神にも不可能?狂気の鷲巣麻雀の合理性を考える
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 鷲巣麻雀は狂気のギャンブルである。随時搾り取られる血液は死へのカウントダウン、命と思考力を削り対戦者は恐怖に慄く。打ち手が鷲巣巌以外の敵を抱えたこのギャンブルはハンデ戦、敵だけが自分を仕留め相手が死ぬことはない。敵を鷲巣巌一人と思って戦いを挑む人がきっとたくさんいるのだろうがこんな重りがついている上に、ここに連れてきたヤーさんどもは本当に味方なのか?とか考え始めたらもう泥沼、泥中首まで埋まっている。実際問題として仰木さんたちが刺客として送り込んだのはアカギだけなので他の連中はやられるのが大前提、負けるはずがない!と三面張でツモを狙うようなのは当てにならない。彼もすごいんだよ!とフォローが入るのだがすごいと思ったことは残念ながらない。

 まあニセアカギは「二番手は平山!凡夫(ぼくら)の力を、見せてやれ!」くらいの扱いで別に文句はないのだが、鷲巣麻雀は不思議なルールをしている。作中透明牌については再三語られたが、あっちはまだ麻雀絡みなので「ああでこうで」と考える機会がある。不思議なのは血を抜く段取り。鷲巣麻雀は血を抜くまで込み込みで鷲巣麻雀なのでこれはしないといけない。だから規定されている。ここを守らないとお金がもらえないのでみんなやるのだろう。お金が動かないなら本気の趣味だしな。

 鷲巣麻雀はツモやロンでの相手への失点があると血を抜かれる。その他にも対局終了時に支払いとして抜かれる、らしいのだが作中鷲巣様が何度やっても勝てないので行われていない。まとまった量を抜くのでこのときみんな死ぬはずだが、作中見ることはない。もしあったら、人によってはがんばるのだろうか。同じ雑誌には倍満や三倍満がいくら出ても箱テンにならない小泉ジュンイチローとかいたのであんな感じで根性で打ってビシバシ倒れるのだろうか、とかなんとなく想像する。ジュンイチローさんなら「私の血でお前を討てるなら、いくらでも賭けてやろう!」とか言っていろんな意味の無茶をしそうだ。ガラス牌で轟盲牌したらバレちゃうから気をつけて。

 自分で書きながら微妙に筋道が通っていないと思っているので次に行くが、あれって逐一血を抜く必要があるのだろうか。どのみちこの辺だという致死量は変わらず、たぶん半荘が終わるとまとめて抜いて一気に死ぬのでその場で抜かんでも。どうせ点数は計算しているのだから持ち点がなくなったらもう抜いちゃうよ!でいいんじゃなかろうか。だって血を抜くとどんな人でもだんだん頭が回らず弱くなるのだから鷲巣様はどんどんイージーモードになる。そういうのがしたいのじゃ、ククク!カカカ!と言いそうな気もするが貧血で勝つという話でいいのだろうか。あと何点取られたら死ぬ、というのが迫るだけできっと誰しも大慌て、血を抜いて弱体化しないといけないアカギみたいなバケモノはそもそもビビらない。普通はそんなヤツいないのだが随時血を抜いてビビらせたいわけだ。ビビるのは似たようなもんだと思うが、視覚効果だろうか。ああ、オレ、抜かれてる!悪趣味なので鷲巣様らしい。随時血を抜くホンチャンの意味があるのだろうがこのゲームを考えたのは現実には福本先生でも作中は鷲巣様、鷲巣様は絶対に高い目標など持っていないので鷲巣麻雀で狩られる凡夫たちの気持ちになって考えてみよう。ここでいう凡夫とは「二番手は平山!凡夫(ぼくら)の」の「ぼくら」の部分なので平山ではない。

 開局時、血液は満タン(当たり前だ)。健康体というか日常生活の範囲で、ここから多少減っても大丈夫さ!献血と同じ!くらいのノリで打ち始めると思われる。アカギはレート10倍で打ってるから満貫で800ccも取られるが普通は満貫で80cc、これが献血であれば400ccくらい普通に採血するので満貫5回くらいは平気。普段の鷲巣麻雀は6回ノンストップで、血は上がりさえすれば戻そうと思えば戻せる。あの血を戻したらその方が死んでしまうという話もネット上で見たことがあるが、鷲巣様にはそもそも生かして返すつもりがないのでそれでよし(?)。

 基本は取ったり取られたりしながら微増微減を繰り返して何回戦かで死ぬ。わからないのはオヒキの存在で、平山は誰かとタッグを組んでいたのだろうか。白服が二人入っていたならそりゃやられるだろう、という話になるのでさすがに仰木さんの手下みたいな黒黒服が入っていたと仮定する。平山&黒黒服、鷲巣様&白黒服。黒服というのはあの手の部下の呼称だ。みんな黒いようなもんなのでこれで行く。

 僕の場合血を抜かれるのはサシ馬に乗っている平山だけなので顔を赤くしたり青くしたりしない。200cc足りないからお前も抜け!と言われたって200くらいなら余裕なので平山さん(故)を任せて帰るだけだ。初戦や二戦目は余裕があるので平山も負けない。こいつめっちゃ強いですよ!と言われているから殺したいわけで、この時点ではトントン。問題はそろそろ土がつく三戦目以降だ。一度負けると慌てる上に立て直せないヤロウなのでめっちゃフォローする。お金かかってるしな。まだいけますよ!大丈夫大丈夫!ここで平山から「じゃあお前も血を抜け!」なんて言われると困るから「僕もいますし」は絶対に言わない。安全圏からの刃である。理に頼るのはお互い様だ。

 血液が満タン以上になることはないので、お金がプラス、血がマイナス。サシ馬でアカギ戦でいう五千万ほど負けたなら平山の失血は500ccほどだろうか。負けたからには対局中も抜かれているだろうから700と見積もる。致死量の三分の一ほどで、取り返しにかかるはず。「あーあ」と思いつつ援護だけはする。ファン牌でもため込むか、平山好きそうだしな。

 ファン牌を一つや二つ鳴かせたところで理屈に頼ってアベレージを狙うので突風には負ける。いっぺんにぶんどられたらなかなか取り返せず、攻め難いのに攻めないといけない状況が生まれる。そしたら向こうの思うつぼ、小役をチョコチョコ上がられてまた落とす。まったく平山らしい。こちとら白とか中とか集めてるだけで上がろうとしておらず、無駄に中の暗刻とかできちゃってこれどうしよう状態。最後までやるけどさ。

 平山もフラフラだが五回戦である。ここに来て鷲巣麻雀の恐ろしさ「あと二回もある!」が発露する。サラリーマンが午後三時くらいに感じるあの恐怖だ。五時になったからって帰れないのだが、もういい知らん!と開き直る選択肢すらない絶望的状況、ここさえ凌げばという状態ではない。僕だって親を続けて平山に大物手が入るのを待ちたいが小さな上がりは鈴木さんの得意分野なのですぐ蹴られる。局が進んだら安心する平山なので「ダメだこりゃ」と思いつつもう鷲巣様にデカい手が入らないかなあなんて期待して配牌を取る。鷲巣様は剛運の持ち主なのでここで剛運を使っちゃうような無駄なことはせず、ギリ死なない程度の一番怖い手を作る。タンピンドラ1の直撃、まだ生きてるけど大慌てだ。ここからは僕も聴牌だけは狙わないとノーテン罰符で死ぬという「千秋楽を待たずに優勝は横綱」みたいなよく見る状況になる。親方衆が怒ってしまう。この場合怒るのはヤーさんなので僕も必死だ。焦るほど切り間違って聴牌が遠のく。二人揃ってタコ踊り、てんやわんやの末に相手にツモられる。ありゃりゃ。こちらはそれでいいが平山はそれではすまない。でも周りは敵も味方も裏社会の人たちなので文句も言えず、平山は死ぬ。僕は帰る。相棒はやるけど自分ではやらないでおこう。そう思ってまた毎日が始まる。

 なんか書き始めた時思ってたのと全然違う考察になった。平山のオヒキになんかなるからこうなるのだ。ともかく終わりが遠くて失点が積もるというのが怖いのはわかった。今は他人事だから笑いながら書いているが、恐ろしいギャンブルだ。みなさん、麻雀は健康的に楽しく打ってください。