
「なんだか残酷?」とか
「やられたら やりかえす」でいいの?
•••と大人の余計な考えはいりません。
これは
「むかしむかし、あるところに」の
架空のお話の中のこと。
お話の中では、ずるがしこいきつねは
痛い目を見ることになっているのです。
それが昔ばなしの良さです。
子どもさんが
「ずるいこと、するからだよね~」
と言えば
「そうね〜」と答えればいいし
「きつねさん、ちょっとかわいそう」
と言えば
「そうね〜」と答えればいい。
感じ方に「いい」も「わるい」も
「正しい」も「まちがい」も
ありません。
一番寒い時期も、あと少しです。
春はすぐそこまできています。
被災地の皆様の安全と
一日も早い復興を
お祈り申し上げます