高校生ともなると誕生日だからってなんてことはない。
別に家族でお祝いするわけでもないし、ただの平日。
学校でいくつかお祝いの言葉とプレゼントをもらって
帰りの荷物が少し増えるくらいだ。
いつものようにまっすぐ家に帰ってゲームでもしよう。
そう思ったのに、俺の部屋にはこの時間にいるはずないヤツがいた。

「なにしてんの?」
「おっかえりぃ。かずっ。」
「…あんた部活は?」

幼馴染みで一応恋人のコイツは毎日部活で帰りが遅い。
こんな時間にここにいるはずがない。
俺の誕生日だから?なんて思っちゃいけない。
つい期待しそうになるのを一生懸命に抑える。
去年もその前も誕生日だからってなにもなかったんだから。
そりゃ、恋人になってからは初めてだけど、、、
いやいや、期待しちゃダメだって。
何気ない動作でいつものように荷物を置き、制服のネクタイを緩めたとこで
ベッドに寝転がってマンガ読んでたヤツが立ち上がり
背中からいきなり抱きしめてきた。

「誕生日おめでと、かず。」

耳元で囁かれた声にドキッと心臓が高鳴る。速くなっていく鼓動に焦る。
鎮まれ、俺の心臓。動揺してるのなんか気づかれたくない。
なのに、ありがと。と言った俺の言葉は少し震えてた。
ああ、もう。なんだよっ。予想外のことすんなよっ。
ただでさえお前の声は心臓にわりーんだよ。色々響くだろうが!
半ば逆ギレみたいな事を心の中で毒つく。

「くふふ。耳まで真っ赤。かーわいっ。」
「あ、あ、赤くないっ。」

パッとコイツの腕を振りほどき耳を両手で隠した。
分かってる。どうせ真っ赤だよ。言い訳なんか通用しねーよ。

「おまえっ、くふふっ、鏡見る?」
「見ないっ。」

可笑しそうに笑って、また俺を長い腕で捉えると今度は真正面から
抱きしめられた。だから、予想外のことすんなってば。

「で?」
「んー、なにがぁ?」
「部活。」
「ああ、サボった。」

サボった?部活バカのコイツが?そんなこと今まで1回もなかっただろ。
信じられない気持ちで少し身長の高いこいつを見上げたら
ちゅって軽くキスされた。
だーーかーーらーー。予想外のことすんなっ。

「お前の誕生日お祝いしちゃる。」
「まじで?」

なんで上からだよって憎まれ口が引っ込んだ。
だって、なんかすげぇ優しい顔で笑うんだもん。
そんな目で俺を見るなよ。また赤くなるし心臓がうるせぇんだよ。

「そんなもんより、俺に祝われる方がいいっしょ?」

指差されたのは学校で貰ったプレゼントたち。

「勝手にモテてんじゃねーよ。」
「別にモテてないし。」

嘘だけど。でも俺はアンタいればいいし。
本当は受け取らないでおこうかと思ったけど
持って帰れば妬いてくれるかな、なんて淡い期待をしてた。
まんまと妬いてくれたコイツは俺を愛おしそうに抱きしめて
チュッチュチュッチュしてる。くすぐってぇよぉ。もぉー。
しばらくして気が済んだのか「よしっ!」なんて身体が離れた。
ちょっと寂しいと思わなくもないけど言わないよ、そんなこと。