後ろ姿だけで…

そんなことを思うのだろうか?

平手さんなら思うのかもしれない

私は幸せになっていいのだろうか?


"私が傷ついた分、理佐が幸せになるのは許さない。絶対に許さないから"


駄目だ…私には幸せになる資格はない

幸せになったらいけない…


「やっぱり私は…幸せには…」

「なりましょう!私と。思い出して辛くなるような過去はもう忘れていいんです。辛い思い出ほど忘れるべきです」


「私は…私には…」

「もう充分、苦しんだじゃないですか。あの人に詫びる気持ちだけでずっと、自分の幸せまで捨てようとしたんですから、もう充分です」


そんなわけには…そんなわけには…いかない


「だめだよ、彼女の傷ついた気持ちを考えたら私は…」

「渡邉先輩だって傷ついた。あの人と別れて、捨てられて、傷ついたんですから、それでチャラにしましょう」


そんな簡単にチャラに出来るのだろうか?


「そんな簡単には…」

「試してみませんか?」


「試す?」

「私と一緒にいてみて、それでもあの人を忘れられなかったら私も諦めます」


「私が平手さんを好きになれなくてもいいの?」

「その時は振り向いてもらえるまで頑張るだけですから」


初めて平手さんが笑顔を見せた

優しい、暖かい笑顔

私を包んでくれるような笑顔

その笑顔をもっと見てみたい 


「いい…よ…」

「えっ…?今、なんて?」


「まずはお試しからなら」

「本当ですか?」


「私の気まぐれかもしれないけど…信じてみたくなったから…」

「私のプレゼン大成功ですね!」


「なにそれ笑」

「何としてでも手に入れたいんで。あの手この手とあらゆる方法を駆使するくらい、私も必死なんです」


「私は面倒で難しいけど、頑張って落としてね」

「渡邉先輩、そんな笑顔見せられたら、ミーティングルームでも構わず襲いたくなるじゃないですか?」


「仕事中はだめだよ」

「仕事中じゃなきゃいいんですか?」


「それはてちの頑張り次第じゃない?」

「なら精一杯頑張っちゃいます!それと…てちはやめてください」


「由依はそう呼んでたから」

「由依さんはただの先輩なので。渡邉先輩には友梨奈って名前で呼んで欲しいです」


「友梨奈…」

「はい!」


「返事、元気良すぎ笑」

「好きな人に呼ばれる名前は特別なんで」


「私のことは理佐でいいよ」

「いきなり理佐は…由依さんの突っ込みも怖いんで、理佐先輩にします」


「由依が怖いの?笑」

「鋭い尋問とボヤキには敵いませんよ笑」


2人で大笑いした

久しぶりに心から笑えた気がする

ありがとう友梨奈


私は前へ踏み出してみる事にした

私を悩ませる後輩の言葉を信じて




おわり