夜中の3時、トイレに起きるとリビングに珍しく友梨奈がいた
私と友梨奈はルームシェアをしている
最近は生活リズムが違うからあまり顔を合わせていなかった
私は密かに友梨奈に恋をしている
最初はただのルームメイト
時間が合う日に色んな話をしたり、夜通し語り合ったり、一緒に映画やテレビを見ていると、ずっと昔から一緒にいるみたいな感覚になれる人
笑いのツボが一緒だったり
突っ込みのツボが一緒だったり
友梨奈とは気が合う事が多くて、気が付くと恋人がいるのをわかったうえで惹かれていくのを止められなかった
恋人から奪いたい気持ちはない
友梨奈が恋人を大切にしているのを知っているから
でもこんな夜中に起きている友梨奈の背中を見て、何か悩んでるなら力になりたい
夜はぐっすり寝ている友梨奈が眠れないなんて、きっとよっぽどの事があったはず
「友梨奈」
「理佐、ごめん起こしちゃった?」
「トイレに起きただけだよ」
「そっか」
「眠れないの?」
「うん」
「もしかして何か悩んでる?」
「大した事じゃないから」
見た目にはそんな感じではなさそう
「話すだけでも話してみない?楽になるかもしれないよ?」
「実は…恋人と別れたんだ」
友梨奈には高校時代から付き合っている恋人がいる
大学は別々だけど、かなり仲が良さそうだったのに
「別れたって、全然大した事じゃないなんて事ないじゃない」
「うん…そうだよね…」
「あんなに仲良かったのに何かあったの?」
「彼女と一緒にいるのは楽しい。好きな気持ちもある。でもそれは友達としてって事に気づいたら、普通に恋人同士でする事とか出来なくなっちゃったんだよね」
「完全に気持ちが冷めたって事?」
「冷めたと言うより、実はね…好きな人がいるんだ」
「好きな人?」
「うん、彼女よりも大切で、ずっと一緒にいたいと思えた人」
「恋人とはそうじゃなかったの?」
「最初はそう思っていたけど、付き合っていくうちに価値観の違いや、ズレを感じるようになって…一緒にいてもケンカも増えて…そんな中で私が他に好きな人出来ちゃったから」
「別れはいつから考えてたの?」
「今、好きな人を好きだと自覚してからかな?それからは恋人と会うのも連絡取り合うのも億劫になって、さらにケンカも増えて、別れたいなぁって思うようになった」
「気になる人の事、本気で好きなんだね」
「うん、でも…」
「でも?」
「恋人と別れたばっかりで、すぐ告白してっていうのは不謹慎かなって…」
「そんな事はないんじゃない?ちゃんと別れたんだし」
「そうかな?」
「うん。私はそう思うよ」
私は気持ちが複雑だった
恋人と別れたいほど他に好きな人がいるって聞いて、心が痛くてたまらない
恋人がいるからって、2人の仲を壊しちゃいけないって諦めていたのに…
私だって友梨奈が好きなのに…
私は友達の振りをしながら話を聞いて、傷ついてる…
友梨奈の好きな人はどんな人なんだろう
「そう言ってくれてありがとう」
友梨奈の笑顔を見て私は好きだなぁって
この人に好かれる人が羨ましいなぁって
でも私にはもうチャンスがない…
きっと素敵な友梨奈だから、好きな人とも両想いなんだろうな…
私はまた見ているだけの日々になるのか…
それでも友梨奈が好きだから、応援してあげたい
「好きな人とは上手くいきそう?」
「わからない…好きな人も私に恋人がいるのを知ってるから…別れた話をして、そのまま告白しても軽蔑されやしないか不安」
「私なら気にならないかな?私の為に別れてくれたんだって思うかな、だから友梨奈の好きな人も軽蔑したりしないよ」
「そうかな?」
「うん。もしその人を私も好きだったとしたら諦めなくて良かったって思えるし」
「じゃぁ、好きな人に告白しても大丈夫かな?」
「大丈夫だよ。だから自信をもって!」
「ありがとう。あのさ理佐」
「うん?」
「あのね、私は理佐が好き。一緒にルームシェアするようになって、最初は理佐といる時間が居心地良いなぁって、それで気がついたら好きになってた。このままずっと、ずっと一緒にいたいって思ったから、私の生涯のパートナーになってくれませんか?」
突然の友梨奈からの告白に私は驚きを隠せない…
「友梨奈の好きな人って…」
「理佐だよ。一緒の時間を過ごせば過ごすほど、理佐とはずっとずっと一緒にいたいって思うようになった。私にはこの人しかいないって」
真っ直ぐで、真剣な目に私も正直な気持ちを伝える
「実はね…私も友梨奈がずっと、ずっと好きだった。でも恋人がいるからって諦めてたから…私もずっとずっと友梨奈といたい」
そう答えた私を優しく抱きしめてくれる
「生涯のパートナーになってくれる?」
「私も友梨奈しか考えられない」
「嬉しい。大好きだよ理佐」
「私も友梨奈が大好き」
「ずっとずっと一緒にいようね」
「うん」
おわり