

今回は、エックス線作業主任者試験の解説で『エックス線管(X線管)のフィラメントとターゲットに使用する元素』についてです。
それに関する問題では、次のような選択肢が出題されます。
「エックス線管の陰極のフィラメントには、融点が高く抵抗の小さいタングステンが用いられ、陽極のターゲットには、熱伝導の良い銅が用いられる。」
この選択肢は、誤っている記述です。
この記述は、フィラメントと、ターゲットの素材について問うものです。
では、選択肢の前半部分を(1)とし、後半部分を(2)として考えてみましょう。
(1)陰極のフィラメントには、「融点が高く」「抵抗の小さい」タングステンを用いる。
(2)陽極のターゲットには、「熱伝導の良い銅」を用いる。
まず、(1)フィラメントの金属について、見ていきましょう。
フィラメントは、タングステンという素材でできています。
あまり聞きなれない金属の名前ですが、用途は様々です。
非常に硬い金属なので、工具に使われたり、ボールペンのペン先、意外なところでは、陸上競技のハンマー投げのハンマーに使われたりもします。
では、ここでタングステンの3つの特徴を見ていきましょう。
(イ)「高融点である」
融点とは固体が溶けて液体になる温度のことです。
タングステンの融点は、約3400℃です。
ちなみに鉄の融点は、1500℃です。
タングステンは、高温でも溶けにくい素材なのです。
(ロ)「抵抗が大きい」
抵抗とは、正確には電気抵抗と言います。
電気の流れやすさを表すもので、抵抗が大きければ電気は流れにくいのです。
抵抗が大きい方が、たくさんの熱電子が発生します。
(ハ)「原子番号が大きい」
自然界には約90種類の元素が存在しますが、元素の周期表でいうとタングステンは74番目の元素です。
この数字が大きいほど、基本的に重い素材だと言えます。
ちなみに鉄は、26番目の元素です。
(イ)と(ロ)の記述からわかるように、タングステンは、高融点で抵抗が大きいことが特徴です。
↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑
(これメッチャ重要です!)
ですから(1)の記述は、「融点が高く」「抵抗の小さい」ではなく、
「融点が高く」「抵抗の大きい」が正しい記述になります。
フィラメントには大電流が流れ、超高温になるため、フィラメントに用いる素材の融点は、高くなければなりません。
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(これメッチャ重要です!)
次に、(2)ターゲットの金属について見ていきましょう。
ターゲットの素材は、フィラメントと同じくタングステンでできています。
他にも、モリブデンという金属が使われることがあります。
やはりターゲットも、熱電子の衝突により超高温になるため、融点が高く、溶けにくいことが大前提となります。
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(これメッチャ重要です!)
ですから、(2)の記述は、「熱伝導が良い銅」より、「高融点のタングステンなど」とした方が適切です。
↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑
(これメッチャ重要です!)
では、銅は用いられないのかというと、そんな事はありません。
エックス線装置にかける電圧が低いものであれば、ターゲットに銅が使われることはありますが、熱伝導が良いことが絶対条件ではない事に注意してください。
では、ここで今回の話のポイントをまとめましょう。
次のポイントは、覚えておいて損はないと思います。
《1》フィラメント、ターゲットともに高温になるので、高融点の素材を用いることは絶対条件です。
《2》フィラメントの素材には、タングステンを用い、ターゲットの素材には、タングステン、モリブデン、銅などを用います。
《3》タングステンの特徴は、高融点、高抵抗、原子番号が大きいことです。
ここで、今回の選択肢に戻りましょう。
すると、「エックス線管の陰極のフィラメントには、融点が高く抵抗の小さいタングステンが用いられ、陽極のターゲットには、熱伝導の良い銅が用いられる。」という選択肢は、誤っていることがわかります。
タングステンは、高融点、高抵抗の素材でした。
また、ターゲットにも、高融点の素材が用いられました。
従って、「エックス線管の陰極のフィラメントには、融点が高く抵抗の大きいタングステンが用いられ、陽極のターゲットには、高融点のタングステンなどが用いられる。」という選択肢であれば、正しいことがわかります。
フィラメントと、ターゲットの素材に関することは大切です。
覚えておきましょう。
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