ずぶ濡れて虫けら -2ページ目
高校生の頃、AC/DCを知ったきっかけは、書店で見つけた胡散臭いサブカル雑誌だった。
悪魔崇拝、秘密結社、UFO、都市伝説、エログロ、ドラッグ……思いつく限りの怪しい話題を詰め込んだ、下品で薄っぺらい雑誌。その片隅で紹介されていたのが『Highway to Hell』だった。
数百字の紹介文だけを頼りにTSUTAYAへ向かい、家でCDを再生した。
泥臭いギタートーン。容赦なく叩きつけるリフ。そして喉を裂くようなボーカル。
奇妙なくらいシンプルなのに、頭から離れないグルーヴ。
「嗚呼、ここにロックに求めるすべてがある。」
AC/DCの凄さは、変わらなかったことだ。
時代が変わるたびに「もう古い」と言われても、自分たちの音を鳴らし続けた。変わらないというのは、案外勇気がいる。それは頑固さではなく、自分の輪郭を知り尽くした者だけが持てる強さなのだと思う。
あの胡散臭い雑誌に載っていた悪魔もUFOも秘密結社も、おそらくほとんどは嘘だった。
けれど、AC/DCだけは本物だった。
あの頃、世界は今よりずっと怪しかった。
そして、不思議なくらい、本物はいつも胡散臭い場所に転がっていた。
人生というのは案外、そんな回り道でできているのかもしれない。

