落下試験とは

 

製品の構造設計では、落下や衝撃で、壊れたり、支障がないようにするための対策をすることがあります。

ここで説明していること

 

開発初期段階に

簡単なやりかたで、

将来発生する、落下、衝撃の課題を見つけ、対策するにはどうしたらいいか、

 

説明しています。

 

どうやったら開発初期段階に落下対策をできるのか

 

簡単な3Dモデルを作る。

製品、または、設計対象部分の質量mを計算する(3DCADで計算したり、試作品を測定)。

耐えてほしい落下高さhを決める。1メートルとか。

落下速度vを机上で計算する。

v=√(2gh)

g=9.8m/s2

衝撃の場合は、衝撃速度v。


接触時間、衝撃が始まって反発するまでの時間Tcを、試作品か、類似の製品を使って測定する。


なければTcの概算値、小さいものなら0.002とか、大きいものは0.05とかを使う。


跳ね返り高さを測定して、反発係数eを調べる。

これも測定できなければ、反発係数最大値の、「e=1」をとりあえず使う。

 

対象製品、対象部分にかかる力Fを計算する。

式は

F=m(v+ev)/tc

3DCADの強度シミュレーションを使って、製品の弱そうな部分もしくは、対象部品に力Fを加える。


許容する応力になっていれば、OK。

なっていなければ、形状などで対策して、再度計算。

 

詳しくは、下記「実験で得られたデータから落下衝撃の対策をする」で説明しています。

具体的なやりかた。簡単な実験。

実際の設計では、試作品を壊さない程度の低い高さから落として、

加速度計やひずみゲージで、接触時間tcや加速度を測定しますが、

今回は身近なものを使って、落下衝撃に関するデータをとって調べてみました。

 

衝撃力が分かるように、2Nの力が加わるとはずれる、磁石とねじを用意しました。

磁石をくっつけたカプセルトイのカプセルに、ねじをくっつけ、いろいろな高さから床に落としました。

何センチのところから落とせば、ねじが外れるか、ねじに2Nの力が加わるか、調べました。

 

こうすることで、ねじに2Nがかかって外れるときの落下高さ、その時の接触時間tcや反発係数を調べました。

 

落下して跳ね返るようすを、接触時間、跳ね返り高さを測定して調べました。

得られた結果から、落下によって、ねじにどのような力が加わるのか、調べました。

 

この結果を使えば、ねじ(対象物の質量)と、落下高さが分かっていれば、

ねじ(対象物)に、どれぐらいの力が加わるのか、計算できます。

 

では、具体的にやり方を見ていきましょう。

 

簡単な実験装置を作りました。

 

カプセルトイのカプセル: 落下衝撃を加えるもの

磁石: 力Fを調べるもの

ねじ: おもり。磁石にくっつく。

パテ: ねじにくっつけて、質量を調整する

 

 

磁石をくっつけたカプセルは、19gでした。

 

ねじだけだと1g

 

磁石からねじを外す力は、198gf。

ニュートンにすると1.94N。

約2Nだとして計算します。

 

パテで2gに調整

 

おなじく3gに調整。

 

これを、いろんな高さから床に落としてみます。

写真は、3gのおもりを入れたカプセルを落とすところ。

 

接触時間tcの測定

 

床についた瞬間と、

反発して跳ね上がる瞬間とをみて、

 

接触時間(衝突している時間)を測定します。

写真の例では、時間が8倍になるスローモーション撮影をしました。

画像での1秒は、実際には1/8秒です。

接触時間tc=(0.09秒 - 0.07秒)/8=0.0025 秒

2.5 ms(ミリ秒)でした。

 

反発係数eの測定

 

落下高さは40mm

跳ね返ったときの高さは、18mmでした。

 

反発係数eは、

e=√(18/40)=0.67

67%でした。

 

反発係数eは、衝突前に互いに近づいていく速度と、反発直後に互いに遠ざかる速度の比です。

0(まったくはずまない)から1(もとの高さまで戻る)までの範囲になります。

加速度aの計算

 

落下高さh:40mm=0.04 m

自由落下速度v:√(2gh)=√(2*9.8*0.04)=0.885 m/s

反発係数e:0.67

接触時間tc:0.0025 s

より、

加速度a=v*(1+e)/tc=0.885*(1+0.67)/0.0025=591.2 m/s2

 

分母の接触時間が短いと、加速度は大きくなります。

力の計算に与える影響が大きいので、正しい力を計算するためには、接触時間をより正確に知る必要があります。

作用する力Fの計算

 

質量m: 3g=0.003kg

より、

力F=m*a=0.003*591.2=1.77 N

3gのおもりには、1.77N 約2Nの力が加わっていた。

だから磁石から外れたことが分かります。

 

ほかのおもりでも、落下してはずれる高さを調べて、それぞれの接触時間から、おもりに加わる力を計算しました。

結果は、下記のようになりました。

 

 

おもり1gでは、2Nで外れるはずが、1.16 Nで外れました。

接触時間tcの測定精度が不十分で、実際には、もっと短時間だった可能性があります。

 

対象物(ねじ)の質量が大きくなるほど、耐えられる落下高さは低くなる結果でした。

1gのねじでは、高さ15センチ未満では、外れませんでしたが、

3gのねじだと、高さ4センチで外れてしまいました。

実験で得られたデータから落下衝撃の対策をする

 

対象物のねじが外れない(壊れない)ようにするには、

対象物の重さを軽くするか、

接触時間が長くなるように工夫するか、(カプセルを柔らかい材料にしたり、変形しやすくする)

2N以上の力でも外れない(壊れない)構造にしたらよい。

 

この実験で得られた数字のうち、もっとも重要なのは、接触時間tc。

実際に設計する製品や部品に似たもので落下してみて、このtcを得られれば、

 

あとは 実際に落下する高さhから、自由落下速度vを算出し、tcを使って加速度aを計算して、

ma=Fの公式を使って力を計算し、

 

3DCAD上の強度シミュレーターで計算すればよい。

 

反発係数が分からなければ、とりあえず、最大になる反発係数e=1を代入しておく。

(落下したところまで、製品が跳ね上がる、最悪条件)

 

加える力Fには、安全率をかけておくのが良い。2倍とか。

 

ここまでやれば、たいていの製品で、開発初期段階に、落下衝撃の対策がとれるので、ぜひやってみてください。

 

接触時間tcの概算値と性質

 

接触時間tc、概算値で、数msから、数十ms。

 

対象物が数十gであれば、今回の実験のように2 msぐらい。

質量が1kgぐらいであれば、20から50msぐらいで計算したらよいでしょう。

 

ヘルツ理論

 

接触時間tcを計算するには、ヘルツ理論というのを使います。

式にすると、こんな感じ。

 

重いものほど接触時間tcは長い

半径が大きいもの、硬いもの、速度が速いものほど、接触時間tcは短い

 

落下高さ、質量の違いによる、接触時間tcの変化の一例

 

一例をあげると下のようなイメージです。

横軸が落下高さ、縦軸が接触時間tc。

それぞれ重さの違う対象物について、tcがどのように変わるか、をグラフにしました。

(今回の実験にもとづく計算値)

 

形状や質量、材料が異なると、tcの値も変わります。

 

式中、

E*は、有効ヤング率。

Rは、半径です。

 

ヘルツ理論のなかみ

 

二つの弾性体が接触したときの、応力と変形の関係を、弾性率とポアソン比で導出したもの。

 

図解すると、こんな感じです。

tcは、自由落下のあと、床に落ちた瞬間から、物体が変形して(ヤング率にもとづく)、反発して上昇を始めるまでの時間です。

質量Mは、ここでは、ねじ(対象物3g)と、カプセルの質量(19g)を合わせた質量M(22g)で計算しています。

 

カプセルの加速度を使って、対象物にかかる力を算出するので、

接触時間tcを計算するのに、カプセル込みの質量Mを使います。

 

床に落ちた時に、変形している部分に注目してください。

 

変位δが大きいと、ヤング率に応じて力が発生するのですが、

変形しているところは、半径aの円形状をしています。

この面積が大きいと、力も大きい。

 

面積は、変位δが大きいほど、物体のRが大きいほど、増加します。

ただのばね定数ではなくて、非線形に増えるのがポイントです。

 

ヘルツ理論を使って、接触時間tcを再度計算。

 

上記、試験結果を、ヘルツ理論で接触時間tcを調整した結果は下記の通りでした。

 

作用時間tcが修正されることで、作用する力Fは、2Nに近づきました。

 

接触時間の精度を上げるには、

画像処理の精度を上げるか、

対象物にひずみゲージや加速度計をつけて、衝撃が続く時間を調べるのも有効です。

 

 

 

 
 
 

 

 

 

 

 

まとめ

今回は、簡単な予備実験で、接触時間tcを測定し、それ以外は既知の物性値を使って、対象物に加わる力を計算しました。

 

開発段階の試作品と、量産品とでは、1台作るコストがぜんぜん違います。

 

開発段階では、高価な試作品を壊したくないのと、作り方の差で、量産と同じ結果にならないので、

量産同等品ができてから、なんども落下試験を繰り返すことになりがち。

 

落下試験対策に時間がかかる、もしくは、対策不十分なまま量産続けなければならなくなっていることが、多いのではないでしょうか。

 

製品全体をCADの中で組み立てて、衝撃を与えるやり方もあるでしょう。

 

しかし、大規模なモデルは、誤差も大きくなります。

 

今回ご紹介した、簡単な実験をもとに、より早期に確実な落下対策を検討されてはいかがでしょうか。

 

カプセルの落下試験を動画にしました。