兄が留学するからとその間、留守番がてらに念願の1人暮らしをすることになった


私は嬉しくて浮足立たずにはいられない


車で兄のアパートに向かう

アパートに来るのは兄が引っ越した時に手伝いに来た時以来だ


駐車場に車を停めてアパートを眺める


駐車場はアパートの裏にあり、全部屋が見渡せる


3階建ての鉄筋コンクリート造り

2DKのバス、トイレ付き

洗濯機はベランダ置きなのがちょっと残念


兄の部屋は303なはず

303を見ようと部屋へ視線を向けると

2階の住民らしき人が洗濯をしていた


兄の部屋の下だから203の人か

どんな人だろうと見ていると


ちょうど洗濯物を干そうとしていた


私はその人を見て息を呑む

あまりにも眩しく見えたから


眩しくてキラキラしている

じっと見ているとこちらに気づいたようで


「こんにちは」


と向こうから声をかけてくれた


「こんにちは」


私も挨拶を返す

なんて素敵な人なんだろう

私の胸は高鳴りを覚える


確か、兄がくれた部屋割があったはず

兄がご近所さんをちゃんと知っといてと、誰さんがどの部屋に住んでいるのかを書いて渡してくれた


203、203はと…

渡邉さん、女子大生、1人暮らし、美人

友梨奈狙うなよと書かれていた


兄の余計な1言が癪にさわったけど、私の好みをよく理解している

さすが兄だ


私は荷物をもって部屋に向かう

何回か荷物を運んでいると、階段でさっき挨拶した渡邉さんに会う


「3階に越してらしたんですか?」

「兄が、留学したのでその留守番で」


「もしかして平手君の妹さん?」

「はい。そうです、妹の友梨奈です。初めまして」


「初めまして。私は渡邉です。よろしく」

「よろしくお願いします。あの、兄とは仲がいいんですか?」


「平手君とって言うより、平手君の彼女さんが私の友達なの」

「兄の彼女?」


「あっ…知らなかった彼女いるの」

「初耳です」


「そうだったんだ…」

「気にしないでください。遅かれ早かれわかる事だと思うので」


「そう言ってくれたら助かるかな。平手君から妹さんの話は聞いていたから、なんか初めてな感じがしなくて」

「兄から私の話を?」


「うん。自分よりもイケメンな妹がいるって。ダンスとピアノが上手なんだって言ってたよ」

「兄がそのように言っていたのは以外です」


「だからどんな妹さんかなぁって思っていたけど、想像以上のイケメンな妹さんだなって」

「そんな事はないです…」


「これから仲良くしてくれるかな?友梨奈ちゃん」

「私で良ければ仲良くしてください」


「やった。イケメンな友達が出来ちゃった。じゃぁ、私、大学行くからまた今度ゆっくり話そうね」

「はい。気をつけて行ってきてください」


「ありがとう。行ってきてきます」

「いってらしっしゃい」


階段を降りていく渡邉さんの後ろ姿にすら見惚れてしまう

兄、狙うなよと言われても無理です


私はもう渡邉さんへと恋に落ちてしまったと思われます

狙うなよと言われても狙わずにはいられないでしょう

心の中で兄に報告する



引っ越しそうそう、私の恋物語は始まった




おわり