自分が開業したのは20年以上前。その頃には、耐性菌がかなり問題になっていました。最初の頃はメイアクトも出してはいたが、徐々にペニシリン比率をあげていきました。今では90%ペニシリンかな。
耐性菌にどう対応していくか。大学の先輩の研究が影響している。小児の耐性菌を研究していた先輩で、書かれた論文をかなり参考にしていた。けっこう先駆的な論文だったと思う。その先生の元で研修医もしていたが、抗生剤使用に関して直接指導を受けることはなかった。しかし、小児の感染症について詳しい先生だったので、少なからず影響を受けている。
ペニシリン耐性菌。これが一番の耳鼻科医の問題。この名前が悪くてかなり誤解されているところがある。ペニシリン耐性菌なんだから、ペニシリンを使っても効かないだろと思われてしまう。実際は違うのだが、知りたい人は勉強してください。
ペニシリン増量。これがペニシリン耐性菌に対しての最大の解決法。開業してから、高用量のペニシリンを使いまくった。パセトシンで言うならば、添付文書は、20~40mg/kgと書かれている。それを自分は小さい子供には、60mg/kgで処方しはじめた。開業初期の頃である。このような処方をすると何が起こるか。薬局から疑義照会の嵐である。
「処方量を間違えています」という疑義照会ばかりだった。間違えているのではなくて、あえてその量でだしています。それでも知らない薬局からは続々と問い合わせがきます。こんな処方は見たことないと言うからです。
とにかく面倒くさかったのですが、それが解決してしまいました。それはペニシリン耐性菌に対する抗生剤、クラバモックスというのが発売されたからです。僕はこのクラバモックスを出すようになり、問い合わせはなくなりました。実はこのクラバモックスという薬、パセトシン換算で90mg/kgと言われています。つまり僕がだしていた60/kgよりも1.5倍も多い量だったのです。これが正規の薬として発売され、添付文書通りに出すようになったので、疑義照会はなくなりました。
クラバモックスのほうがより効果的な薬なのです。しかし、いくつか欠点のある薬です。まず下痢しやすい。それが最大の欠点です。下痢するから出したくないという医師も、飲ませたくないという親もたくさんいます。しかし、耐性菌には効くのです。
近所の医師でうちを批判するかのように、「下痢をしなくて、飲みやすい薬を処方するようにしている」と言いまくっている医師がいました。まったく効かないのですが、たしかに飲みやすいです。それが第3世代のフロモックス、メイアクトです。患者が飲みやすい、効かない薬をだしまくっているわけです。「あそこの医師は患者のことをまったく考えず、まずい薬を頻繁に出す」と批判されました。僕から言えば、「あっちの医師は治らない抗生剤を出しまくっている」なんですけどね。治らないから患者はずっと通い続けて、いつも患者で溢れています。混雑しているからいい医師だと思われているわけです。それから年数がかなりたっていますが、あまり変わってはいませんね。治らない患者は当院に流れてきます。
病気を治すのが医師のはずなんですけど、治すのではなくたくさん通わせるのが、いい開業医だと考えているわけです。意図的ではないにせよ、結果的にはいつまでも通うわけです。
20年前は、メイアクトを30%ぐらいだしていました。子どもの場合には、ほぼ倍量投与でしたけど。今は、ほとんどだしませんね。経験を積みながら、「必要ない」という判断に至ったのです。