今でも理佐を愛してると言ったら理佐はどんな反応をするだろうか?


怒るだろうか?

嘲笑うだろうか?

嫌がるだろうか?

拒絶するだろうか?

喜ばれないのはわかってる


子供達は元気にしているだろうか?

1人で頑張り過ぎてないだろうか?

職場で辛い想いはしてないだろうか?


理佐の事になると沢山思い浮かぶ


でもこんな心配も理佐には迷惑以外のなにものでもないのが現実…


"元気してる?" "体調崩してない?"

打ちかけたメールも何度消した事やら


家族連れを見ると理佐達を思い出せずにはいられなくて…


子供達と同じ年くらいの子を見かけるとつい目を細めて見てしまう


身長は伸びただろうか?

どんな風に成長してるんだろうか?


もっと理佐と一緒に子供達の話をしたかった、どんな大人になっていくかな?とか、いっぱい語り合いたかった


でも私は自分でそれを壊してしまったから

夢に見て描くだけでしかない現実


今日はそんな私と理佐のお話


私と理佐はSNSを通じて知り合った

コメントのやり取りから、DMでやり取りするようになって、個人的なやり取りをするようになった


理佐には家庭があって旦那と子供がいる


子育てや旦那の事を理佐は1人で抱えて悩んでいた


「誰も頼れなくて…私は旦那や子供達の家政婦でしかないんだよ、存在価値がない。友梨奈もそう思うでしょ?」

「価値がないなんて事はない。理佐は誰よりも頑張っているし、理佐は理佐で幸せにならなきゃ」


お互いの悩みを話していくうちに私は理佐に惹かれてしまっていた

いけない恋だとわかっていても

好きになってはいけない相手とわかっていても、私が理佐を幸せにしたかった


でも理想と現実は全く違った


理佐への想いが強くなると理佐の旦那や子供達に嫉妬してしまう

その嫉妬が子供達への憎しみに変わってしまう事もあった


子供達を本気で憎んだ事はなかったし、可愛いと想う気持ちがあったのも本当


子供達を邪険に思っていたわけじゃなく、秘密の恋に病んだ私は、誰かを邪険にする事で気持ちの逃げ場を作っていた


私と理佐は簡単に会える距離にいるわけじゃなかったから、一緒に過ごせている家族が羨ましくてたまらなかった


子供達は旦那に似ているらしく、可愛がっているのを見ると、旦那に対しての愛情の様に思えてさらに嫉妬してしまう

あの子達は何も悪くないのに


もともと私は子供が好きだった

だから仲良くなれる自信もあって、可愛かったはずなのに

心が病むとその感情すら忘れてしまう


嫉妬、ヤキモチ、独占欲、強くなる想いは私の心をどんどん壊し、病ませていく


病めば病むほど、私の中に本当の私と邪悪な私が混在するようになった


この頃の私は仕事や家族にも悩まされていて、会社ではパワハラ、家では家族からの縛りに追い詰められていた


私には病気を抱えている家族がいる

その家族からずっと逃げたかった

でも逃げる勇気も度胸もなかった


理佐と出会いで私は本気で家族から離れたい、理佐と一緒に暮らしたい気持ちが溢れ、家族の存在が重荷になる


重荷になればなるほど、家での時間がストレスになり、そのストレスがさらに私を壊し、病ませていく


理佐との時間が子供達や旦那の都合でダメになると、邪悪な私が出てきてせっかくの2人の時間を険悪にしていく


邪悪な私になると、理佐にキツくなり、子供達をも邪険に扱ってしまう始末


「また子供…もう無理じゃない?」

「無理ってどういう意味?」


「私達は一緒にいるべきじゃないんだよ。理佐だってすぐに離婚出来ないでしょ?」

「そんな風に言われたら辛いよ…」


邪悪な私は理佐を責め、理佐を傷つけて、追い詰めてしまう


子供達には非が無いのに、邪魔されているような被害妄想が私の頭を掻き乱し、そしてまた私は壊れて、病んで、邪悪な私が私を支配する


穏やかな私に戻ると酷くそれを後悔しては、私はさらに病んで壊れていく


壊れていくほど、本来の私と邪悪な私の考えや言葉が違うから、理佐は振り回されっぱなし


邪悪な私が打つメール、話す言葉

本来の私が打つメール、話す言葉


理佐にはどちらも私でしかない

だから私はコロコロ意見が変わる人になってしまった


一緒にいたいのにいれない

会いたいのに会えない

声が聞きたいのに聞けない


恋愛初心者の私はそれらをバランス良く受け止められなかった

理佐の想いや気持ちを察したり、耳を傾けて話を聞く事余裕もなかった


理佐が求めていたのは安らぎと安心感だったのに…


愛する気持ち、恋をする気持ちが間違ってた方向に歪む度に、私は自分を追い詰めて病んで、壊れていく


「友梨奈…大好き」

「友梨奈、ずっとそばにいてね」

「友梨奈、友梨奈…」


私の心の中で何度も理佐の声が木霊する


いつの間にか、邪悪な私での時間が当たり前になり、ケンカの絶えない日々が続く


「ちゃんとわかってるけど、そんなすぐには無理だよ、子供達だって…」

「また子供、子供、そればっかり。もう私いらないじゃん」


「そんな言い方しないで!」

「なんだかんだ結局、私じゃなくて旦那の肩持つんじゃん」


「そういう事じゃない。肩を持ってるわけじゃない」

「本当は私より旦那がやっぱりいいんだよ」


「友梨奈はどうしてそんな酷い事ばかり言うの?」

「理佐が家族ばっかりだから」


「私が悪いの?私だけが悪いの?」


思い出しても本当に私は酷い人間だった

邪悪な私の人格は歪みに歪み、本来の私は完全に消された状態だ


私の中に生まれた邪悪な私を消すだけの力は、強さは無かった


本来の私は理佐と子供達をこっちに呼ぼうとしていた


理佐には内緒で、市役所で学校や住む場所、母子家庭に協力的な地域を調べたり、探したり、こっちで不自由がないように養子縁組が出来るよう緻密に計画も立てていたのに、邪悪な私が自分でそれを全部、壊してしまう


本来の私は理佐と話せないまま、理佐に別れを告げられ別れていた


何度もやり直したいと、許してほしいと言ったけど、理佐の決心は強かった


誰にも信じてもらえないけど、心が病んで、追い詰められてしまうと違う人格が現れて補おうとしてしまう


私はそれが邪悪な形で現れてしまい、気づいた時には全て失っていた


当然、理佐にも理解はしてもらえなかった


私はただの最低な酷いヤツで、大嘘つきで、コロコロ話が変わる人間として理佐の中に刻まれている


まさか私に2面性があるなんて思いもしなかっただろうから

私だって思いもよらなかった


最初はそれが辛くて、理佐の気持ちを引き留める事ばかりに必死になり、理佐と向き合えず、拗れに拗れ今は連絡を断ち切られている


全てを失い、自暴自棄になった私に2面性について教えてくれ、治療を進めてくれた人がいる

そして無償の愛についても教えてくれた


想いは届かなくても、与えて貰う事がなくても、与え続けるだけでもその人を想い続けられるか


傷つく言葉を言われても、無視されても、憎まれても、嫌われても変わらずに愛し続けれるか


相手が誰かと恋をして、幸せになっても変わらずに愛し続けれるか


ずっと、ずっと一途に想い続けていく愛

それが無償の愛だと


今の私にはそれが出来なければ何も変わらないと教えられた


私は無償の愛で生きようと決めた


どんなに年を重ねても私の隣は理佐以外は考えられないから


薬指に付けた指輪を触る

お揃いで買った指輪


もう理佐は捨ててしまっただろうな

私の贈ったものは全て処分されてるはず


私は何一つ処分出来ずにいる


1人が寂しいと思う日もある

理佐とまた一緒にいたいと願う日もある


叶うはずのない未来を想像して、叶わない夢を描いては消していく


今も理佐を愛している

変わらずに想い続けているから

嫌われてても、連絡が来なくても

未練がましいと笑われても

胸を張って言える

理佐を愛する私は幸せだと


永遠の片想いだっていいよね


時間はかかっているけど、治療の甲斐があって、邪悪な私が出てくる事はなくなった


変わった私を見て欲しい気持ちはあるけど、私からは連絡はしない

理佐が望んでいるとは思えないから


それにもう新しい誰かがいるかもしれないし…もしそうなら邪魔はしたくない


私は1人歩き始める

これからもずっと、ずっと1人で歩き続けていく

来るあてのない人を待ち続けながら

これが私の人生で、私と理佐の恋の結末


理佐、どうか幸せでいて欲しい

それが私の叶えたい願い




おわり