ページをおっ立てて初めての投稿になります。
ガンッガンにネタバレするのでご注意を。

今作の表題は、三隅(役所広司)がラストの死刑宣告を指していると思われますが、なぜ「思われますが」かというと、終幕が薮の中で強制終了してしまうからです。

重盛(福山雅治)は殺人の前科がある三隅の、二度目の殺人事件の弁護を請け負うこととなる。三隅は自身を解雇した社長を殺し、死体に火を着けた。殺人の前科、事件の凄惨性からして極刑が宣告されるであろう裁判を「怨恨による殺害」として無期懲役に持ち込もうと考える。
事件の関係者と面会する中、被害者の妻の美津江(斉藤由貴)と三隅の間で不穏なメールのやり取りがあることがわかり、三隅の元へ向かうと、その口からは以前と違う供述が…。
重盛は一転、「怨恨による殺害」から被害者の妻と協力した「保険金殺人」に切り替え、調べを進めるが、今度は被害者の娘の咲江(広瀬すず)が重盛の事務所を訪れ、三隅とは以前から面識があり、父から性的虐待を受けていたと告白する。
事実を確認するため、重盛は三隅と面会すると、今度は「殺していない」と突然殺害の容疑を否認して…。

と、あらすじはこんな感じで。

ここから重盛、摂津(吉田鋼太郎)、川島(満島真之介)の弁護団は摂津の意図がわからず、真実も見えぬままに模索するわけですが、観客たる僕達も全く訳が分からなくなる。

判決が終わり、ラストシーンの面会室にて何かを含んだ笑みを浮かべる三隅と、真相に気付いた重盛のガラス越しの目配せで物語は終幕してしまう。

でも観客たる僕達には重盛がたどり着いた真相 は自分達で選ばざるをえない。

・三隅は自分を解雇した社長を怨恨の末に殺害した。
・三隅は被害者の妻から殺人の依頼を請け、殺害した。
・三隅は咲江の心を読み、被害者を殺害した。
・三隅は咲江をいたぶる被害者を見て見ぬ振りをする美津江に対し、見せしめのために殺害した。
・三隅は会社の不正に憤り、社長を殺害した。
・三隅と咲江が被害者を殺害した。
・咲江が殺害し、咲江の境遇を知っていた三隅が罪を被った。

箇条書きをしてもまだまだ可能性が書ききれないが、本編を見るに

・重盛、三隅、咲江が雪原で雪遊びをして、寝転がる姿が重盛は大の字に対し、三隅と咲江は十字架の姿だった事。
・三隅と咲江が返り血を浴びながら十字架の形に横たわらせた死体を燃やす。

この2シーンがカットインされているという事は上記に挙げた可能性のうち、三隅と咲江が関わったものが濃厚である。

個人的見解としては
・三隅が咲江の心を読み、被害者を殺害した。
も削除できない。

劇中に三隅と重盛が接触(ガラス越しに手を合わせる)シーンの後、重盛に娘の事を問うシーンや、判決がくだり、三隅が重盛に握手をして、ラストシーンに含んだ笑みを浮かべている事などから、何かしらの接触で心を読み解く能力があるかもしれないからだ。

しかしながら、本編中に「三隅は空っぽの器の様な男」と揶揄されたり「器だとしたら」と重盛が言葉にする辺り、咲江の何かを拾う器だったのだろう。

真相はさて置き、容疑を否認する供述を述べた後、休廷して裁判官、検事、弁護団でこれからどうするかという話し合いがもたれる。
裁判官と摂津の目配せや、検事の耳打ちで裁判続行が決まり、死刑の判決がおりる。

裁判は真実でなくなり、法律による殺人が告知された瞬間だ。

法律は万能でも正義でもないのだ。

エンターテインメントとしては腑に落ちない作品かもしれないが、裁きをどの分野に重きを置くかは、観客それぞれによって変わる、ある意味人を巻き込んで完成する作品ではあるんじゃないかな。

「三度目の殺人」を観た後、観た者同士で擬似裁判員討論なんかしてみたりすると面白いかもしれない。

貴方が触れたそれは、どの裁きだろうか。