会いたい…

私は数日分の荷物をまとめる

戸締まりをチェックして

初めての空港に向かう


空港なんて、ただ飛行機見るのに来た以来

時間を見て、最終の便になら乗れそう

良かった、今日中にはあっちに着きそうだ


無事に彼女の住む場所に降り立つ


全く、右も左もわからないとは今の状況を言うんだろうな

タクシー乗り場へ向かい、彼女の住所を伝えた


タクシーの中で観光かを聞かれたが、私は恋人に会いに来たとだけ伝えた


彼女の家に近づいて行ってるであろう道中、後悔の念に囚われる


勝手に来てしまった…

突然、訪れたら嫌がられないかな?

もし、誰かと一緒にいたら…


良い想像と悪い想像が交互に頭の中を掻き乱していく


空港から1時間もかからずにアパートの前に着く

タクシー代はかなり痛かったが仕方ない


アパートは…前に写メで送られたのと同じ2階の1番奥が彼女の部屋のはず


2階に上がり、部屋の前まで行く

表札は…うん、彼女の苗字だ


インターホンを押す


………シーン


ん?いないのか?


もう1度、………シーン


よく見ると中は暗い


スマホを確認、もうすぐ日付が変わる

どこに行ってるんだ?

こんな時間に、1人で危ないじゃないか


電話をかけてみる…

出ないし

LINを送る

既読つかないし…


数分おきに同じことを繰り返す


なかなか戻って来ない

土地勘が全く無いから探しようもない


待てど暮らせど理佐は帰ってこない

心配が怒りに変わっていく


2階から道路を見渡していると

ゆっくりとペットボトルを片手に歩いてくる人が見える


段々、近づいて来て、理佐だ!

やっと戻ってきた

1人だ…良かった


でもこんな時間にあんな無防備で危ない


理佐がアパートに入ってくるタイミングを見計らって


「こんな時間に1人で歩いてたら危ないじゃん!」


怒りたくなかったのに…

心配しすぎて無理だった…


「!?」


なんだ?返事がない…

見間違ってないはず…だよね?


「もし、誰かに襲われたらどうするの?」


だめだ、もっと優しく言いたかったのに…

なんでキツく言ってしまうんだろう

本当に自分が嫌になる…嫌でたまらないって思ったそばから


「理佐、ちゃんと聞いてる?」


またキツめに言ってしまう

あぁ…本当に自分が嫌い


「すぐ帰ってこないから、どれだけ心配したと思ってんの?電話も出ないし」


姿を見たら、もっと優しく言えるかな

理佐が見えるまであと少し


「ねぇ、ちゃんと聞いてる?来てそうそう怒りたくないのにさ、なんで理佐は心配かけるかな」


理佐が目の前にいる

愛しくて、愛しくてたまらない理佐がいる


目の前にいたらいたで…

すっごい緊張してしまい…

だめだ、感情が落ち着かない…

やっぱり優しくは言えなかった…


「ちょっと、理佐、聞いてる?さっきから返事もしないし」


目の前の理佐はかなり驚いた様子…

そりゃそうか…アポ無しだもんね…

驚くのも無理ないよね

来ちゃまずかったかなぁ…後悔の念が湧く


「友梨奈…?」

「そうだよ」


ここで抱きしめに行かなきゃ

格好良く、抱きしめに行かなきゃ

思うほどに体は動かないのが現実


「なんで…」

「会いに来たに決まってるじゃん」


ツンしかでない私、もっと優しく

優しくだよ、優しく言わなきゃ!


「何で…」

「なにでって最終の飛行機に乗って、空港ついて、タクシーに住所伝えて来た」


表情が読めない…来て良かった?

ダメだった?どっちだ?


「飛行機乗れたの?」


乗るのも嫌だったけど、会いたいし、好きだから頑張れたよ

めちゃくちゃ怖かったけど頑張ったよ、飛行機


「怖かったよ、怖かったけど…理佐に会いたかったから…頑張ったよ」

「友梨奈!」


えっ…、理佐から抱きつかれる

これが理佐の感触で理佐の匂いなんだ


柔らかくて、いい匂いがする

愛しい、愛しくて、愛しくてギュっと理佐を抱きしめる


ずっと、ずっとこうしたかった


「理佐だ、私の理佐だ」

「うん!私の友梨奈だ」


理佐を抱きしめてやっと素直になれる


「うん。私達、あんまり身長、変わらなかったね」


理佐は私よりも、もっと身長があるかもって思ったけど、そこまで差はなかった


「うん…」


理佐の声が涙声に変わる

本当に泣き虫だな

そこが可愛いくて好きだけど


「泣き虫理佐だ」

「だってぇ…ヒックっ」

「泣き虫な所、愛しくて好きだよ」


やっと直接、言えた

ずっとずっと言いたかった好きって気持ち


「私も怒りん坊だけど友梨奈が好き」


怒りん坊は余計だけど、間違ってないから許す

理佐になら怒りん坊って言われても愛しさしかない


理佐がギュってしてきたから私もギュって抱き返す


愛しいな…離したくなくなる


「理佐が遅いから七夕終わっちゃったじゃん、一緒に星、見ようと思ったのに…」


嬉しさのあまりちょっとだけ憎まれ口を叩いてしまう


「ごめんね…」


責めたつもりじゃなかったのに…

やっぱりだめだなぁ私は


「会えたからいいよ、でもすごく心配した。理佐は可愛いから誰かに連れ去られてたらって心配しまくった」


怒るには怒るなりに理由があるんだ

本気で心配しちゃうから、心配性だからつい考えすぎて煩くなっちゃう…ごめんね


あまりにも理佐が可愛すぎるから…心配なんだよ


「大丈夫だよ、そこまで可愛くないから」


理佐は可愛さをわかってない、自覚なさすぎ!


「理佐は可愛いよ!すごく可愛い」

「ありがとう」


笑った顔…やっぱり可愛い

胸がキュンってなる


そうだ、今夜、泊めてくれるか聞かなきゃ


「あのさ…」

「うん?」


「今日、というか何日か泊めてくれる?」


すぐには帰りたくないから何日かだけでも一緒に過ごしたい


「もちろん!」

「良かった」

「だめって言ったらどうしたの?」

「野宿しかないよね」


断られなくて本当に良かったよ…


「普通、ホテルとかじゃないの?」

「お金、もったいないし」

「好きなだけ泊まっていって」


そう言ってくれてありがとう

でもね…泊めてもらうには私にも下心というか…ね…やっぱりあるよね…好きだからね


「ただ…」

「ただ…?」


「覚悟はしてね?」


ちょっとイタズラに言ってみる


「なんの?」


すぐ気づいてよ、私も恥ずかしくなるから


「決まってるじゃん…ほら…ねっ…」

「うん…」


良かった、気づいてくれて

もう1度、素直な想いを心を込めて伝える


「好きだよ理佐」

「うん。私も好き、部屋に行こう」


そう言われて、手をつないで理佐の部屋に入る


玄関を閉めて…お互い目が合って…

私はゆっくりと理佐にキスをする


ずっと、ずっとこうしたかった


理佐がベッドに私を連れて行く

私はまた理佐にキスをして、少し震えながら触れていく


やっと、やっと願いが叶った

幸せ過ぎて、このあと不幸が訪れるのが怖い気もするけど、今は理佐とこの幸せな時間に埋もれて、溺れていたい


たくさん、たくさん理佐と愛を確かめって目覚めた朝


隣に理佐が可愛い顔して寝ている

私はそっとキスをする


幸せ過ぎて…怖い…

ものすごく怖いけど…


理佐が隣にいてくれて、触れられて、愛を囁きあえるのが嬉しい


そっと理佐に呟く

理佐…愛してるよ



おわり