『最近、やたらと櫻井がちょっかい出してくるね?

モテモテじゃん?』





「はっ?!

なに?  モテモテって、、、。

全然モテてないし、言い方古っ!」




『なんだ、全然靡いてないのか、、、。

アイツ見た目もイイし、勉強出来るし、

女の子はああいうの好きなんじゃないの?』




「そうかもね。」






二宮先生とは相変わらず日課の場所で時々一緒になる。



なにをするでもなくそこにいる。



ある日  先生って余程ヒマなんですね。
と言ったら、


ヒマじゃないけど息抜きは必要だよね。


と言ってた。


その言葉に妙に納得した。


空気みたいにいる先生とは無言で時間を過ごしても平気だった。





修学旅行の時、



自由行動で自由にしすぎて集合時間に集合場所へ辿り着けず置いてけぼりになってしまったことがあった。





携帯は旅行中は持っていけないので直ぐに連絡出来ずに集合場所に着いた時にはもうみんなはいなかった。


そこから駅へ移動した。

本当はそこから電車に乗るはずだった。


田舎の小さな駅。



一緒にハグれた櫻井クンがその日泊まる旅館へ連絡をいれてくれた。


先生への伝言は伝えたから後は待つしかなかった。



『このままだと夜になっちゃうなぁ。


旅館から伝言聞いて迎えに来てくれたとしてもかなり待つことになるよ。


お腹空いてない?   寒くはない?』



心配していろいろと気遣ってくれる。



1人ではぐれなくて良かった。



櫻井クンと一緒だと女子の目がイタイから嫌だと心の中で思ってたけど


今は一緒にいる心強さに感謝してる。


こんな時でも冷静に行動出来てテキパキしてる姿に素敵だなと素直に思った。





『はぐれたら困るから』


そう言ってギュッと握られた手。



「はぐれないし! どんだけお子ちゃま扱いなの!」


笑って茶化したのに、





『大事だから』



更にギュッーと握られて何も言えなくなった。





何時間待っただろうかー





『全く、どんだけ心配かけさせんだよ  お前らは』


街頭の灯りの中にぼんやりと二宮先生の姿が見えた。




 「ごめんなさい」


私が言うのを遮るように



『すみませんでした!』


深々と櫻井クンが頭を下げた。




それを見た二宮先生はそれ以上問い詰めたりしなかった。



『櫻井が一緒だから大丈夫だとは思ったけど、、、、。

別の心配も無用だったな、


ほら、行くぞ。』






先生は繋がれた手を見たと思う、多分、、、、、



誤解されちゃったかな、、、。






『行くぞ!』




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その顔は安心とも怒ってるのとも違う、ちょっとだけ物悲しそうな、
相変わらず読み取りにくい表情をしていて


本当は迷惑かけてしまったこと、迎えに来てくれたこと謝ってちゃんとお礼も言いたかったのに何も言えなかった。





旅館の車を借りて運転してる先生の後ろに2人で並んで座ってる。




櫻井クンは、私の手を握りしめたまま離そうとはしなかったけど、私は居心地が悪くて落ち着かなかった。



長い道のり



ルームミラー越しに先生と目が合った。


思わず目を逸らして窓の外に視線を移してしまった。




先生、、怒ってるの?


聞かなくてもそりゃ怒ってるに決まってるよね。


私はなにをやってるんだろ、、、


こんなことになってるのに


先生の運転する車に乗ってる って心の端っこがちょっとだけ喜んでる。


こんなダメな生徒でごめんなさい。