完全に趣味の世界です。
この時期は毎年時代劇ちゃんねるでは過去の忠臣蔵関連映画やテレビドラマが放映されます。
この忠臣蔵はまさに名場面の宝庫で、そもそも事件発端が江戸城松の廊下という格好の舞台です。そして浅野内匠頭切腹は桜の舞う中です。
「風さそう 花よりもなお われはまた 春の名残を いかにとやせん」という内匠頭の辞世の句はまさに美と悔しさを織り込んだ名歌です。
討ち入りの日は東京に深々と雪が積もり、46人の討ち入り隊の足音を消します。始まりと終わりが実に絵画的な美しさです。
吉良上野介が行なった内匠頭へのイビリの一つ畳替えも、浅野家の実力を高家に見せつけた名場面で、とにかくもう語りつくせません。
若い頃は討ち入りの際に表門と裏門を破る場面や隣家の土屋主税が吉良邸庭を高張提灯で照らす場面、上野介仇討ちを遂げた後にエイエイオーと勝鬨を挙げる場面などが好きでした。
しかし今一番好きな場面は何かと問われると「南部坂雪の別れ」のシーンです。忠臣蔵は映画やドラマの監督や脚本家の創作が入り込み、ピンからキリまであるのですが、こと「南部坂雪の別れ」のシーンはどの映画やドラマでも泣けます。瑤泉院の「内蔵助、許してたもれ」の言葉で一気にこみ上げてきます。どんな愚作の忠臣蔵でもこのシーンだけは涙が出るのは、それだけ素晴らしいからだと思いますね。
昔よく言われた「女が入っていけない男の世界」がこの瞬間に凝縮しています。