-11月9日- (秀幸の日記)
朝から雨。客足も少なかった。
仕事が忙しくないといろんな事を考える時間ができる。
お店の事、将来の事、あれやこれや。
今日は何故か宮崎の事を多く考えていたような気がする。
仕事の面では接客にも慣れ、これといって気になる
部分もないけど時々見せる落ち込んだような表情が
心配なんだよな。
アニメイトでニュータイプとガンプラを買った。
---------------------------------------------
「 石川さん、私の顔に何かついてますか?
さっきから私のこと見てますよね? 」
言われて秀幸は我に返った。
弥生をじっと見つめる自分の姿を想像して一瞬恥ずかしくなる秀幸。
「 そんなことないよ。宮崎を見つめる理由がないよ。」
気を付けなきゃバレバレじゃんと心の中で一人呟く。
それ以上、怪しまれないようにと咄嗟に秀幸は話題を変えた。
「 宮崎はなんでそんなに働きまくるの?
なんか欲しいものとかあるんだ? 」
「 えっ… 」
弥生は本当のことを言おうか言うまいか迷った。
石川を信用してない訳ではないが、どこまで喋っていいものか、
その境界線がわからなかった。
「 欲しいものがあって、それを買いたくて 」
「 そうか。何が欲しいかは知らないけど安いものじゃなさそうだな 」
「 え、まぁ… 」
( 彼氏にプレゼントしたいものがあるって言ったら石川さんどんな顔するかな。 )
友人達にはゴタゴタの相談はできても、秀幸にまで彼氏の女性関係を
話す勇気はなかったし、そこまでの親密さを弥生は感じていなかった。
対照的に秀幸はここで一気に親密になれるかもと心躍らせた。
( 宮崎の欲しい物ってなんだろう。もし俺がそれをプレゼントしたら
当然喜ぶだろうな。クリスマスまでまだ時間あるから、なんとか聞き出して
プレゼントしちゃうか。なんだか楽しくなってきたぞ)
いい方向に勝手に話を膨らませるのは男の悪い癖だ。
弥生が誰の為にバイトをしてるのかも知らずに秀幸は浮かれていた。