修学旅行の一件は散々だった。
冷やかされて、
あることないこと言われたり、
女子の1部からは無視されたり、
落ち着くまでの間大変だった。
私は日課の教室で過ごす時間が増えた。
昼休みもここでお弁当を食べるようになった。
隣のクラスの仲良しのじゅんこが一緒に食べようって誘ってくれたけど、巻き込みたくなかったから断った。
じゅんこはいないけど、あれ以来 二宮先生がここでお昼ご飯を食べてる。
先生はコンビニの袋からパンとコーヒーを出して
『いただきます』
とちゃんと言ってから、無言でムシャムシャと食べる。
「先生、毎日コンビニで飽きないの?」
『飽きないよ』
「ふ~ん」
『俺、一途だから』
「なんでちょっとカッコ良く言ってみたんですか、ただのめんどくさがりでしょ!」
笑ってしまった。
『めんどくさがりとか言わないの、
好きになったら一途なの、ホントよ』
先生も言いながら笑ってる。
『櫻井とは大丈夫?
あれからずっと避けてんね』
「だって、、、」
『また探しに来るよ?』
はぁ~、溜息をついた。
『いっそ 付き合っちゃえば噂なんかなくなるのに』
「そういうもんなのかなぁ」
『そういうもんでしょ。』
「断る理由なんかないよね、、、完璧だもん。」
『もしかしてまだ大野のこと思ってる?
欠かさずここに来てるくらいだもんね。
やっぱ、あん時 気持ち伝えてれば良かったじゃない?
そしたら 引きずらなくて済んだかもしれないのに』
そのことには答えずにいた。
私がここに欠かさずに来る理由。
自分でも習慣になってるから当たり前のように来てるけど、
もう先輩はいないんだから確かに来る必要はないんだよね、、、
先生、、、
しいて言えば私も息抜きの場所が欲しいのかもね、、、
「先生は彼女いるの?」
『いないよ。
好きな子はいるけどね。』
「告白は?」
『してない。』
「じゃあ、私と同じじゃない」
人のこと言ってる場合じゃないでしょ!って笑った
『そうだね。
でも、俺はちゃんと言うから、
言える時が来たら、ちゃんと伝えるから』
私の目を真っ直ぐに見ていつもより低い声で話す
真剣なんだ、、、
その人に、、、
「うまく行くといいね」
先生がクククと苦笑いをする
『俺の好きな子はかなり鈍感みたいだからうまく行くように祈っててよ』
「りょーかい! 祈ってるから、うまくいったら報告してね。
もし、、、
もしも当たって砕けたら慰めてあげるから」
『ありがと。
でも、当たって砕けんのは嫌だなぁ、そこはね、、頑張りますよ』
先生に好きな人がいる、当たり前のことか、、、
心の奥のほうでチクっと痛みが走った気がした。