彼女の口からこぼれてくる言葉を
 
ただ静かに聞いた。
 
 
 
 
話し終えた彼女の瞳から
落ちる雫を
ひと粒も逃さず受け止めたくて抱きしめた。
 
 
 
 
 
 
私バツ1なの。
 
のっけからの言葉に衝撃を受けたけど内容はこうだった
 
 
 
結婚して間もなく子どもが出来て
 
当たり前に生まれてくるものだと思っていたものが
ある時体調に異変を感じて病院に行くとお腹の中で赤ちゃんが死んでいた。
 
ショックのあまり沈み込んでる彼女に対し旦那さんの言った言葉は
「いつまで落ち込んでんの、子どもなんてまた作ればいいじゃない。それよりさ明日接待でゴルフ行くんだから用意しといてよ」
だったらしい。
 
それから暫くして
旦那さんには他に女の人がいることがわかり
離婚したいと切り出したけど
出世に関わるからとか世間体を気にして離婚には応じてもらえなかった。
 
何度も訴えてやっと別居を許された。
 
別居生活も3年になった頃、相手の女(ヒト)の妊娠がわかり旦那さんから名前と印鑑が記入された離婚届けが送られてきた。
 
 
 
そんな内容だった。
 
 
 
ムリだと思ったら構わず去っていいから
 
 
話しを始める前に言った彼女の言葉が今は痛い。
 
 
ずっと1人で肩肘張ってきたんだね
 
誰にも甘えられず 頼れずに。
 
 
俺が傘を差し出したあの日は離婚届けを出した帰りで
 
 
だからあんなに淋しげだったんだ。
 
 
 
流産した日も雨
 
 
だから雨は憂鬱なのって
 
 
 
普段は見せない影を落とす。
 
 
 
泣いてるように見えたのはそのせいだったんだね。
 
 
 
いったいどれだけの思いを独りで抱えていたんだろう
 
 
 
堪えてきた涙は全て流していいよ
 
 
 
 
 
俺が受け止めるから。
 
 
 
 
そっと抱き寄せた。