サイキとの別れの後、次第に気持ちの整理がついてきた長沢亜衣は、将来のことに目を向けるようになっていた。

 コンビニやファーストフードの店でアルバイトをしてみて、自分には人と接する仕事が向いていると気付いた。しかも自分にはヒーリング・パワーがある。ならば看護師こそ自分の天職なのではないかと考えた。

 幸い医療現場がすぐ身近にあり、現役の看護師もいる。亜衣は中崎医院で働く二人の看護師・金井美沙、小野衣と親しくなり、いろいろと話を聞くことができ、更に看護師になるという志望を強くした。高校在学中から看護師になるための勉強を始めた方が良いという先輩たちのアドバイスと共に、彼女たちが使ったテキストや問題集などを貸してもらえることになり、翌日の学校が終わった後、それらを受け取るために亜衣は中崎医院に行った。

 ちょうど小休止に入っていて、沙耶、美沙、衣の同級生トリオが診察室で談笑していた。衣の後姿を見た亜衣は思わずスリムな体に抱き付いた。

「衣ちゃんほそーい! 羨ましー!」

「きゃあっ!」

 悲鳴を上げて衣は沙耶の背後まで走って逃げた。

「ようやく前の病院のセクハラ院長と縁が切れたと安堵したのも束の間、今度はセクハラ女子高生が待ち受けていただなんて、勘弁してくだせーよっ!」

 衣は顔に似合わず面白い喋り方をする。

「ふむ……衣ちゃんって感じ易いタイプなのね」

 亜衣は顎に手を当てて言った。

「それじゃあ勤務時間中はボディタッチは控えるようにするね」

「いやいやいや! 勤務時間外も控えるようにしておくんなまし!」

 衣はぶるんぶるんと首を振った。

「そっか……しょうがないわね」

 続いて亜衣は美沙に視線を移した。

「そこへ行くと童顔巨乳の美沙ちゃんはどっしりしてるわよね」

 そう言って亜衣は美沙に抱き付いた。

「一度この豊満な胸に甘えてみたかったの」

「おっほっほ。たぁんと召し上がれ」

 なるほど、美沙は動じない。どころか、顔に似合わず結構艶っぽいことを言う。

「なんなら胸の谷間で溺れさせてあげるわ」

 少女の背中をぎゅっと抱き締めた。

「やーん、幸せ……!」

 うっとりする亜衣。

「何をやっとるんだね、君達……」

 トイレから戻った清和院長が呆れ顔で呟いた。