ひとり暮らしするなんて聞いてねーよ。
 
 
 
姉貴の引っ越しは俺とおふくろで手伝った。
 
 
 
「ありがとう。あとは1人でなんとかなりそうよ」
 
 
 
和『たまには実家に顔出しなよ。俺が飢え死にする前に』
 
 
 
「何言ってんの!今時男子は料理くらい出来なきゃダメよ。私のが食べたきゃここに来なさい」
 
 
 
 
返事に困ること言わないでくれる? おふくろも一緒だぞ。
 
 
 
母「そうね、それがいいわよ。ねっ和也」
 
 
 
おふくろが肘でつついて〈チャンスよ〉って耳打ちする。
 
 
 
 
姉貴とのことがあってから、おふくろに
 
 
゛もしも俺が姉貴のこと好きになったりしたらどうする?゛
 
って聞いてみた。
 
 
そしたら、あんたもしもじゃないでしょ。最初から好きだったでしょ? 好意持ってるって母さん気づいてたわよ。
 
って言われて。
 
 
 
お父さんと再婚するって決めた時に話したの。
お互い年頃の子ども抱えてだからもしかしたらってことも考えておかなきゃねって
 
 
 
和也、あんたまだ若いんだからいろんな子とお付き合いしたっていいのよ。でも紗(すず=姉貴)ちゃんだったら安心ね。
母さん反対はしないから後は自力で頑張んなさい。
 
って言われたんだっけ。
 
 
 
 
 
母「紗ちゃん、和也置いてくからこき使ってやって、猫よりは役に立つと思うから」
 
 
 
 
「お義母さんご飯は?引っ越し蕎麦用意してるのに」
 
 
 
母「お父さん1人じゃ可哀想でしょ。お父さんの帰りを待って一緒にディナーしてくるからいいわ」
 
 
 
 
 
ひとり暮らししようと思うんだけど・・・
 
紗ちゃんから相談されたのは3ヵ月前。
 
お父さんに言う前にお義母さんに話してからと思って・・・
 
 
 
なんでひとり暮らししたくなったの?
 
 
って聞いたら
ずっと可愛い弟だと思ってた和が最近やたら大人っぽくなってきて時々ドキッとするの。
 
って話出したから正直びっくりした。
だって紗ちゃんには今まで何人か彼がいたし、会ったこともあるけど
和也とは全然違うタイプだった。
 
 
 
 
 
再婚で一緒に暮らすようになって、
紗ちゃんよりもまだ背の低かった和也をホントの弟みたいに世話やいてよくしてくれてた。
思春期の和也はそんな紗ちゃんにドギマギしてたけど(笑)
 
 
 
 
和也だって以前は友達のとこばっかりで家に居ようとしなかったのに再婚してからは出歩かなくなった、それは紗ちゃんの影響ね。
 
 
 
 
 
母「和也がもし紗ちゃんのこと好きだったらどうする?」
 
 
 
「もしも?・・・もしも??」
 
 
 
母「紗ちゃんって結構鈍いのね」クスッ
 
 
 
「お義母さん?」
 
 
 
母「で、ひとり暮らししたい理由は和也なのね」
 
 
「うん。」
 
 
母「ひとつ屋根の下は気まずい?」
 
 
「これまで通りなら平気だけど、和が男に見えるのはよくないかな。心臓に悪いし」(笑)
 
 
 
母「分かった。和也のこと抜きにしてもひとり暮らししてみるのは賛成だわ、お父さんにも話してみなさい」
 
 
 
 
2人とも同じことで悩んじゃって・・・
 
親としては本当のところ複雑なんだけど、
あとは本人達に任せるしかないわね。
 
 
 
 
母「じゃ、しっかり働くのよ和也」
 
 
 
 
 
新しい家に2人残された。