泣けるなぁ。
ふとした瞬間にも涙がこぼれ落ちそうになるのを必死で堪える。
なんで こんなに泣けるんだろ?
凍えちゃってるんだな、 心が。
いつから こうなんだろ?
もう 考えるのも面倒い。
ふとした瞬間にも涙がこぼれ落ちそうになるのを必死で堪える。
「いらっしゃいませ~」
今は感情を押し殺して仕事に専念。
あ、、、、
いつもメロンパン買ってく人だ、、、
常連さんってほどではないけれど、
たまに来るお客さん、 必ず メロンパンを買ってく。
それと時々コーヒーも。
『寒いね』
急な言葉に
「そうですね」
とだけ答える。
『ホット頂戴』
「こちらですね」
コーヒーのカップを手渡す。
『寒いね』
それ さっきも言ったじゃない、、、
心の中で呟きながら 顔は仕事スマイルで
「急に寒くなりましたね」
当たり障りなく答える。
『外の天気じゃなくて 君が。』
「え?」
意味が分からず、反応に困る。
『ムリしてない?』
「してないです」
『ムリしちゃダメだよ』
お金と一緒に小さなメモ紙が渡された。
手の平の上にあるソレと
メロンパンの人の顔を交互に見る。
『それ、おまじないが書いてあるから 後で見てね!』
「おまじない、、ですか?」
かなり不審に思って 疑いの眼差しで見てると
『そ! おまじないだから 他の人には見せちゃダメだよ』
そう言ってメロンパンが入った袋とコーヒーカップを持って出て行ってしまった。
メモ紙には コミカルな絵が描かれてた。
お世辞にも上手とは言えない その絵は
完成されてないからこその滑稽さと暖かさがあって 思わず笑ってしまった。
コレがおまじない?
一体なんの?
わかんないけど ま、いいや。
それにしても 面白い人だなぁ、、、。
次に彼がお店に来たのは 3週間以上経ってくらいだった。
「あ!」
彼もこちらを見てニコッと笑った。
「この前はどうも。 アレはなんのおまじないだったんですか?」
『知りたい?』
「はい。」
『俺に夢中になるおまじない』
ニヤッと笑う人を前に フリーズしてしまった。
『営業スマイルばっかじゃ疲れるでしょ?』
続く彼の言葉、
『俺もね、似たようなことしてるから分かんの。
せっかくの笑顔がもったいないよ、肩の力抜いて、ね!』
「占い師?」
豪快に笑われた。
変なこと言ったんだと気づいて赤面してしまう。
『違うよ。 それだけ君のこと見てるってこと。』
その言葉の意味をストレートに取っていいのか分からず黙ってしまう。
『ほら、また難しい顔してる。
笑ってたが100倍可愛いよ!
ただし、カチコチの営業スマイルじゃない方ね。』
気づいたら 涙が一つ頬を静かに滑り落ちてた。
人前では絶対に泣かないって思ってたのに、、、。
「ごめんなさい。 なんかビックリしちゃって、、、」
慌てて涙を拭おうとしたら、
スッと伸びてきた指に先を越された。
『頑張り過ぎないで。 泣いていいよ、
涙がこぼれたら 今みたいに拭いてあげるから 』
名前も知らない 準常連のメロンパンの人に
何かに打ち込んでないと 寂しくて
気を紛らすものがないとダメだった。
そんな私のことが 分かるっていうの?
魔法使いさん?
「あの絵 好きです」
唐突な言葉にも笑って頷いてくれる。
『また 描いてあげる
だから、下の名前と連絡先教えてよ。』
胸の名札を見ながら彼が言う。
「仕事中にナンパはやめてくださいね」
笑いながら言った。
その後も 彼はメロンパンとコーヒーを買いに来る。
この前はドリアだった。
他に変わったことといえば、
彼が私の彼氏になったこと。
相変わらず ヘタクソな絵で 笑わせてくれる。
心の奥深く
暗い場所に
光をくれた。
貴方に感謝
大好きです。