今日、俺は虹を見た。


でも、ただの虹じゃあない・・・海の向こう側に見える虹だ。


その虹は海に写って、キラキラとゆれていた。


月が海に写る瞬間を見たことは何度もあったが、この光景に俺は目を奪われた。


その虹が見えなくなるまで、ずっと俺は地平線を見つめていた。


この盛大な海は、自分の姿に虹が写ることをどんな風に捕らえるのだろうか。


この盛大な海からすれば、俺はちっぽけな存在にすぎない。


だからこそ、俺は知らず知らずのうちにこの場所に向かって歩いていたのだろう。


空に虹が見えたとき・・・すぐさま走り出したのは海辺だった。


もちろん常に海沿いを歩いてはいたが・・・海が少し見えるくらいの距離だった。


何度も何度も、この光景に心安らいだ。


何度でも、この絵のような光景を目に焼き付けた。



嘘ばかりが世界を回る、この時代で


嘘などないものが、そこにあった



“真実を照らす鏡” まるでゲームの様な言葉なのに、それは今俺の目の前に存在していた。


例えば、地図帳を見ても分からなかった世界の広さが。


この海を見て、実感できるように。


地図の上から人は見えない。


地図を見ただけじゃ全部は分からない。



――そう。だから俺は自分で歩いて世界を知ることにしたんだ。





両親のいない俺にとって、家を出るということは後ろ髪引かれるものには値しなかった。


愛されてなかったわけでもない。でもうらんでいないわけではなかった。


ただ・・・今の今まで自分の殻を割ることができずに自らの折にすがって生きていた自分に腹が立っていた。


決心することに時間はいらなくて、俺に必要だったのは生きるための術だった。


一人で、世界を回ってのうのうと生きていられるほど甘い世界じゃないって事くらいは承知している。


愛用のギターを担いで、ノートパソコンをトランクに入れて・・・


俺は長年住んでいた自分の殻から抜け出した。


人の生きられる時間の約四分の一を殻の中で過ごした。


随分、無駄な時間を過ごしてしまったと思う。


けれどそのおかげで俺は心の準備などは一切必要なかった。


田舎の、誰もいないその場所を海沿いに歩いた。


これから、俺の本当の人生が始まる。



海のように、自由に