■80年代の男の美学を、宝塚に転写できたか
昭和の笑い、ブスや痴漢・スケベで笑いをとるのは、今の時代ではやはりデリケートだったなあと思う。
北条司先生の代表作、キャッツアイとシティハンターを見ると、昭和男性の照れを感じる。
キャッツアイだと、仕事にかける情熱や愛し続ける男の真摯さを俊夫。
スケベで軽薄で馬鹿な男の姿を神谷、と、二人のキャラクターが担当している。
シティハンターの冴羽 獠は、二人の合体だな、と思って見ていた。
強い、弱いものを助ける、愛する人を守る。けれど、自分の傷を見せない。
劇画の典型的なヒーローパターンからさらに進んで、かっこよさ・自分のシリアスな部分を茶化す照れが入るのが80年代のように思う。
完全無欠なヒーローではなく、血肉の通ったリアルな男性として描こうとする工夫が、時代の能天気様式と合体した時、デフォルメされてハッスルだのお尻触りだのになったのだと思う。
北条司の世代は、無口で堅苦しく厳しいおやじに反発して育ったかもしれない。
男は黙ってサッポロビール、男はへらへ笑うな、必要以上にしゃべるな!という風潮の中で、ばかばかしさとや男の間抜けさをことさらに強調するのは反骨の一種にも見える。
でも、それを現代にそのまま持ってくるのはなかなかに苦しく、
コメデイシーンが、冴羽のかっこよさを引き立てる結果にはなってはいないように思ってしまった。
少年漫画を宝塚の舞台にのせる以上、理想の男像を描いてほしい。
強くて優しく、愛に生きる。
確かに冴羽 獠は、男の理想形です。
強くて、優しく、薫を愛している。
その一番最後の複雑な愛を描く尺が少なくて、ちょっと物足りない感じがしたかもしれない。
でも、そこで、劇中歌 「still love her」がとても効いてた。
薫が離れていってしまうかもしれないけれど、薫のためを思うと引き止めることはできないと葛藤するシーンで歌われるのが、とても切なく、本音を言わない男のかっこよさを感じさせるいいシーンでした。
あの曲は、TMファンの中でも人気曲だ゛そうだけど、現実とフィクションが交差するような、過去と今が交差するような不思議な時空を感じる素敵な曲ですね。
「2階建てのバスが追い越していく」というのは、当時小室さんがロンドン暮らしで、ロンドンの当時のバスは2階建てだったらしいですね。
咲ちゃんの冴羽 獠,は哀愁を感じさせて色気がありました。
「依頼を受けるのは心が震えた時だ」 とか、かっこよさを見せる部分はきっちりニヒル決めてくるのはさすが。
あーさのあほな外国人役も、美しさも、似合すぎた。
でいて、あーさもしっかり陰りがあって、獠と親友というのが頷ける複屈折の魅力でした。
薫の希和ちゃんは、ボーイッシュな女の子という感じで、嫌味なくかわいい。後ろから抱きかかえたときの咲きわのサイズ感もいいね。
あやなの槇村の哀愁、大好きだった。雨に濡れたくたくたのトレンチコート感がイカス。
印象に残ったシーンは、新宿のワンダーランド。
ロストイントランスレーション的な漂流感がよかった。
■退団者の皆さん
・あゆみさん(沙月愛奈)
水気のある艶やかさ、大好きでした。
あゆみさんの踊りは、だいもんの声に匹敵するような特殊能力でした。
ひーこさんとのツインは絶品。
印象的なのはやっぱりファントムの従者、踊りだけですべてを語るお役。
暗い宿命の香りを感じる嘘のない舞踊でした。
だいもんを見送っての退団。
見送られたいと願うのも、共に巣立ちたいと決意するのも、見送りたいと望むのも、時あるものはすべて美しいと改めて思わせた、89期の退団でした。
・たっちー(橘 幸)
色々なお役があったけれとで、なぜか金髪美少年のイメージがある。
ハンチングとニッカボッカを履かせたら随一の、クラシカルな美しさ。
あとるろうに剣心のアヘン中毒者の演技がすごかったなー。
・華蓮 エミリちゃん。
印象的なのは情熱的なドン・ジュアンのセビリアの女。
奔放さと情念を感じさせるたたずまいに息をのんだのを覚えてる。
・りさちゃん(星南のぞみ)の美しさよ。
品があって、美しいブルーの似合う娘役さん、にわさんも「雪組の宝」と評していたけれど、姿を見るとそれだけで宝塚・雪組・娘役を見たな、と思える素敵な娘役さんでした。
退団後のインスタも、りさちゃんのイメージを裏切らない世界でほっとします。
・汐聖 風美ちゃん
舞台のお役じゃなくて申し訳ないのだけれど、スカステでケーキを作っていた姿がかわいらしくてかわいらしくて。
クーデターを起こすグジャマラ王国のエラン・ダヤンは、存在感のあるお姿でした。
・望月 篤乃
もっちーは、星遭一夜で、咲ちゃんの家来の役をやっていて、月代が似合う涼やかさな面構えがとても美しかったのを今でも思い出す。雪組の端正さを感じさせる男役さんでした。
みちるちゃん、月組でもますますかわいく活躍しますように。
そして、和希そら、ようこそ、おいでませ、雪組に。