パートナーの甲君は二世でした。おおらかに育った二世でいわゆるエリート意識はありません。
地方から出て来た甲君は他の兄弟とパートナー生活をしながら同じ会衆にいたのですが、事情によりパートナー生活を解消しなければなりませんでした。
私も丁度家から出た生活をしたくて、それまでにお互い気心が知れていたので
「じゃパートナー、組もうか」ということで同じ区域内で住家を探して、生活を始めました。
生活を始めるといっても何にもありませんでした。
冷蔵庫、洗濯機はもとより食器棚、炊飯器などほとんどありませんでした。
コメは鍋で炊いていました。
実家からの援助は双方断ったのですが、気の付く姉妹が必要なものをくださいました。
でも冷蔵庫と洗濯機なんかはなかったです。
丁度近くで大きな新築マンションが建ち、引っ越しの荷物がゴミに出るわけですが、
その中で何と古い洗濯機が出たのです。
まあゴミとはいえ管理人さんに相談し譲ってもらうことにしました。
集会が終わって夜の十時ごろその洗濯機を引き取りに行きました。
部外者が敷地内に入ることはできないので運搬用に借りた軽トラまで距離約150m。
突然の大雨。二人でびしょ濡れになりながら、
「くそ、なんでこんな時に雨が降るんじゃ」
「洗濯機を雨が洗濯しとるんや。手間省けてよかったやん。ゴミやったんやし。」
「こんな時に笑かすな。力抜けて落とすやろ。」
「こういうのがあとでええ思い出になるんや。今は我慢や。」
「夜の十時に二人の野郎が大雨の中、
びしょ濡れなって洗濯機運んでいる姿って異様やもんな。
死ぬまで忘れんわ。」
と笑いながらヒーヒー言って運びました。
(この洗濯機がのちに数々の事件を起こした曲者でした。)
冷蔵庫はどうやって手に入れたかわかりませんがとにかく都合は付きました。
乗り物は私は中古の原付バイクです。パートナーは小型二輪でした。
最初の給料は私が6万、パートナーは10万でした。
パートナーは普通免許を持っていたのでいい仕事につけました。
でも二人で給料を見せ合った時にパートナーが少し私に気づかう表情をしたので、
私はテレビのドラマなんかで大金を手に入れた人がよくやるように、
「カネじゃ、カネじゃ~~」とわめきながらその6枚の万札をほうり上げました。
パートナーもそれを見て同じように「カネじゃ~~」と言って万札をほうり上げて結局16枚の万札が何度も空中を舞いました。
万札が相手の頭の上に載っている姿が何ともあほ丸出しに見えたりし、
「鏡で見てみい」とか言いながら二人で大笑いしました。
実際パートナーは鏡で見るんですよね。
二人でそのあと「贅沢しようや」と言って外食に行きました。
外食産業は今のほうが廉価でバイキングなどでたらふく食べれますが、
当時はそんなものはありません。
普段通っていたうどん屋で普通よりトッピングを多めにして大盛りにするくらいが贅沢でした。
でも、満足して帰りました。
彼はその月は時々おごってくれました。