翌朝は遅い朝を迎え朝食とも昼食ともつかない食事を取った。
 
 
午後の便で東京に帰る智くんを空港まで送ることになった。
 
 
私の非現実時間の終わりが刻々と近づいてる
 
 
 
 
オフが取れたらまた釣りしに来るから一緒にやろうな。
 
そんなことを言ってアド交換をした。
 
 
これも明日になればシンデレラの魔法のように消えて何処にも智くんの名前はないのかもしれない
 
 
 
先の方に空港を示す看板が見えて来た。
 
 
なんだかしんみりして会話が途切れてFMの音だけが車内に響いて悲しくなってきた。
 
 
 
ターミナルの降車場に着いた。
 
 
人目があるから見送るのはここまで。
 
 
 
 
「着いたよ」
 
 
 
『ん。いろいろありがとう』
 
 
 
荷物入ってんのかしら?
ってくらいペシャンコのバックを持った彼に土産の袋を渡す。
 
 
 
もう一度ありがとうって言った彼がスッと近づいてチュッと唇に触れた。
 
 
『ニノばっか見てないで俺のことも見てね』
 
 
口角の左を上げていたずらな顔で笑った。
 
 
 
あっけに取られサヨナラも言えないままターミナルの中に入ってく智くんの背中を見送った。