でだ。始まりました。お料理教室。
今日は俺に最高のタイミングでテーマはお弁当。

不幸感が漂うどころでなく、ここには男しかいないはずなのに
なんだか華やかな雰囲気で楽しそうな笑顔と会話で溢れている。

しかーし!俺にそんな余裕はない!
超真剣に包丁を握りにんじんに向き合うべし!
ゆ、指は切らないように、、ふ、ふるえる。

「潤くーーーん!櫻井さん問題児だわ。ヤバイヤバイ!」

そんな俺に目ざとく気づいて二宮さんが大声で叫んだ。

な、なにおう!?

「あー、ハイハイ。大丈夫ですよ。落ち着いて。」

松本先生はにこにことして俺に丁寧に教えてくれた。
包丁の持ち方から添える手の置き方。野菜の切り方。

「あせらなくていいですから。」

ああ、ジェントルマン。なんかオシャレだな、このひと。
なーんて思ってると、また二宮さんの声。

「ちょ、あんた!それはダメだろ!」

見ると大野さんがどこから持ち込んだのかでっかい魚を捌いてた。

「弁当に刺身はないでしょうよ。焼くか煮るかなさいよ。」

呆れた顔して腰に手をやってる二宮さん。
その後ろから覗き込んでうひゃひゃひゃと独特な笑い方する相葉さん。

え、でも。魚を捌いてる大野さん。

「カッコいい。」
「「「「へ?」」」」

あ、しまった。声に出してた。
大野さんはにこりと笑うと

「昨日釣ったばっかだからうめえよ?」

そう言って切った魚をつまんで俺に差し出すから自然にクチを開いた。

「あまい…。すっげえうまい。」
「だろ!」

心底嬉しそうに笑った大野さんはちょっと自慢げで
なんかクチの中の魚がまた甘くなったみてえ。

「あ!ずっこーい!俺も!俺も食べたい!」

相葉さんがテンション高くねだると

「おお、食え、食え。」

皿に乗せて大野さんが差し出すと他の生徒さんも
松本先生も一斉に食べだしてみんな美味しいの連呼。
でも、俺一番に食ったんだぜ。って誰に自慢してんだ、俺。

「櫻井さんも、もうちょっと食う?」
「あ、はい!」

そう言うとまた指でつまんで俺に差し出してきた。
そのままクチを開いてまた魚を入れてもらったけど
なんか、これ…

「餌付けされてるみたいですねえ。」

ニヤニヤしながら二宮さんが言った。
そう、その通り。
俺も今そう思ってたところです。
大野さんはニヤリと笑うと

「バレたか。」

と言った。
それ、どういう意味でしょうか。
それ、ツッコんで聞いても宜しいでしょうか。
それ、俺…どんな答えを期待してんの?