「ごめんね、待たせちゃった」


『俺が早すぎたから、大丈夫だよ』


待ち合わせ時間よりほんの少し早く着いたのに 櫻井クンはもう来ていた。



お付き合いの話は保留のままにしてた。


次から次に告白してくる女子がいるんだからほっとけばいつか違う子と付き合うんじゃないかって都合のいいように思ってた。


私達は最上級になって進路について本腰を入れる時期に差し掛かっていた。


受験に集中したいから、その前に1度デートして欲しいという誘いを断れずに今に至る。





先ずは話題の映画を観た。


その後ランチして、


ショッピングして、


お茶して、


オープンしたばかりの体験型ミュージアムに行ってはしゃいだ。


遊びに真剣になってる櫻井クンはいつもと別の顔でヤンチャな男の子って言葉がピッタリで可愛いと思った。




『ちょっと休憩する?』


ベンチに座って手渡されたジュースを飲む。


なんでも卒なくスマートにこなすから
さり気ない気遣いを見落としそうになる。




『あのさ、もしかしたら、、、他に誰か好きな人いるから俺じゃダメなの?』


唐突で固まった



『ごめん、ちょっと知りたかったから。

答えたくなかったらいいよ。

でも、オッケー貰えない理由が他にあるなら知りたいな』




「櫻井クンはさ、優しいし、気配り出来るし、行動力あるし、カッコいいし素敵だと思う。
他に好きな人がいるわけじゃないんだけど、、、、、

ごめんね。


でも今日は楽しかったよ。ありがとう。」


『お利口な回答だね。
褒めて持ち上げて、、、好きな人はいません、、、、か。

でも付き合います、とはならないんだよね』

溜息を吐いて


『先生は? あの教室に行くのは二宮先生に会えるからでしょ?
好きなの?先生のこと』


真剣に聞いてきた。




櫻井クンには私の奥の方に小さいけどムクムクと動き出そうとしてる気持ちがバレてるの?
それだけ私を見てくれてるってことなのかな、、、。


先生のことは、先輩の時みたいにしまったまま、遠くで見てるだけ、、、
違うね、近くでそっと思ってるだけ、、、それだけ、、、それでいい。





「あぁ、それなら先生にはちゃんと好きな人がいるよ。
それに元々あそこは私が先に居た場所だもん。
先生が居るから行ってるんじないよ」


明るく言った。





『そうなの?
じゃあさ、本当に好きな人いないっていうんならお試しでどお?』



「お試し?」



『そ! お試し。
いつでもクーリングオフ出来るお試し。
ちゃんとした返事は受験が終わってからでいいし、気楽に考えて。』



分かった。と返事をしてしまった直後に後悔したけど、




二宮先生には好きな人がいるんだし、このチクチクする痛みとさよならしたいなら
目の前の手を取ればいい。



そんなズルイ考えが頭を過った。





ズルイ私は櫻井クンに甘えてしまった。








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