毎週木曜日に知り合いに頼まれ
絵画教室でアシスタントのバイトをしている。
 
 
今日もそのバイトの帰りで駅前の道を歩いてた。
 
 
 
「あ、あの・・先週は傘をありがとうございました」
 
 
不意に声を掛けられ驚いたけど、
 
にこやかに話すその人が淋しそうな横顔のあの日の彼女だとわかり
 
 
『あんな傘が役に立ったんだったら良かったよ』
 
 
と笑顔で返した。
 
 
「直ぐに返そうと思って次の日もここで待ってみたけど会えなくて・・・さすがにもう無理かなって思って今日は傘持ってきてないんです」
 
 
『あんな傘くらい 返さなくてもいいのに』
 
 
「そんな!お借りしたものは返さなきゃ。
でもどうしよう・・取り敢えず何かお礼が出来たらいいんだけど」
 
 
彼女が真面目な顔で俺を見るから
 
 
『じゃあ、あの店でコーヒーを奢ってくれる?』
 
 
駅前の角にあるカフェを指差した。