めちゃくちゃ明るくて面白い?
どこが?
あの無神経で無表情、無テンションが?

「めちゃくちゃ面白い?」
「うん、てちって、あっ、平手さんはてちってあだ名で、てちは良く笑う子でさ。冗談とか、タイミングいいツッコミとか、話してて楽しくて、ノリがいい子なんだよねぇ〜」

ちょっと…待って?
良く笑う?
冗談を言う?
話してて楽しい?

全くそんな部分、垣間見えなかったんですけど?
私が教育したあの子は由依の話してる平手さんと同一人物ですか?

「ノリがいい子なの?」
「そうなんだよ、いっつもテンション高くてさ、うちらの部活のムードメーカーだったんだよねぇ〜。思い出すと懐かしいなぁ〜」

テンション高くて、ムードメーカー?
トラブルメーカーの間違いじゃなくて?

「それ、本当?」
「本当って?」
「平手さんが明るいとか色々」
「本当だよ。何かあった?」

私の様子がおかしいのに気づいてくれた由依はちゃんと話を聞いてくれる顔になった

「実はね…」

会議室であった事を全て由依に話した

「てちも大胆だねぇ」

私の話を聞いて返ってきた答えがそれだった

「大胆ってなに?」

あんなに嫌な思いをしたのに、なぜ由依は感心してるのかわからない

「てちってさ、いつもヘラヘラ、ニコニコしてて、一瞬、真剣味を全く感じられない子でさ」
「うん」

「部長や顧問にもよく叱られてたんだよね」
「うん」

「でも、てちがレギュラー入りして、スタメンで試合に出た時、その日のてちは全くの別人のようだった」
「どういうこと?」

「朝から、無表情、無テンション。話す話し方も敬語で淡々としてて、試合中はさらにそれが強くて、まさに理佐から聞いたてちそのもの」
「もう少しわかるように話して」

「本気のてちは、本気度が強いほど、無表情、無テンションになるってこと。最初は私達もわからなくて戸惑ったんだけど、段々、真剣味が必要な時ほど、てちは普段のてちと真逆になる。だから…」
「だから?」

「てちの理佐への想いはかなり本気ってことだよ」
「そう言われても…」

だからって平手さんへのイライラが、さっきの態度が許せるわけじゃない

「私はてちに期待してるんだよね」
「なんの期待?」

「てちなら、理佐の心のキズを癒して、幸せに変えてくれるって」
「心のキズって…」

「ずっと引きずってるんでしょ?元恋人のこと」
「引きずってるっていうか…」

「私はもういいと思うんだよね、理佐は理佐で幸せになっても」
「私に幸せになる価値なんか…」

「価値はあるってことをてちが教えてくれるよ」
「平手さんが?」

「てちはそんな、なんかこっちが信じたくなるような、信じて良かったって思えるような不思議な力があるんだよね」
「不思議な力…」

「理佐もきっとそれがわかるよ、だからてちの教育研修、頑張って」
「頑張ってって言われても…」

「さぁ、定時のチャイムが鳴った。天と約束あるから先に帰るね」

由依は先に帰宅した