No.3-1 無邪気な思い込みと自惚れ
今でこそ、「書くこと大好き」、「書くことが生き甲斐」と豪語する私ですが、昔は作文とか読書感想文が苦手でした。
そんな私が「書く」ことを仕事にするに至ったきっかけ。それは、若さ故の無邪気な「思い込みと自惚れ」。
高校1年の文化祭。
私たち1年生に与えられたテーマは、それぞれの出身中学の紹介。文章や写真、イラストを駆使し、自分たちの卒業した中学を表現するのです。大きいようで小さい、1枚の模造紙に。先生や在校生に話を聞きに行ったり、写真を借りたりして、まとめあげました。
なぜか、私ひとりで。
そして、無事に文化祭での展示を終えて数日が経ったころ、ある先生が私に言ったのです。
「おまえが書いた文章が職員室で評判になってるぞ」
「なんで?」
「すごいいい文章を書くな~って、先生方みんな感心してる」
嬉しいような、恥ずかしいような。
くすぐったいような、誇らしいような。
不思議な感覚を持って心に入ってきた何気ないこの言葉たち。
単純な私をその気にさせるには十分すぎました。
「私、人より文章書くの上手いんだ」。
瞬間的に、心に芽生えた確かな想いは、恐ろしい勢いで全身を駆け巡りました。
若さ故のエネルギーというのか…自分はすごい、と信じて疑うことすらありませんでした(笑)。
それはもう、無防備に、どこまでも無邪気に。
このときの自分の文章レベルを考えると、恥ずかしくなるくらいの、単なる“思い込みと自惚れ”にすぎなかった。
だけど、それを持てなかったら、きっと今の自分はいなかった。
この、無駄な自信が心に派生してから、急速に「書く」スキルはあがっていきました。
興味もなかった、得意でもなかった、「書く」ということが、「大好き」に変わった瞬間。
私の、私だけの人生が、静かに始まった瞬間。
今でも、古びた廊下でのその会話は、はっきりと記憶にも感覚にも、残っています。