保乃の試合は優勝は出来なかったが、なかなか良い成績を残せたようだ


「ビーチバレーってなかなか熱いスポーツでしたね」

「うん」


「保乃のアタックカッコ良かったなぁ」

「そうなんだ」


「そうなんだって、ちゃんと試合見てなかったんですか?」

「見てたよ、渡邊先輩だけ」


「それ、完全に恋しちゃってますよ。目がウットリしちゃってるじゃないですか」

「ずっと頭の中で渡邊先輩の笑顔や真剣な眼差しがめくるめく映画のように映しだされてるんだよね」


「今日の今日まで渡邊先輩の存在に気づいてなかったてち先輩に私は驚きを隠せません」

「そんな、誰かに興味もわかなかったからね」


「てち先輩!」

「どうした、そんな目を輝かせて」


「保乃が、応援に来てくれたお礼に4人で打ち上げしようってメールが!」

「打ち上げ?4人で?」


「そうですよ!今から渡邊先輩と話せる、いや、一緒に過ごせるんですよ!」

「ど、ど、どうしよう…急すぎて…すっごいドキドキしてる」


「てち先輩」

「う、ん?」


「顔、顔、顔が強張ってます」

「き、緊張しちゃって…」


「リラックスしてください。深呼吸、深呼吸」

「うん」


「落ち着いてきました?」

「うん」


「じゃぁ、待ち合わせ場所に行きましょう」

「ねぇるん」


「はい」

「渡邊先輩は嫌じゃないかな?」


「何がですか?」

「話した事もない私が一緒にいて、打ち上げなんて、嫌じゃないかな?」


「大丈夫ですよ。気にしないでください」

「気にするよ…嫌われたくないし」


「なら、リラックスしていつものてち先輩に戻ってください。そんな緊張してたら、渡邊先輩に気を使わせてしまいますよ?」

「わかった」


るんになだめられ、保乃達との待ち合わせ場所に向かうと2人はもう待っていた


「友梨奈ちゃん、今日は試合観に来てくれてありがとう」


保乃が嬉しそうに私に言う


「いい試合だったね」

「そう言ってもらえたなら良かったです。あっ、友梨奈ちゃん、こちらが一緒にチーム組んでくれた渡邊先輩です」


「初めまして友梨奈さん」

「は、初めまして」  


「友梨奈ちゃん、緊張してる」

「そ、そんな事は…ない…」


近くで見る渡邊はとても綺麗で優しそうな人だ。

私はこんな綺麗な人をなぜ知らずに過ごしてきてしまったんだろう


「友梨奈ちゃん、私とるんでちょっと用事があるから、済ませるまでの間、渡邊と待っててください、じゃぁ、行ってきます」

「えっ…るん…?保乃?」


挨拶しか交わした事のない人と2人きりにさせたりする?しちゃうの?そんなもんなの?どうすれば…どうしたらいいんだ…


「友梨奈さん」

「はい」


「友梨奈さんってバスケ部だよね?」

「そうですけど」


渡邊先輩から話しかけてくれてホッとする


「背番号7番の友梨奈さんでしょ?」

「はい、私を知ってるんですか?」


私を知っている?保乃にでも聞いたのかな


「バスケ部のエースを知らない人はいないんじゃないかな?」


知らない人はいない?

じゃぁ、渡邊先輩は私を知っていたって事なの?


「私、そんなに有名だったのか…有名なら渡邊先輩の方が有名では?」


「友梨奈さんは私の事を知っていた?」

「今日まで知らなかったです…」


「その時点で私はそんなに有名じゃないよ。でも私は友梨奈さんを知っていたから友梨奈さんの方が有名人でしょ?」

「そうなのかな?」


「うん?だから私は今、すごく嬉しいの」

「嬉しいんですか?」


「バスケ部のエースとこうして話せているから」


なんかものすごく嬉しい事を言われているんじゃ…


「そんな私と話せて嬉しいなんて…」


私も本当は嬉しい


「ずっと、話したいって思っていたから」


えっ…ずっと?

渡邊先輩はずっと私と話したいと思っていたの?


「ずっと…ですか?」


ちょっと信じられていない


「うん。友梨奈さんが入学してきて、バスケ部に入って、それからずっと、ずっと友梨奈さんを見てきたの」

「私を見てきた?」


「うん。バスケしてる姿がカッコいいなぁってずっと憧れてて…それで…それがだんだん好きに変わって…私は友梨奈さんが好き」


友梨奈さんが好き…

友梨奈さんが好き…

友梨奈さんが好き…

マジですか?

私の頭の中はてんやわんやな状態になっている

どう処理すればいいかわからない


「あっ、えっ?、えっ…?」


てんやわんやになり過ぎて言葉も出ない


「驚かせちゃったよね。ずっとずっと友梨奈さんが好きで、話したくて、保乃にきっかけを作ってもらったの」

「私と話す為に今日、試合に?」


「うん。どんどん好きになるし、友梨奈さんはどんどん人気になるし…誰かとくっついてしまったらって…私を見て欲しいって思う気持ちが強くなって…」


今日、一目惚れした人に告白される

しかも、向こうはずっと私を見ていたんて…そんな事があるのだろうか?

ドッキリだったりしないよね?


「私なんかでいいんですか?」


そう言った私の言葉に驚いた顔をしている

間違った発言をしてしまったかな?


「それって…」

「実は今日の試合を観て、渡邊先輩に一目惚れしちゃって…正直、今の私はパニクってます」


「すごく嬉しい」


渡邊先輩が泣き出してしまった…


「先輩、なんで泣いて…」


私はかなりオロオロ状態…

保乃とるんはいつ戻る?

戻らないのか?

私達を2人にするのが目的なら戻って来ない気じゃ…


「ずっと好きだった人が私に一目惚れしたって言われたら嬉しくて涙が、ごめんね」

「謝らないでください」


「私と恋人になってくれますか?」


一目惚れ→告白される→恋人になって

今日だけでこんなに色んな事が起きてしまっていいのだろうか?

この嬉しすぎる幸せのツケが後から何かしら悪い事で起きたりしないだろうか?

嬉しすぎて逆に怖くて不安になる

でも私に断る理由はない


「私で良ければ…よろしくお願いします」


渡邊先輩が嬉しそうに笑う

笑った顔を近くで見ると本当に可愛い

渡邊先輩は笑ってる方が好きだな

この笑顔をずっと見ていきたい

見ていけるんだ


「こちらこそありがとう」

「これから色んな渡邊先輩を知っていく形になりますが、きっといっぱいその度に好きになっていくと思います」


「そう言われるとちょっとプレッシャーかも」

「そうなんですか?」


「いっぱい好きになってもらえるように頑張らなきゃって」

「頑張らないでください。そのまんまの渡邊を知っていきたいから」


「うん、そう言ってくれてありがとう」


また笑う先輩の笑顔にキュンとなる


「笑顔、めちゃくちゃ可愛いです」


渡邊先輩の顔が耳までも真っ赤になる


「嬉しすぎる〜」


このあと保乃達が戻って来る

どうやら少し離れた場所で見ていたようで、上手くいったのがわかったから戻って来たらしい


それからみんなでご飯を食べてそれぞれ帰宅した

私と渡邊先輩は明日会う約束をして帰宅した


こんな事が起きるなんて思いもよらなかった

私の初恋はまだ始まったばかり

これからどんな時間を過ごせていけるのかな?