私は複雑な気持ちで帰り支度をして会社を出る
会社を出ると少し先に平手さんの姿が見えた
同期の子と一緒みたいで、私と会議室にいた平手さんとは全くの別人のようだった

平手さんが話す話にずっと一緒にいる子が笑っていて、平手さんもずっと笑っている

私にはあんな風に笑ったり、話したりもなかったのに
どうやら明るいムードメーカーって話は本当らしい

真剣味が増しているとは聞いていても、私には無表情、無テンションだった平手さんに対して、怒りのような、寂しさのような気持ちを感じる
このモヤモヤはなんなんだろう…

数日後、2回目の新人研修の日が来た

私の気持ちは朝から憂鬱なまま


今回は前回とは違う、ミーティングルームで研修を行う為、社内メールで平手さんに送ると、時間前になったら迎えに行きますと返信がきた


来なくていいって返信を返す

遠慮しなくて大丈夫なんで、待っててくださいと返信がきた


埒が明かないので、そこで返信を返すのをやめた


時計を見ると研修の時間が近づいていた

準備を始めようとすると


「よぉ!てち」


と由依の声が聞こえる

もう来たの?まだ時間じゃないよね?


「お疲れ様です、由依さん」


明るく返す平手さんの声も聞こえた

その瞬間、なんかイライラしてくる

よくわからないイライラとモヤモヤ


ササッと準備を整え


「由依、研修行くね」


不機嫌な口調で由依に声をかける


「てち、部屋出た所にいるよ」

「さっき聞こえてた」

「いいねぇ〜」

「何が?」


由依の楽しげにしてる意味がわからない


「久しぶりに誰かに心を揺さぶられてる理佐が」

「別に揺さぶられてないから!」

「はいはい、わかったから行ってらっしゃい」


早く行けと言わんばかりに送り出される


部屋を出ると平手さんがいた


「渡邉先輩、お疲れ様です。今日もよろしくお願いします」


由依と話してた時とは違って、やっぱり無表情、無テンション


「時間勿体ないから行くよ」

「はい」


私も平手さんのテンションに合わせた言い方をした


ミーティングルームに入り、今日も向かい合って座る


「今日は…」


私が話し始めようとした時


「渡邉先輩」

「何?」


「前回の話はまだ解決してません、解決するまで私は研修に身が入らないと思います」


いきなり前回の話を引き戻してくる

本当に腹が立つ