ここまで生きてきたら、
誰にでもそれなりの経験がある。
うまくいったこと。
失敗したこと。
嬉しかったこと。
悔しかったこと。
誰かに助けてもらったこと。
逆に、
誰かを助けたこと。
その一つ一つは、
その時はただの出来事やったかもしれへん。
でも、
長い時間を振り返ってみると、
「あの経験があったから、
今の自分があるんやな」
と思えることがある。
人生って、
そういう経験の積み重ねなんやと思う。
そして、
せっかく積み重ねてきた大切な経験なら、
自分の中だけに置いておくのは、
ちょっともったいない。
もちろん、
全部を誰かに教えなあかんわけではない。
自分が経験したことを、
自分なりに消化して、
そこから得たものを、
ほんの少し誰かに渡す。
それだけでもええ。
それが、
「継承」なんちゃうかな。
継承というと、
何か大きなものを
受け継ぐイメージがある。
技術だったり、
仕事だったり、
伝統だったり。
もちろん、それも大切や。
でも、
もっと身近なところにも
継承はあると思う。
親から子へ伝わる言葉。
先輩から後輩へ伝わる経験。
友達から教えてもらった考え方。
誰かにかけてもらった優しい言葉。
昔の自分が誰かからもらったものを、
今度は自分が誰かへ渡していく。
そうやって、
人から人へ、
時代から時代へ、
見えないものが受け継がれていく。
そして、
継承にはもう一つ、
大切なことがある。
それは、
そのまま渡さなくてもええ、
ということやと思う。
自分が受け取ったものを、
自分の経験の中で考えて、
自分なりの形に変えていい。
昔は正しいと思っていたことが、
今では違うと思うこともある。
その時は、
ちゃんと修正したらええ。
受け継ぐということは、
過去をそのまま守ることではなく、
良いものは残し、
違うと思ったものは変えて、
より良い形で次へ渡していくこと。
それもまた、
継承なんやと思う。
だから、
人生で経験した失敗も無駄ではない。
自分が失敗したからこそ、
「これはやめといた方がええで」
と言える。
自分が苦労したからこそ、
誰かが困っている時に、
少しだけ気持ちを分かってあげられる。
自分が誰かに助けてもらったからこそ、
今度は誰かを助けることができる。
そう考えると、
経験というものは、
自分だけの財産ではなくなってくる。
経験は、
誰かの未来を少し楽にするためにも
使えるんや。
それが、
「還元」なんやと思う。
もらったものを、
そのまま返す必要はない。
自分が受け取った優しさを、
別の誰かへ渡してもいい。
教えてもらった知識を、
次の世代へ教えてもいい。
誰かに救ってもらった経験を、
今度は自分が誰かを支える力にしてもいい。
そうやって、
受け取ったものが、
また別の人へ流れていく。
一人から一人へ。
一世代から次の世代へ。
そして、
また次の世代へ。
そうやって、
人間の経験や想いは、
未来へ続いていく。
僕は、
これってすごく温かいことやと思う。
自分が生きてきた証って、
自分の名前を残すことだけやない。
自分が誰かに渡したもの。
誰かの心に残った言葉。
誰かが少し前を向けた瞬間。
そんな小さなものも、
ちゃんと未来へ残っていく。
もしかしたら、
本人が知らないところで、
その人の経験が誰かを支えていることだってある。
「あの時、あの人が言ってくれたことが、
今でも自分の中に残っている。」
そんなことって、
あるんちゃうかな。
そう考えると、
自分の人生も、
自分一人だけの物語ではなくなる。
自分が歩いてきた道の途中で、
誰かから受け取ったものがあり、
それを自分なりに育てて、
また誰かへ渡していく。
その繰り返しの中に、
人間のつながりがある。
だから、
年齢を重ねることも、
悪いことばかりやない。
若い頃には分からなかったことが、
少しずつ分かるようになる。
失敗したから分かることもある。
遠回りしたから見える景色もある。
長く生きてきたからこそ、
伝えられることもある。
それを、
「自分のためだけ」にしてしまうのではなく、
「これ、誰かの役に立つかもしれんな。」
と思って、
少しずつ未来へ渡していく。
それでええんやと思う。
そして、
渡したものが、
また次の誰かの中で育っていく。
自分が知らない場所で、
自分が知らない人によって、
新しい形になっていく。
それでええ。
むしろ、
それが本当の継承なのかもしれへん。
自分の経験を、
未来の人が自由に使って、
もっと良いものにしてくれたらええ。
自分より先へ進んでくれたら、
それは嬉しいことやと思う。
だから、
僕らが今まで積み上げてきたことは、
終わりではない。
今日までの経験を、
明日へ渡していく。
そして、
明日を生きる人が、
それをまた次の未来へ渡していく。
そうやって、
人間は少しずつ前へ進んでいく。
行動して、
気づいて、
修正して、
成長して、
続けて、
自信を持って、
信頼を積み上げる。
そして最後には、
自分が積み上げてきたものを、
未来へ渡していく。
それが、
継承と還元。
自分の人生を、
自分だけで終わらせない。
自分が受け取ったものを、
自分なりに育てて、
次の誰かへ渡していく。
大きなことじゃなくていい。
一言でもいい。
小さな経験でもいい。
優しさでもいい。
「こうしたら、
ちょっと楽になるかもしれへんで。」
そんな一言が、
誰かの明日を変えることだってある。
だから今日までの人生に、
無駄なんてない。
笑ったことも、
泣いたことも、
失敗したことも、
悩んだことも、
誰かに助けてもらったことも。
全部、
未来へ渡せる経験になる。
そして、
そのバトンを受け取った誰かが、
また自分の人生を歩いていく。
その先で、
また誰かへバトンを渡す。
人生って、
もしかしたら、
この「心のバトン」を
つないでいくことなのかもしれへんな。
自分のために始めた一歩が、
誰かの希望になり、
自分が積み上げてきた経験が、
誰かの力になり、
そして、
その力がまた未来へ渡っていく。
そうやって、
僕らの小さな人生が、
次の時代につながっていく。
だから今日も、
自分のために一歩進もう。
そしていつか、
その一歩が誰かの役に立つ日が来たら、
今度はその人に、
そっと渡してあげればいい。
「自分がもらったものを、
今度は誰かへ。」
それだけで、
人生は自分一人のものから、
未来へ続く物語になっていく。
